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お助け屋と初恋王子 第四章 後編

     【3】
 
 
 カイルがミレアナ王国大使館に到着した。
 
 侍従長のイシャナはカイルが王政廃止反対派の人間であることを知らない。カイルは用心深く、反対派の人間とは水面下で繋がっており、表向きは現国王の側近として政務を取り仕切り、反対派に情報を流していた。暗殺の首謀者自身が反対派のスパイをしているのだが、このことは監察のザイードにも知られていない。カイルは用心深く反対派との繋がりを隠していた。
 
「これはこれは大臣殿。お忙しいところご足労頂きまして申し訳ございません」」
 
イシャナは上機嫌でカイルを出迎える。屈託のないその表情にカイルは冷たく笑う。
 
「イシャナ君。王太子殿下が姿を消したと聞いたが、君は少し殿下に甘過ぎやしないかね」
 
「いやあ、面目ない。殿下は私にとって弟同然。悪さをすればそれなりに叱って説教も致し申すが、今回の件に関しては本当に青天の霹靂と申すか、何と申しますか、その……」
 
「もういい。とにかく今は全力でお探し申し上げるのだ。一刻も早く見付けなければ、日本政府や皇室の方々にご迷惑をおかけすることになる。それは我が国としても好ましくない状況だ。今後の外交にも支障が出よう」
 
「はあ、しかし……」
 
イシャナが何か言いたげな目でカイルを見たが、彼はそれを手を挙げて制した。
 
「王太子殿下にもしものことがあれば、貴殿に責任を取ってもらう。ただでさえ危険な状況なのだ。反対派が何か仕掛けてくるやもしれん。僕は部屋で少し休ませてもらう。何か解ったらすぐに知らせるように」
 
「ははっ」
 
イシャナに一言の反論も許すことなく、カイルはもっともらしい口調で捲し立てると、更にイサの進退にまでさりげなく触れ、用意されている自分の部屋へと引き籠った。
 
 スーツのジャケットをハンガーに掛けてクローゼットに仕舞い、ネクタイを緩めると、カモはベッドに寝転がった。
 
 王太子は高坂達が追っているから心配はない。本来テロリストと組むのは本意ではないが、国にはそれほどの人材はいない。しいて言えば王太子の周辺の数名だが、彼らが反対派に寝返ることはない。必然的に外部から雇うしかなくなる。
 
(まあこれで王太子も終わりだ。今度こそその首を手に入れてやろう)
 
カイルの顔に暗い笑みが浮かんだ。

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