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「救出」 クロネコと電脳の城15

レディピンクの話では、怪我をした僕をアジトまで運んで介抱してくれたみたいだ。

「お前もう少しでクロネコに殺されるとこだったよ」

レディピンクはそう教えてくれた。

信じたくはなかったが、僕の記憶でも確かにクロネコの少女は僕に銃口を向けていた。

なぜクロネコの少女は僕を殺そうとしたんだろうか?

そしてあの時彼女は涙を流していたように見えた。


「お前は本当に何も知らないんだね」

レディピンクは冷たい目でレンを見ながらそう言った。

「なんのことですか?そういえば前も僕の能力がどうこう言ってましたけど、一体僕を拐ってどうしようっていうんですか?」

「お前を連れてきたのは・・・・」

ビー、ビー、ビー

レディピンクの声をかき消すように室内に警告音が鳴り響いた。

「また追手かい?」

「ピンク様、例の猫と鳥です」

パソコン上に映った防犯カメラのモニターを見ながらクランが答えた。

「猫と鳥?」

クランが見ているモニターを近づいて覗いてみると、モニターにはヨダカさんと背中に乗ったガジェさんが飛んでる姿が映っていた。

「ガジェさん!ヨダカさんも!生きてたんだ!」

僕は思わず叫んでいた。

目から涙が溢れる。

よかった、ヨダカさんは生きていた!

ガジェさんも無事だったんだ!


「ポスペ、あいつらを捕まえな」

レディピンクがそう言うと、ロビーの隅の暗がりで大きな物が動くのが見えた。

大きなクッションが積み上げられているのかと思ったが、それは大きなクマのぬいぐるみだった。

「あれは、猫追堂を壊したクマだ!」

ピンクのクマのぬいぐるみはゆっくりと立ち上がり、ジロっとこちらを見た。

目が赤く光り、うっすらと唸り声を上げている。

すると次の瞬間ピンクのクマのぬいぐるみはロビーの壁を思いっきりパンチして穴を開けた。

大きく空いた穴から外の景色が見えた。

ピンクのクマのぬいぐるみは、その巨体からは想像もつかない速さで、破壊した壁から外に飛び出していった。

「ブクロ、お前も行け」

「ええー、私もですか?先日も私が追手を処理したのに」

「いいから行け。ポスペだけだと暴走しかねない」

レディピンクは鋭い視線をブクロに向けた。

「・・・・わかりましたよ・・全く、人使いが荒いな・・」

ブクロは渋々承諾すると、壊れた壁からゆっくり外に出て行った。


ヨダカとガジェは不意に出てきたポスぺの一撃を受けて吹っ飛んでいた。

ガジェはなんとか受け身を取ったが、手負のヨダカは地面に叩きつけられ転がっていった。

「ヨダカ!」

心配したガジェが叫ぶ。

ヨダカはゆっくりと立ち上がり翼をあげて答えたが、その場から動けそうになかった。

「くっ!」

思いの外素早い動きでポスペはガジェに近づき、追い討ちをかける。

ガジェはポスぺの重いパンチをかわして飛びのいたが、今度は急な突風に煽られて近くにあった木に激突してしまった。

痛みで身動きが取れないでいると、風が引き潮のように後ろから拭いてガジェの体を宙に浮かせた。

ブウオオオオオーーーーー

ブクロは大きく口を開けると、ものすごい風とともにガジェを吸い込み始めた。

ガジェは抵抗して木に掴まっていたが、木の根っこが地面から抜けて周りの木々ごと吸い込まれていく。

ガジェの体は宙に浮き、ものすごい勢いでブクロの口に引き寄せられた。

ガジェは腰から電磁棒を外して構え、引き寄せられる力を利用してブクロに一撃を与えようとした。

しかし見越したブクロは舌を伸ばしてガジェをぐるぐる巻きにすると、そのままガジェを自分の口の中に入れてしまった。


「くそっ!」

ヨダカはどうすることもできず、ガジェがブクロに飲み込まれるのを見ているしかなかった。

すでに電脳猫との戦いで傷ついていたところに、無理してガジェを乗せて飛んできたため疲労が激しかった。

そして先程のポスぺの一撃を受けて、もう立ち上がる力もなかった。

そこにゆっくりとポスペが近づいてきてヨダカを拾い上げた。

「これまでか・・・」

ヨダカは意識を失った。



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