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ファン国家のルールメーキング:法務から見たweb3の理想と課題

はじめまして、株式会社Gaudiyで一人目法務を担当しているTAKANO(@pirika_upas)です。以下では、Gaudiyが掲げる理想『ファン国家』のルールメーキングとweb3法務の課題についてご紹介します。


Gaudiyに入るまで

2016年にDMMグループへ転職する際、偶然に知ったビットコインで私のキャリアが決まった感じがします。英国の大学院では国際関係論を学んだこともあってか、ビットコインという、国家が発行しない「マネー」なるものやその機能(第三者を介さずP2Pで価値の移転ができること)に強く引き付けられました。

DMMに転職後は、2017年ころからブロックチェーンやマイニング関連の事業の法務を担当し、2019年に日本暗号資産交換業協会(暗号資産交換業に関する認定協会)の職員になりました。

同協会では、暗号資産やIEO審査業務、AML/CFT監査やトラベルルールのルールメーキング、海外の規制当局との渉外、FATF(マネロン対策の政府間組織)民間会合への参加などの貴重な経験をし、その後、暗号資産交換業のKraken Japanに転職し、金融犯罪対策(AML)に関する業務を中心にコンプライアンス部門全体のマネジメント業務に携わりました。

2022年の10月より副業としてGaudiyに参加、12月から正社員(一人目法務)になりました。

#現在、二人目法務を募集中です

Gaudiy法務を選んだ理由

私がGaudiyを知ったのは2019年ころで、DMM時代からエンタメ x ブロックチェーン 領域に関心があったためか、レーダーに引っ掛かりました。以降も、Gaudiyによる大手企業との提携のリリースなど情報は適宜追っており、ますます意中の存在になりました。

それまでは、AML/CFT担当者としてのキャリアを取引所で深堀りすることも考えていました。しかし、以下のnoteで代表の石川が取り上げる課題感への共感や、ブロックチェーンをあくまで理想のための手段としかとらえておらず、IPとそのステークホルダーに寄り添う姿勢、ブロックチェーン界隈がおかれているダイナミックな規制環境を踏まえると、Gaudiyで働くほうが楽しく、自分の経験も活かせるだろうなと思いました。シリーズBの資金調達後に一人目法務の募集が始まったので、自ら応募しました。

以下では、web3やクリプト、ブロックチェーンの領域に関して、なじみがない法務の方向けに、Gaudiyが掲げるビジョン『ファン国家』について、既存のオンラインサービスとの比較をしつつ、そのルールメーキングとその課題の一部について少し紹介します。

ファン国家のルールメーキング

まず、既存のオンラインサービスの基本的な特性を国家の要素に分けて説明すると、政府(事業者)はアプリ等のサービスという領土内に消費者(国民)を囲い、国民は政府(事業者)が作った法(規約)に従うだけの存在と考えることができます。

例えばオンラインゲームのガチャ率の急な変更など、政府(事業者)による法(規約)の変更には、同意か退出かしかなく、利用者は均質的で、鎖国状態のやや権威主義的な国家の住人像に近いかもしれません。サービス終了で生きた証(歴史)はなくなり、ディアスポラ(移り住むひと)にもなれません。

他方で、Gaudiy が理想とするサービス像では、中央政府(事業者)は中央集権制を残しつつも、その規制(規約)を徐々に緩和・権限移譲され、コミュニティのルールやインセンティブ設計によって補完、規律されます。

消費者は均質・受け身の存在ではなく、ある時は、二次創作の作者*として、またある時は、有権者として投票によりコンテンツの進むべき道やルールを決めたり、外交官(広報)としてコンテンツのファンを増やす自発的な活動をサービス内外で行い、警察として自律的に「コンテンツモデレーション」(Qualityチェックみたいなもの)を行うなど、それぞれの価値観に応じた多様なファン活動が想定されます。

(*注:Gaudiy Fanlinkのユーザーには著作物(例えば「約束のネバーランドの漫画作品」)にかかる利用許諾が与えられますので、二次創作を安心して行えます!)

出典『GOVERNANCE INNOVATION: Society5.0の実現に向けた法とアーキテクチャのリ・デザイン』27頁

Gaudiyではこれらのファンの活動を促す枠組みを設定し、これまで不十分だったファン活動を適切に評価し、活動に対する還元を行うことで、コンテンツを中心とするファン・コミュニティの熱量や持続可能性を高めることを目指しています。実際、大手エンタメ事業者からも上記の思想的な支持も得つつ、具体的な制度設計については大学教授等の有識者を交え、作りこみを行っている点も特徴です。

このようなファン活動の履歴や貢献などとして蓄積された価値は、ブロックチェーンにより、トークンという形で表され、「異なる国家」(つまりサービスの場外)に持ち運び、より広い市場・経済圏(Economics)で交易したり、活用が可能となる予定**です。

(**注:外部サービスに移転できる機能は一部で実装しており、これにより残念ながらサービス終了となった場合でも、大切な思い出を残すことが可能です。例えば「【お知らせ】ナナオンにおける「デジタルバックアップ機能」について」

株式会社Gaudiy_会社説明資料 / Culture Deck
DAOからEconomicsへ

ケーススタディ:契約のバケツリレー

さきほど、「より広い市場・経済圏(Economics)で交易したり、活用が可能となる」なるといいました。

実際のところ、Gaudiyでも上記の動きが徐々に始まっています。例えば暗号資産ウォレット(利用者みずから資産を管理するアカウント)との接続により利用者が取得したNFT(ブロックチェーン技術により取引履歴が確認できるトレカみたいなもの)を外部に移転できる機能が一部実装されています。

このようなオンライン上での価値の移転が可能になることにより「サイバー空間における新たな成長フロンティア」(経済産業省「経済秩序の激動期における 経済産業政策の方向性」30頁)となることが期待される一方、新しい領域ゆえに適切なリスク管理やルールメーキングの余地がたくさんあり、難しさもあります。

従来の利用規約という、垂直的・開示一辺倒なコミュニケーションだけにとらわれない方法で(ガイドラインなのか、スマートコントラクトなのか、それ以外の方法か…手段はともかく)、利用者やサービス外のファンとの間の関係を規律する必要性を感じます。

例えば、具体的な事例として、購入したあるNFTをサービスの外部に移転して、交換・再販するケースを想定してみましょう。

NFTには、著作権者から許諾を受けた範囲内でそのNFTの画像について利用できる特典(例えばNFTの保有者である限りその画像をSNSプロフィール写真に使える権利など)がついている場合もあり、NFTの価値を高めるユーティリティとみなせます。

この場合、例えばA社で購入した利用者(Xさん)はこの特典内容を知って買うわけですが、現時点の一般的なNFTのアーキテクチャではNFT自体に契約内容やサービス説明が埋め込まれているわけではありません。そうすると、A社のサービスの外(B社)でXさんから同NFTを購入する人(Yさん)にとっては、そもそもA社の利用者ではない以上、直接契約がおよばないですし、必ずしも特典内容が明らかではないという課題があります。

契約のバケツリレー..

上記の例では、各ステークホルダーにとって、NFTの特典を周知することで、その価値を正しく伝える(また誤った利用法を防ぐ)利益はそれぞれ存在しますが、だれが何をどのような方法で周知するのがよいでしょうか。

A社の立場として、周知することに最も直接的な利益のある(高く売りたい)Xさんの合理性や市場の論理に任せてもよいでしょうか。それとも、リスクヘッジとしてA社はXさんとの規約において、(実効性はともかく)転売時には購入者に周知し、購入者にも同様に周知させるよう、縛っておけばNFTやコンテンツの価値は守られ、著作権者でもある大手コンテンツホルダーにとって安心でしょうか。A社は、B社や他同業者と連携して、標準化を図るべきでしょうか。

将来的には技術の進化で解決できると期待されますが、現時点でNFTなどのデータ・価値の移転と契約が紐づかない技術的な制約もあり、この手の課題は多くあります。

このような環境下で、Gaudiyにおいて、様々なステークホルダーの利害を調整し、ルールメーキングする機会は豊富にあります。こういった新しい課題にぶつかりワクワクする人(契約の本質やゴールはなんだっけ?と考えられる人)はGaudiyに向いている気がします。

さいごに

以上の通り、Gaudiyは『ファン国家』創設という、新しいこと・実験的なこと・難易度の高いことを行おうとしている会社です。通常のオンラインサービスの企業法務に加えて、関係領域の法令やガイドラインのキャッチアップ、その前の省庁の研究会の議論などをフォローしていく必要もあります。その分、求められる業務や期待される動きは多いです。

他方で、エンタメ x 新しい金融 の2つの領域を深めることができるのがGaudiy法務の魅力だと思います。そのほか、Generative AIやメタバースなどの比較的新しい領域の法務実務も経験できます。

また、きわめて手厚い福利厚生や恵まれた労働環境(フルリモート x フルフレックス、水曜午前休み)など、効率的に業務に打ち込める環境はあります。電子署名での契約締結率90%超えていますし、Hubbleとクラウドサインの連携による契約管理システムがありますので、極力、法務事務に時間を割かなくてもよい体制はできていると思います。

事業をより強力に推進すべく、二人目法務担当者がいていただけるとありがたい…と思い始めており、もっと具体的な話を聞きたいなどありましたら、ぜひ以下からご相談ください。

https://herp.careers/v1/gaudiy/4MKpd6lRWWTe

(以上)

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