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「侵入」 クロネコと電脳の城26

激しい揺れに立っていられず、レンは跪いて体を支えるのに必死だった。
レディピンクはそれでも動じることなく、腕を組んで仁王立ちしていた。
激しい砲撃が浮島を直撃しているように見えたが、砲弾は実際浮島に当たる直前で見えない壁に当たって破裂しているようだった。
あらゆる方向からくる砲撃に対して、見えないシールドを展開して直撃を防いでいるのはクランだった。
クランはものすごいスピードでキーボードを叩いているが、おそらく砲撃を受けて弱ったシールドを秒で修復しているようだ。
砲撃を受けてシールドが壊されるたびに、プログラミングをしてシールドを再生させているのだ。
ものすごい数の砲弾が飛んでくるのにまだ浮島自体にほとんど損傷がないのは、クランが超人的なスピードでプログラミングしているおかげだ。
それと電脳猫たちの攻撃も激しさを増してきたが、こちらはブクロの砲撃によって次々と撃ち落とされていた。
途中からガジェとヨダカが機関室に降りていき、ブクロと一緒に砲台を操作しているため、電脳猫を寄せ付けない素早い砲撃ができていた。
こうして何とか浮島は飛行を維持していたが、電脳城が近づくにつれ攻撃の威力が増しているため、防ぎきれずに浮島が砲撃を直接受ける回数が増してきていた。
砲撃を受けるたびに建物が大きく揺れて崩れてしまうため、天井が抜け落ちたところからは外の様子が丸見えだった。
電脳猫たちも砲撃を掻い潜って建物に近づいてくるため、ポスペが出ていき直接叩き落としていた。
レンは自分に何かできなか考えていたが、クランやブクロのような能力もないし、ポスペのような力もないのでどうすることもできなかった。
「レン、お前は今は何もしなくていい。お前の出番は電脳城に侵入してからだ。それまで怪我しないように隠れてなさい」
レディピンクはレンの気持ちを察したのか、そう言って落ち着かせてくれた。

電脳城までの距離はかなり縮まり、あと数十メートルまで迫っていた。
浮島はかなりの砲撃を受けてダメージが大きく、機関がやられているのか高度を維持できず徐々に落ちていってるようだった。
「ブクロ!高度が落ちてる!もっと上げろ!」
「ピンク様、無理です!機関がやられてこれ以上出力できません!」
ブクロが必死な声で叫んでいた。
「チッ、予定より高度が低い。仕方ない、このまま全速力で突っ込むぞ。総員衝撃に備えろ!」
レディピンクがそう叫ぶと、浮島はさらにスピードをあげて電脳城目掛けて突っ込んでいった。
クランはシールドを浮島の全面に集中的に展開し衝突に備える。

ドガガガガガガ!!!!

「!!!?」
ものすごい衝撃音が浮島全体に響いた。
建物は大きく揺れ、レンは体を維持することができず転げ回った。
さすがのレディピンクも立っていることができず跪いて体勢を維持するのが精一杯だった。
土煙が舞い視界が遮られる。
ものすごい音と共に浮島の前方から建物の破片が勢いよく飛んできて、レンの真横をかすめていった。
所々で電子音が聞こえていて、その方向にノイズが走っているのが見える。
おそらく建物データが破壊されて、修復できないためノイズが見えているようだ。
レンは必死て体勢を立て直し、揺れが治まるのを待った。
土煙で見えないため、みんなの様子がわからない。
「ピンクさん!クラン!」
近くにいたはずの二人の姿が見えず、レンは不安に思い声を上げた。
しかし二人からの返事はなく、ブクロやガジェたちもどうなったかわからない。

衝撃音と揺れはしばらく続いたが、次第に収まり静まりかえってきた。
土煙はまだ舞っているため視界は悪く、電子音が相変わらずチリチリと音を立てている。
「ピンクさん!クラン!」
「父さん!」
レンは仲間の名前を叫んだが誰からも返事はなかった。
土煙が風で流れていき、徐々に視界が晴れていく。
見えてきた景色は衝撃的なものだった。
浮島のレディピンクのアジトはほぼ崩壊していて、見るも無惨な状態だった。
浮島ごと電脳城に突っ込んだため、浮島は電脳城の壁にめり込み、電脳城の壁に大きな穴が空いた状態だった。
浮島の前面をシールドで覆っていたため、ぶつかった衝撃で電脳城の壁は破壊され吹っ飛んでいた。
しかしシールドも吹き飛んだためアジトの建物を守りきることはできず、建物は衝撃で崩壊してしまっていた。
レンは急いでレディピンクやクランの姿を探した。
すると浮島前方の瓦礫の上に、風になびく長い耳が見えた。
レディピンクは脇にクランを抱え、瓦礫の上から電脳城の内部を睨みつけていた。
「ピンクさん!」
レンは叫びながらレディピンクに走り寄った。
「レン、無事か?」
「はい!ピンクさんは大丈夫ですか?クランは?」
「私もクランも無事だ。クランは気を失ってるだけだ」
「よかった・・・・!?父さんたちは?」
レンはガジェたちの安否を心配したが、その時瓦礫の下から声が聞こえてきた。
「おーい、誰かちょっとこの瓦礫退かしてくださいよー」
ブクロの声だった。
レンは声のする場所に走っていき、瓦礫をどかすと地下に降りる階段が現れ、そこからブクロが這い出てきた。
「ブクロさん!よかった。父さんとヨダカさんは?」
ブクロはゆっくり上を向くと大きく膨らんだ体を揺らして口を開けた。
「ゔえっ」
ブクロが大きく開けた口からガジェとヨダカが吐き出された。
「父さん!ヨダカさん!」
レンはガジェたちに駆け寄り抱きついた。
「グエエ・・・あいつの腹の中はもう勘弁して欲しいぜ」
「助けてやったんだから感謝してください」
ガジェとブクロのやり取りに、レンはホッとして微笑んだ。

ドシン ドシン ドシン

土煙の中からゆっくりとポスペが近づいてきた。
クランも目を覚まし、レディピンクの横に立って半泣きでしがみついていた。
レディピンクはじっと電脳城の内部を見つめていたが、意を決したように言った。
「お前たち、最後の盗みに出発だ!」
レディピンクはゆっくりと歩き出し、電脳城の内部に入っていった。
レンたちも続いて内部に入っていく。
電脳城は不気味なくらいに静まりかえっていた。

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