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1分小説『新人類』

午後0時47分。人類は夜に寝て朝起きるが、当方は早朝寝て昼起きる新人類だ。四時間やそこらで思考が冴え渡るわけもなく、ぼんやりとした朝の風景。はっきりとして見渡すまでもなく、見知った退屈な光景。

布団の中。乾燥、鼻とのどは常に不調。意に反して開かない目を、ブルーライトの光で無理矢理こじ開ける。誰からも連絡の来ないSNSは、誰とでも繋がれるということについてのささやかな矛盾を提供してくれる。可能性はいつまで経っても現実にならない、か。悲観的な未来予想図は、俺の頭のデフォルト設定。なんとなくスワイプして、最新のニュース。

他人の不倫、炎上するSNS、金、結婚、ダメ男の特徴、悪意、ハムスター、殺人事件、死、正しさ、女を落とすテクニック、一年後の自分。世の中には問題が溢れている。

次から次へとスワイプして、いつまで経っても終わりが見えない。そりゃそうだ。自己中心が世界の中心。名ばかりの正義と誰も知らない倫理観。システム化された政治と芸能の媒体は権力と欲望。持ち越された不快感は商品紹介や園芸にまで、資本主義的疲労感を付与する。インターネットサーフィン。バランスを崩して溺れた。


昨日の深夜のこと思い出して、目の奥が急に痛み出した。突き刺さるような鋭い痛みだ。俺はここずっとネットの海でもがいている。それに気が付いて、むかついた。何の必要性も必然性もないのに手放せずにいた四角い液晶画面を、少し強めに放り投げる。思いのほか飛距離は長く、何度かバウンドしたあと壁にぶち当たった。鈍く固い音がして、四角い箱は動かなくなった。どうやら息絶えたよう。自分の行動を悔いた。

おざなりのまばたき、痛みは強くなった。目を開ける体力はもう無く、まぶたの裏の血管が貼り付いてしまった。目をつぶると、じんわりと潤っていく。かゆいところに手が届いたような感覚。無意識に流れ落ちた涙が布団にしみていく。



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