第13話  【メタルハート 13話 瞳】

 メタルハート 13


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第13話
 【メタルハート 13話 瞳】

 自分の姿を見てしまった俺は逃げ出した。

 怖かった。自分が自分でなくなることが……。何も覚えていない。覚えていないはずなのに、声が聞こえてくる。

 悲鳴が……。怒りが……。

 ただ俺は何度も転びながらも森を走り続けた。

 やがて雨が降り始めて、身体は転んだ傷だけではなく、泥だらけになっていく。

 俺はそれでも走り続けた。

 怖かった。怖かったんだ。何か壊れてしまうのではないかと、そう思って怖くなってしまった。

 気がつけば雨も強くなり、辺りは暗かった。

 そんな中、

「ロウ……」

 そこに現れたのはアイサだった。

 アイサは俺よりも泥だらけで何度も転んでいたようで、綺麗な顔には泥と傷でいっぱいだった。

「アイサ、なんで……」

 俺が不思議そうにアイサのことを見上げると、

 アイサに頬を叩かれた。

 それと同時に今まで俺に聴こえていた不思議な声と一緒に、雨の音も聞こえなくなった。
 それは突然ノイズが聞こえなくなるように。いや、叩かれた音が耳に残ってそれらを全てかき消してしまった。

 それでもアイサの声だけは聞こえた。

 アイサは俺を守るように抱きつく。

「心配した……」

 アイサは小さな声で言った。


 それを聞いて俺は理解した。アイサは俺を追いかけてきてくれていたんだと……。

 こんな雨の中、森の中を駆け回り、俺を探して、何度も何度も転んでそれでも諦めずに俺を探し続けてくれていた。

「……ありがとう」

 俺は感謝を言っていた。

 雨は降っている。だから、どうだったのかはわからない。でも、俺は泣いていたと思う。

 俺も両目で……。

 怖かった。怖かった。それはアイサ達を失うことが怖かったんだ。

 この目を見て俺は自分を人間じゃないと判断した。

 アイサ達は俺の目のことについて既に知っていただろう。それでも一緒にいてくれたのだ。

 それでも……。

 俺は立ち上がると、アイサを置いて再び歩き出す。

「アイサ、ありがとう。親父さんにも礼を言っておいてくれ…………」

 俺は転びながらも前に進もうとする。

「お前達を危険に晒したくはない……。この目はきっと危険なもの……だから」

 俺が無視して進もうとしていると、アイサが横に来て支えてくれた。

「私たちなら大丈夫よ。その目……何かあるのは確かよ。でもね。だからって一人で背負い込まないで……」

 アイサは俺と一緒に前に進んで、

「一緒に進みましょう。……私たちを頼って。もう家族でしょ」


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