楽しかった時の知り合いから連絡が来ると泣きそうになってしまうから 【9月10日木曜日】


※前置き「遺書、あるいは黒歴史ノートになるはずの日記のようなもの」


仕事を終えて、ご飯を食べているときにLINEの通知があった。

見てみると昨年末まで働いていた制作現場でお世話になった演出からだった。


文章はサクッと一言

「元気にしてるか?」

だった。


特に深い意図はないと思う。

その人は制作会社のそこそこ偉い人で、制作現場の演出らしからぬ優しい、ともすればおせっかいな人だった。

僕はその制作会社の人間ではなく、わかりやすく言うと親会社的な制作を委託している会社のディレクターだった。

比較すれば給料もかなり高いし、番組内でのポジションも早く上に上がる。

だから違う現場では嫌がらせのような扱いを受けた経験もあるし、よく思われないことも決してないわけではない。

そんな中、飛び切り優秀というわけでもなく、へたくそなVTRもよく作っていた僕に対して、色々イロハを教えてくれテレビマンとして大きく成長させてくれた。

社会人になってから会った中で本当に感謝している上司の一人、あこがれというか目標としている人の一人だ。


そんな僕にとっての恩人ではあるが、友人という関係ではない。

そもそも共に戦う仕事仲間を安易に友人という関係に落とし込ませるのは今でも好きじゃない。


だから昨年12月にその現場を離れてから連絡なんて全く取っていなかったし、自分の苦しい心境や愚痴をこぼしてもいない。

だがら、この文章を見た時には「この人らしい言葉だ」と思ったし、本当に大丈夫か心配しているというよりは、あくまで会話のとっかかりなのもわかっていた。


だけど、「もちろん、元気にしてます!」の一文を返すことができなかった。


長々と言い訳のような文章を書いたのち、「元気ということにしておいてください。」と返すのが精一杯だった。

その文章を打っているとき、ちょっとだけ泣くのをこらえていた自分に気が付いた。

「なんでこんな苦し紛れの言い訳みたいな返答をしているんだろう」と思った。

その後、何通かやり取りをして終わったけど、僕の苦しんでいる今の心境が言葉の端々から何となく伝わってしまっただろう。

せっかく連絡をもらったのにちょっと申し訳なかったな。


だけど、僕はウソが苦手だ。というか下手だ。

人にウソをつくと、そのことが心に引っ掛かり苦しくなってしまう。

また、ついたウソも覚えていないからその整合性もとることができない。

だからウソをついて「もちろん、元気です!」とはどうしても書けなかった。


その割に仕事でミスをした時とかには、さらっとウソをつけてしまうこともあるから、心がキレイということはないんだろう。

たぶん自分が苦しみたくないから、自分を苦しませるウソは苦手なのだ。


やり取りを終えて布団をかぶって考えていると、楽しかった時の人から連絡が来ると、その時を思い出して辛くなってしまうことに気が付いた。

「あんなに楽しく働いていたのに、なんで今こんなに苦しみながら生きているんだろう。」そのギャップに耐えられないのだ。

自分が大好きな仕事・現場がすぐ近くにあるのに、そこに自分がいないことに耐えられないのだ。


確かに、自分からは元の現場の人に対して基本的には連絡をしていない。

例外は一人いたけれど。


テレビの番組プログラムの数はとても多い。

だから例え現場に戻ったとしても、以前と同じ番組に行く可能性は極めて低い。

そんな(おそらく)戻れない、楽しかった現場の人と会話をすると、辛くなってしまうからだと今日、気が付いた。


きっと、もっと気軽に「暇ですか?」「元気ですか?」と言っていいのだろう。

要件なんてなくてもいいのだろう。

だが心の中では「現場の仲間と会って飲みに行きたい」という気持ちと

「今は会いたくない」という気持ちがせめぎあっている。


会えば楽しいだろう。飲めば楽しいだろう。

話したいネタはたくさんあるし、思いっきり笑いたい。あの頃と何も変わらない楽しいやり取りができるだろう。

でも会う前に、そして会った後に、今いる場所への耐えがたさがより強く感じられてしまうだろう。



だから、やっぱり今は前の現場の仲間と連絡を取りたくない。

楽しかった時の知り合いから連絡が来ると、泣きそうになってしまうから。


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