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映画日記『パスト ライブス/再会』

念願だった、仕事終わりのレイトショー。
選んだのは「パスト ライブス/再会」。

結論から言うと、素晴らしく上質な映画だった…。
静かにゆっくりと流れていく展開と、
コップに注いだ水の表面張力みたいにずっっっと溢れそうなふたりの感情。葛藤と理性。

幼い頃の初恋の相手との再会。でも彼女はもう結婚していて…。
そんなストーリーだけれど、これは「恋愛映画」と言うには、内包するテーマがあまりに深すぎる。夫か、初恋の人か、という話ではない。

そんな本作のテーマの一つが「イニョン(縁)」という言葉だ。
縁、と聞くと、運命的でロマンチックなイメージが湧くが、反して人生は間違いなく自分の選択でできている。

数えきれない、
「もしもあのときあの選択をしていたら」
を抱えて、それでも選んできた・選ばなかったものの結果で辿り着いた現在。

あったかもしれないまた別の現在を想ってしまうことと、辿り着いた現在が幸せであることは、共存できる。
選ばなかったことで別れた道は、でも確かに元を辿れば一本の道につながっていて、引き返すことはできずとも、いつまでもあの時のあの場所にあの子はいる。その道を歩いてきたから、私は今ここにいる。

過去を見つめて、認めて、抱きしめてあげることって、難しいけれどとても大切なことなんじゃないだろうか。それは自分のだけではなくて、大切な人の過去も。そして現在を大切に生きるためにも。

そんなことを考えた。

鑑賞中はずっともどかしくて、メインキャラクター3人が全員いい人だから、もっと苦しい。誰かが悪者だったなら、こんなに苦しくはなかったはずだ。

どんな言葉を尽くしてもこの作品を語りきれないし、そもそも言葉では言い表せない、そんな感情にさせてくれた。とにかく、観てほしい。感じてほしい。

名シーン、名セリフがたくさんあって、ひとつひとつのカットが美しく、無駄がない。

特にラストシーンはこの上なく至高だ。

最後に、セリーヌ・ソン監督が語る「愛」が素敵だなあと思ったので、公式Xより引用して紹介する。

”ー愛というのは、自分が差し出すもの、そして相手を理解するものである。

その人を尊敬し、その人の人生は価値があると理解してあげること、
それが私にとっての愛です。”

名監督を知ってしまった。

大人になればなるほど沁みると思う。
私の大好きな、「すべてを肯定してくれる」系映画でした。


ぴろ

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