見出し画像

「死闘」 クロネコと電脳の城27

城壁や内部のデータの一部が破壊されたため、あちこちで電子音やノイズが走っていたが、電脳城の内部は不気味なほど静まりかえっていた。
「クラン、ここはどのあたりだ?」
レディピンクは自分たちが侵入した位置をクランに確認した。
「ここは電脳城の中層階ですね。ホストコンピューターがある上層階に到着するはずがずいぶん下になってしまいました」
「仕方ない、急いで上層階に登ろう」
レディピンクはそう言うと周囲を見渡し、上層階へ向かう階段に向かって走り出した。
レンたちもそれに続いたが、急に内部の明かりが消え、あちこちにある赤色灯が点灯し、ビービーという警告音が鳴り出した。
それと同時に前方から集団の足音が近づいてくるのが聞こえた。
音のする方を見ると、ものすごい数の電脳猫たちがこちらに向かって行進してくるのが見えた。

「シンニュウシャハッケン」
「シンニュウシャ、ハイジョスル」
電脳猫たちは一斉にこちらに飛びかかってきた。
それを見たブクロが素早く前に出る。
そして大きく口を開けると、勢いよく電脳猫たちを口の中に吸い込み始めた。

ブオオオオオーーー

電脳猫たちが次々とブクロの口の中に吸い込まれていく。
それでも電脳猫たちは次から次へと湧いてくる。
ブクロはなおも吸い込み続けていたが、息が続かなくなり口を閉じてしまった。
ブクロのお腹と口はパンパンに膨れ上がり、もうこれ以上吸い込むことができない様子だ。
そこに電脳猫たちが襲いかかる。
ブクロに何体か飛びついてきたが、ヨダカが羽を飛ばして弾き飛ばした。
そこへポスペが勢いよく飛び出してきて、電脳猫の集団に飛び込んでいった。
両手を大きく振って次々に電脳猫たちを吹っ飛ばしていった。
「いいぞポスペ!その調子で足止めしてくれ!」
レディピンクはそうポスペに声をかけると、上層階に向かう階段に取り付き、急いで登り始めた。
「レン!早く来い!」
レンはレディピンクに急かされて階段まで走ったが、行く手を数匹の電脳猫たちに阻まれてしまった。
「レン!」
電脳猫たちはレンを捕らえようと飛びかかってきた。

バシッ、バシッ

閃光が走り電脳猫たちは回路がショートしてバタバタと倒れ込んだ。
「ガジェさん!」
ガジェは電磁棒を振って電脳猫を次々に切っていく。
「レン!急げ!」
「ありがとう!」
レンは急いで階段に取り付き、レディピンクの後を追った。
クランもそれに続いて階段を登る。
ガジェ、ヨダカ、ブクロ、ポスペは大量の電脳猫と対峙しており、先に進むことができないでいた。
「レン!ここは俺たちで食い止めるから先に行け!」
ガジェがそう叫んだ。
「ガジェさん!でも・・・」
「俺たちは大丈夫だ、必ず追いつくから・・・・急げ!」
ガジェはそう言いながら電磁棒を振り続けた。
ブクロは大きな口を開けて、今度は逆に思い切り空気を吐き出した。
口の中から先ほど吸い込まれた電脳猫が勢いよく吐き出され、目の前にいた電脳猫たちを巻き込んで吹き飛んで行った。
「はあ、はあ、ピンク様、我々は大丈夫ですから先をお急ぎください」
ブクロは息も絶え絶えな様子だった。
「ブクロ・・・、頼んだぞ」
レディピンクはそう言うと急いで階段を登っていく。
レンもガジェたちに心配した目線を落としながら、急いで階段を登り始めた。

階段はどこまでも上に続いており、登っても登ってもいっこうに上層階が近づく気配がなかった。
「どうしてこうアナログなのかしら。電脳城って名ばかりで、鄙びた古城じゃないの?」
クランはそう言って階段を登るしか手段がないことに文句を言っていた。
「ガジェさんたちは大丈夫かな?ブクロさんたちも・・・捕まってなきゃいいけど・・・」
「大丈夫よ。ガジェたちのことはよくわかんないけど、ブクロとポスペはああ見えて強いんだから」
クランはそう言って拳を突き出した。



ドガシャーン


ガジェとヨダカとブクロは電脳猫の大群を相手に苦戦していたが、ポスペが奮闘してくれたおかげでかなり数を減らすことができていた。
電脳猫たちの勢いが衰えていき、その数も徐々に減っていった。
ポスペは電脳猫たちの砲撃を受けボロボロになっていたが、拳を振るう動きが止まることはなかった。
電脳猫たちは次々とポスペに吹っ飛ばされて、行動不能に陥っていた。
しかし先ほどの大きな物音がした途端、ポスペの右腕が吹っ飛ばされていた。
ガジェたちは何事が起こったかすぐに把握できなかったが、土煙の中からゆっくり現れたものを見て驚愕した。
電脳猫たちの集団の後方に巨大な砲台が見えた。
それは電脳猫たちが使っている大砲の何倍もある、浮島を撃っていた巨大な大砲だった。
電脳猫たちは巨大な大砲を操作し、こちらを狙っていた。
ガジェたちは逃げようとしたがすでに大砲は狙いを定めており、ガジェたち目がけてものすごい勢いで砲弾を発射した。

ドガンッ


大砲から火花が吹く。
次の瞬間巨大な爆発が起こった。
ガジェたちは目を閉じて、もうダメだと諦めるしかなかった。
衝撃波がガジェたちを捉えて、三人は勢いよく吹き飛ばされた。
もうもうと立ち込める土煙の中、ガジェはゆらりと佇む巨大な影を見た。
土煙が引いて現れたのは、頭半分吹き飛んだポスペの姿だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?