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タイ伝統の産後ケア「ユーファイ」体験レポ

2024年6月に、タイ・バンコクで第一子を出産した私。タイには伝統的な産後ケアがあると知り、経験してみることにしました。

ハーブの香りとタイらしい優しさに包まれ、心身ともに癒された幸せな3日間。忘れないうちに記しておきます。



タイ伝統の産後ケア「ユーファイ」

出典:Yu Fai: The Reviving Fire

タイで古くから伝統的に行われてきた産後ケアが、「ユーファイ」(อยู่ไฟ)です。

ユーファイは、タイ語で「火と共に」という意味。タイ伝統医学に基づくハーブ温熱療法で、産後の女性の疲労回復に大きな効果があるとされています。

全身を温めることで、子宮や骨盤の収縮を促し、痛みや緊張を和らげ、老廃物を排出。冷えの解消や母乳の分泌促進、ホルモンバランスを整える効果もあるのだそう。

Thailand Foundationのサイトにて、伝統的なユーファイに関する詳しい記述がありました。

“ユーファイの原則は、少なくとも1週間、最長で1ヶ月間、母親を高温環境下に置くことである。食事管理だけでなく、ホットマッサージ療法も行われる。 ユーファイ期間中、母親は木製の高床やベッドの上に横たわり、その下に暖房器具やストーブを置く。

温めた海塩を睡蓮の葉と布で包んだハーバルボールで、子宮と臀部を毎日マッサージする。(中略)母親は安静にする以外、他の行動は一切禁止される。全身くまなく熱に当たるように、15分ごとに姿勢を変える必要がある。”

引用元:Yu Fai: The Reviving Fire(筆者翻訳)
出典:Bangkok Post Lie down by a fire

地域により療法や期間は異なり、かつては厳格なルールに沿って行われていました。ユーファイは、家族や地域社会の協力が必要不可欠な大仕事。夫の役割はとくに重要だったよう。

“かつてユーファイの準備には数カ月を要し、ほとんどの仕事を夫が担った。たとえば家の掃除、ストーブの配置、薬草の採取、薪や食料のストック、妻が横になるためのベッド作りなど。昼も夜も火を絶やさないようにするのも、夫の義務だ。火の勢いが弱いと「縁起が悪い」とされる。妻の早期回復に、夫のサポートと献身が欠かせない。”

引用元:Yu Fai: The Reviving Fire(筆者翻訳)

ユーファイは母親の健康を支えるだけでなく、家族や地域社会の絆を深めるものだったんですね。すてき……。

今日では現代風にアレンジされ、ルールの厳格さも緩和しているようです。

友達に教えてもらってユーファイを知った私は、「妊娠生活と出産をがんばった自分へのご褒美にしたい!」と、予約を申し込むことにしました。

ユーファイの予約方法と留意点

ユーファイの施術を受けられる時期は、
・自然分娩は産後10日以降
・帝王切開は産後1ヶ月以降
とされています。

ユーファイ師に自宅に来てもらうのが一般的ですが、店舗で施術を受けることも可能。基本的には紹介制で、友人や知人を通じて依頼するパターンが多いようです。

私がユーファイ師のリサーチを始めたのは、出産予定日の2ヶ月前。ネット情報で日本人に人気のユーファイ師がいることを知り、直接コンタクトを取ってみることに。

それが、シルクルさんでした。彼女は大学在学中に日本語を学び、年に数度は日本旅行するという、大の日本好き。

出産予定日の1か月前、facebook経由で「直接予約はできますか?」と尋ねると、「1ヶ月後でよければOK」とのお返事。ちなみに、やりとりは英語です。

コースは3日、5日、7日、9日の4種類。1日の所用時間は5、6時間とのこと。初回ということもあり、もっとも短い3日間コース(6050バーツ)に決めました。

1日500バーツでベビーシッターをつけることもできたので、こちらも依頼。我が家はワンオペ育児なので、めちゃくちゃ助かる…!

※シルクルさんのユーファイを受けたい方は、Facebookから直接連絡してみてください。人気のユーファイ師なので、早めの予約がおすすめ。彼女の都合がつかない場合は、別の方が対応してくれるそうです。


当日までの準備

予約が完了すると、シルクルさんからこのような連絡がありました。

「施術用に、幅2~3メートル、長さ3~4メートルくらいのスペース確保をお願いします。あと、キッチンのコンロをお借りしたいです」

ユーファイ期間中はキッチンを使用されるので、不要なものは片づけました。冷蔵庫や冷凍庫は、ハーブを保管するためのスペースを確保。

その他に必要だったのは、以下のとおり。

・汚れてもいいパンツ 
・汚れてもいいバスタオル
・常温の水
・自分のランチ
・ケトルやポット

ユーファイで使用するハーブは、一度色が付くとなかなか取れません。身に着ける下着や、ハーブサウナで仕様するバスタオルは、汚れても問題ないものを用意しましょう。

実際、私もマッサージでパンツが黄色くなり、洗っても取れませんでした。

私は完全母乳で育児をしており、施術中に授乳できなければ、シッターさんにミルクを預けるつもりでした。

「もしくは、ランチしながら授乳できるかも?」と思いつき、おにぎりも握っておきました。形が歪ですが、 塩昆布、ゆかり、鮭ワカメです(笑)。


施術の流れ

当日の朝8時、シルクルさんとシッターさんがご到着。噂に聞いていたとおりの大荷物で、玄関先にまとめて置いてもらいました。

シルクルさんが手際よくハーブや鍋をキッチンに並べ、さっそく準備が始まります。ワクワク……!

多種多様なハーブに興味津々です。


施術の流れは、ざっくりとこんな感じでした。

8:00 シルクルさんとシッターさんがご到着
・ハーブスチームサウナ(15分)
・オイルマッサージ(約60分)
・ホットストーンマッサージ(約60分)
ーーー11:30 ランチ(約60分)ーーーー
・ハーバルボール、スクラブ(約60分)
・ヘッド&フェイシャル&肩マッサージ(約10分)
・ハーブサウナ(15分)
・シャワー
14:30 撤収


まずは、ハーブスチームサウナから。血液循環を促進し、老廃物を排出させ、筋肉の緊張を和らげる効果があるのだそう。

従来のサウナは、布で覆われた竹製のテント。ハーブが煮えたぎる鍋に竹パイプをつなげ、テント内に熱々の蒸気を送っていたようです。

“このサウナ療法に使われる一般的なハーブは、ザボンの皮、ソムポイの葉、スイートスゲ、レモングラス、アサガオ、カフィアライム、塩など。北部では、テントに入る前にハーブ、酒、樟脳を混ぜたものを体に塗る。残ったハーブ薬は体、とくに乳房に塗り、ハーバルボールでマッサージする。ハーブ水の残りは入浴に使える。“

引用元:Yu Fai: The Reviving Fire(筆者翻訳)



でも、自宅でサウナなんて、どうやって……?

シルクルさんが、エアコンの通気口にフックをかけ、布を吊るしはじめました。なるほど、これがテントか!

テントの下に椅子を設置し、その下で鍋に湯を沸かします。ここでハーブを煮出していくのです。

ぐつぐつぐつ。ハーブの香りと蒸気が部屋中に立ち込めてきました。

そうこうしているうちに、簡易サウナのできあがり。すごいー!

シルクルさん「どうぞ、入って入って~」

「サウナの時間は15分か20分、どっちがいい?」と聞かれ、とりあえず15分にしました。

服を脱いでバスタオルを体に巻き、いざテントの中へ。ハーブの香りが充満していて、しっかり温かい!

「写真を撮ってあげるよ」とシルクルさん。スマホを渡すと、こんな写真を撮ってくれました。めちゃくちゃシュール!笑

すっぴんのため自粛(笑)。

さすが、写真好きな日本人のニーズを熟知してらっしゃる(笑)。よい記念になって嬉しいなぁ。

サウナ中は、テントの中に雑誌やスマホを持ち込んで過ごしました。じんわり体が温まり、少しずつ汗も出てきた。

サウナを終えると、次はオイルマッサージ

マットに寝そべり、全身を指圧マッサージしてもらいました。使用するのは、肌に優しいココナッツオイル(最終日はローション)。

連日の抱っこやおむつ替えで、肩こりや腰痛に悩まされていた私。凝り固まった筋肉が、少しずつほぐされていくのを感じます。

あぁ、最高に気持ちいい。至福……。
夜間授乳で寝不足なこともあり、うとうと。

次は、ホットストーンマッサージ。コンロで熱したレンガをタオルで巻き、全身に押し当てていきます。ときどき「あちち!」という瞬間があったけど、さすがプロ。絶妙なタイミングで離してくれます。

心身がじんわり温まったところで、ハーバルボールマッサージ。これは、タイに古くから伝わるナチュラルトリートメントのひとつ。大量のフレッシュハーブを包んだハーバルボールを、全身に押し当てていきます。

“ハーバル・コンプレス・ボールは、カスムナー・ジンジャー、ウコン、サトウキビ、ソム・ポイの葉など、さまざまなハーブでできている。場合によっては、レモングラス、ターメリック、エシャロット、ガランガル、カフィアの皮、樟脳が加えられることもある。”

引用元:Yu Fai: The Reviving Fire(筆者翻訳)


子宮や胸は念入りに。この頃には、マッサージ効果で母乳が溢れ出てきていました。

お次は、全身スクラブ。スクラブをすり込むことで、古い角質や毛穴の汚れを取り除き、肌をなめらかにします。

スクラブは、天然素材を使った手作りのもの。日替わりで調合する材料が変わりました。

初日はタマリンド、ハーブ、はちみつ。

2日目は、ゴマとはちみつ。甘く香ばしいゴマの香りに包まれました。

スクラブ後に鏡を見たら、顔に大量のゴマが付着して、「泥棒ひげ」みたいで笑いました。

手に付着したゴマ


最終日のスクラブは、ハーブとミルク。

マッサージの締めは、ヘッド&フェイシャル&肩マッサージ。顔には、ゴマやヨーグルトなどの天然クリームを塗ってくれました。

すべてのマッサージが終わり、再びハーブスチームサウナへ。煮出したハーブ液の足湯付きです。

シャワーを浴びてすっきりさっぱり。バケツに入ったハーブ液を、全身にかけてから上がります。

着替えをして部屋に戻ると、熱々のジンジャーティーが用意されていました。ひとくち飲むと、甘くてホッとする味。母乳分泌を促す効果があるのだそう。

「1時間半はこのままにしてね」と、シルクルさんがハーブが入りの金属器をお腹に巻いてくれました。これで子宮を温めるみたい。

実は、ユーファイ初日の朝、シルクルさんから「ユーファイ期間中は洗髪しないでね。身体が冷えるから」と言われていました。

でも、髪に付着したスクラブやオイルが気になり、どうしても我慢できなくて……
毎日髪を洗ってしまいました。

シルクルさん、ごめんなさい!笑

施術の効果を実感!

3日間の施術を終え、全身ぽかぽか、肌はツルツルすべすべに。産後に悩まされていた「冷え」が解消し、肩凝りや胸の張りも緩和。さらに、母乳の出がよくなりました。

たった3日間でもその効果を実感しましたが、シルクルさんによると、「日本人には3日や5日コースが人気だけど、効果を高めるにはちょっと短すぎるのよ。余裕があれば、7日以上がおすすめ」とのこと。

ちなみに、タイ人には7日や9日コースが人気なんだそうです。


心身リラックスした極上の3日間

私が快適に過ごせるように、シルクルさんは常に細やかな心遣いをしてくださいました。

ランチやおやつの差し入れまで。手作りの惣菜や、ジョーク(タイ式お粥)など、全部とってもおいしかったです。なにより、その優しさが染みた…

干しバナナ
ジョーク
ジョーク
鶏と玉ねぎの炒め物
蒸しパン

シッターさんも優しく親切な方で、息子にとてもよくしてくださいました。彼女は基本的に別室で息子の世話をしてくれたので、私も施術に集中し、終始リラックスできました。

息子がぐずり出したら「そろそろ授乳する?」と聞いてくれて、授乳タイムもしっかり確保。

さらに、寝かしつけやゲップの出し方、母乳育児に関する情報など、育児に関するいろんなアドバイスをいただきました。

ワンオペ育児ですべてが試行錯誤のなか、とても心強かったし、勉強になりました。今でもそれらの知見が役に立っています。

ハーブの香りに包まれながら、心身ともに優しくケアしてもらった極上の3日間。

妊娠も出産もなかなかしんどかったけど、「がんばってよかった!」と心から思えました。生涯記憶に残るであろう、かけがえのないタイ生活の思い出にもなった。

ちなみに、ユーファイは生理不順やPMS、更年期障害などにも効果的なんだそう。産後の女性でなくても施術を受けられるみたいなので、気になる方は問い合わせしてみてくださいね。


ユーファイを学びたければチェンマイへ

シルクルさんによると、チェンマイにユーファイを学べる学校があるのだそう。彼女自身も通っていた「Thai Traditional Medical Council」です。

興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。


以上、ユーファイの体験レポでした★




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