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『クローブヒッチ・キラー』

アンチ・トランプ映画?
米中西部辺りの極めて保守的な中都市が舞台。そこでは信仰する宗教が異なると⎯⎯ていうか、キリスト教徒じゃないと、それだけで差別の対象になる。車の中に落ちていたポルノ写真1枚で、変態扱いされる。

主人公の少年の家庭では、食事の前に家族全員が手をつなぎ合って感謝の祈りを捧げる。子どもたちは家族を大切にするよう、親から徹底的に躾けられている。

おそらく福音派の信徒なのだろう。トランプ支持の最大勢力たる宗教右派だ。

その信心深い保守的ブルジョワ家庭の少年が、こともあろうに、父親は連続殺人の犯人ではないかとの疑いを抱く。で、調査を続けてみたら、やっぱり犯人だったと判明する。

犯行の現場に踏み込んだ少年は父に銃を向けるが、母さんが悲しむよ、と言われるとたちまちヘナヘナ腰くだけになり、銃を父親に渡してしまう。マインドコントロールの怖さだ。

のみならず、父親を殴り倒して通報しようとした協力者の少女を押しとどめ、父に止めを刺して遺体を土中に埋め、連続殺人の真相も真犯人も闇に葬ってしまう。家庭を守るために。

さらには、父の跡を継いでボーイスカウトの団長に就き、就任式で、父さん愛してる、などと空々しいセリフを吐く。清廉潔白なはずの母親も、実は夫の犯行を知っており、知っていながら長年そ知らぬ顔で生きてきたことが分かる。

なんだよ、これ。ひどいじゃないか。これじゃ、連続殺人の犠牲になった13人の女性たちも、その遺族の悲しみも、まったく浮かばれないじゃないかと、ひとしきり憤慨してからハタと気づいた。

こういう義憤を掻き立てることこそ、実は制作者たちの隠れた狙いなんじゃないか⎯⎯宗教右派の連中って、表向きはきれいごとを言いながら、裏じゃこんなに汚いことをやってるんだよ。あいつらに権力を渡したら、裏で何やるか分からないよ。

要するに、リベラルからの(かどうか知らないが)保守派に対するネガキャンですな。登場人物の中で唯一マトモな判断と行動をする少女を異教徒、おそらく無宗教に設定してあることも、その傍証だ。

アメリカ社会の分断が、こんなちっぽけなB級サスペンスにも影を投げている、と言ったら大げさ?

話は逸れるが、立場がヤバくなるたびに父親が口にする言い訳が達者なへ理屈なので笑ってしまった。

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