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「クラン」 クロネコと電脳の城14
頭が痛い。
微睡の中目を覚ますと、見覚えのない場所にいた。
僕はベッドの上で寝ていて、ここは窓のない部屋だったので全くどこだかわからなかった。
記憶の中でうっすらと覚えているのは、クロネコの少女に銃で撃たれたことと、誰かに抱えられていたこと。
僕は撃たれて意識を失ったのだろうか?
それにしては身体の痛みは少ない気がする。
頭は痛かったが、折れているはずの右足や、脱臼していたはずの右肩に痛みはない。
体を隅々まで見てみたが、驚くことに怪我らしい怪我はしておらず、あれだけ重症だった体が完治しているのだ。
どういうことだろうか?
誰かが手当てをしてくれたのだろうか?
そしてここはどこなのだろう?
ゆっくりとベッドから降りて立ち上がると、唯一ある部屋のドアを開けて外に出た。
部屋の前の廊下に出ると下に吹き抜けのロビーが見えた。
どうやらここは2階のようで、廊下に沿って部屋が何室か並んでいる。
下のロビーに人影が見える。
クロネコの少女ではないようだが誰だろう?
もしかして僕を助けてくれた人だろうか。
ゆっくりと廊下を進むと下に降りる階段があった。
僕は恐る恐る下に降りていった。
1階まで降りると、ロビー中央にテーブルとソファーがあり、ソファに誰か座っているのが見えた。
「あの・・・」
近づいて後ろから声をかけると、ソファに座っている人影がゆっくりと立ち上がり振り返る。
「!?・・・・レディ・・ピンク?」
僕は息を呑んだ。
そこに立っていたのは僕を拐いにきたレディピンクだった。
あの時クロネコの少女に殺されそうになったところを助けたのはレディピンクだったんだろうか。
「ぷぷ、あ、あんたいつまで寝てるんだい。寝坊助だねえ」
「え、いや、ごめんなさい。あの、レディピンクですよね?」
「ぷぷ、そうだよ、一体誰に見えるっていうんだい。あたしはレディピンク様だよ」
「?・・・・はい、あの・・・・その・・・僕全然覚えてなくて・・・ここはどこですか?」
「ここはピンク様、、、いや私のアジトだよ。間抜けなお前を助けてここまで連れてきてやったのだ」
「・・・そうだったんですか。やっぱり僕は撃たれたんですね」
「お前は・・?撃たれた?・・・ああ、そうだそうだ撃たれたから私が介抱してやったのだ。ありがたく感謝しろ」
「・・・あの・・・あなたは本当にレディピンクですか?なんだか雰囲気が違うような・・・」
「な!何を!貴様疑うのか!?どっからどう見てもレディピンク様にしか見えないだろうが」
確かにウサギの姿に黒い仮面、黒いボディスーツを着ているので一見レディピンクに見えるのだけど、喋り方やオーラがあの時のレディピンクとは別人だ。
それになんか尻尾が違うような・・・。
「何をしてるんだいクラン」
いつの間にかレディピンクの後ろに人影が立っていた。
音も気配もなかったので声がするまで全く気づかなかった。
レディピンクの後ろにレディピンクが立っている。
「ああ!・・・いや、あの、ピンク様、わ、私はこいつを試そうとですねえ、ちょっとからかってみただけでして」
「私はいつもそんなに気持ち悪い喋り方をしているの?」
「いえ、滅相もございません・・・」
「クラン、変身するならもうちょとうまくやりなさい。尻尾が見えてるわよ」
「は!?あ!ごめんなさあい」
姿形はレディピンクそっくりだったが、尻尾だけはウサギのそれではなく、茶色くて太い尻尾だった。
次の瞬間先にいたレディピンクの体が薄れて別の体と入れ替わるように変化した。
そこに現れたのは頭にハイビスカスの花飾りをつけたタヌキの女の子だった。
「騙してごめんなさいねえ、私クランよろしくね」
クランは僕を見て軽くウインクして見せた。
僕はあっけに取られてクランとレディピンクを交互に見つめていた。
すると暖炉の近くの椅子がギイと音をたてて動いた。
そちらを見ると、大きなカエルが椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらに向かってきた。
「ようやく起きましたか」
「ブクロ、お前がもう少しちゃんと介抱していれば、もう少し早く目覚めたはずなんだが」
「そんな、私はちゃんとやりましたよ。それにその子は介抱する必要ないですよね」
何やら話始めたが、何のことを言っているのか全くわからなかった。
とにかく僕はレディピンクに助けられたということなのだろう。
「あの・・・、助けてくれてありがとうございます。ところで、ここはどこなんですか?」
「ここは私のアジト。レディピンクの隠れ家よ」
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