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蕺草(ドクダミ)

夏至の頃にピークを迎えていたドクダミの花もすっかり終わり、実がゆっくりと熟しはじめています。

春に芽を出したばかりの頃は、陽気が充実していて、それが赤い色に表れていました。緑色とのコントラストが印象的。
湿気のたまりやすい壁際は、他より早く芽を出し成長も良いようです。

この頃のドクダミは、地中にある根茎もエネルギーに満ちています。
ドクダミの根茎は、木質化せず柔らかいのですが、横へ横へと広がり、つながり、ちぎれても再生していく、生命力の中心としての力がそこに見られます。

ドクダミは葉柄の付け根には托葉たくようがあり、それに守られるように次の新しい芽を出します。
葉と托葉と対角に新しい芽が伸びていき、少しねじれながら、節から節へジグザグとリズムを刻みます。
このとき、新しい芽を包んでいた古い葉と托葉は、新しい芽を見守るような余韻を残しながら、横へ下へと引いていくようにも見えます。

葉はハート形で、学名“Houttuynia cordata”の種小名しゅしょうめい“cordata”はハート形という意味を持つそうです。
葉脈は循環するような流れを感じさせ、若い葉ほど中心からの赤みが強く、またくっきりとした赤い縁取りも観察されます。

そしてジグザグと成長した先に蕾をつけ始めます。
まず、托葉の間から巻いた葉に包まれるように蕾が現れてきます。

巻いていた葉が開き、次いで托葉も離れていきます。

托葉に包まれている蕾

そして、夏至が近づく頃、花が咲き始めました。

ドクダミの花の本体は、黄色い小さな花の集まった花穂かすいの部分で、花びらに見えるものは総苞片そうほうへんと言われるものです。

蕾は葉・托葉と向かい合い、少し傾くような姿をしていますが、それと対角にある一番大きな総苞片が最初にに開き、隣の2枚がそれに続き、最後に一番小さく内側にある総苞片が花穂から離れていきます。


総苞片も、葉や托葉に似て、花穂の成長を大切に育み、花が咲くのを見守るように、引き立てるように、余韻を残しながら離れていくのが印象的です。

小さな花の集まった塔状の花穂は、3裂の雄しべ、3本の雄しべが基本の単位になっていて、これがらせん状に配列しており、一つ一つは少し斜め上を向いています。

下から順に花開き、次いで子房が熟していきます。
子房が熟すると花穂は上に伸びていきます。

上まで花が終わる頃になると総苞片も萎れてきます。

3裂の雌しべ、3本の雌しべが花の基本単位ですが、頭頂では4裂のものがしばしば見られます。
その姿は頂きに輝く王冠のようであり、熟してくると少し浮き上がっているようにも見えます。

芽吹きから大切に守られ、押し上げられてきた光が、光の王座として顕現しているような感動があります。

ドクダミは湿気の多いところで育ち、その姿や振る舞いからも水的な性質が強くあることが観察できます。

一方、最も太陽の高くなる夏至の頃に花を咲かせ、強い臭いを持ち、葉や茎に赤みがあるなど、熱のエネルギーの存在も際立っています。
その相反するエネルギーは打ち消し合わず、統合され、ドクダミの清熱・利尿作用などに反映されているような印象があります。

ドクダミは十薬じゅうやくとも呼ばれ、日本の三大薬草のひとつとして、民間療法で重要な役割を担ってきました。
独特の臭い成分による抗菌・抗ウイルス作用、解毒作用(以上は生での使用)、さらに、抗酸化作用・利尿作用があり、血管を丈夫にし循環器系にも良いと言われます。

ドクダミは、その姿からも、純度の高い光を生きていくための助けとなるような本質的な力が根源にあるように感じられます。
そこには、役目を終えたものが愛をもって離れていく浄化が、背中合わせにあることを伝えているようにも思われます。


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