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1回の選挙コストは600億円!?コスト削減だけじゃない、投票率低下もSDGsもまとめて解決!ネット投票がもたらすミライとは

こんにちは!パイプドHD広報の久保です。
1月29日(金)にYouTubeでライブ配信された、東京都選挙管理委員会主催の「FROGMAN氏と考える選挙のミライ」に、当社グループでインターネット投票事業を行う株式会社VOTE FOR代表の市ノ澤が登壇しました。

ライブ配信をとおして、約100名の方々とチャットでの質問や意見を交わしながら「インターネット投票による選挙のミライ」についてFROGMAN氏とディスカッションをしたり、視聴者の方々に実際のインターネット投票を体験してもらったりと、盛りだくさんな内容でした。今回は、当日の模様や視聴者の方々の質問を一部抜粋して、ご紹介します。

(2021/3/12 追記)
東京都公式動画チャンネル「東京動画」に、「前編」「後編」でライブ配信の映像が公開されました。併せてご覧ください。

朝から晩までインターネット投票のことばかり考えている会社「VOTE FOR」

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【F:FROGMAN氏(左)/市:VOTE FOR市ノ澤(右)】

F:今回は、インターネット投票による選挙のミライについて考えていきたいと思います。
本日の講師は、VOTE FOR代表の市ノ澤充さんです。政治と選挙のプラットフォーム「政治山」を運営し、インターネット選挙やインターネット投票の研究・推進を行っています。よろしくお願いします!

市:本日はインターネット投票について分かりやすくお伝えしたいと思います。社名のVOTE FORのとおり、朝から晩までインターネット投票のことだけを考えている会社の代表をしています。よろしくお願いします。

F:まだ世の中でインターネット投票とかはやっていませんが、御社では具体的にどのようなことをされているのですか?

市:インターネット選挙・投票を実現するためには、「公正・正確な情報」と「安全な投票環境」の2つが必要で、これらを整備していく事業をしています。「公正・正確な情報」の整備では、2011年から運営している「政治山」のサイトで全国のすべての選挙を掲載しています。また、「安全な投票環境」では、つくば市や町田市と一緒に行っているインターネット投票の実証実験や、大学での組織内選挙などの支援をしながら、インターネット投票の実現に向けて実績を重ね、いざ公職選挙に導入する時には対応できるように準備をしています。

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インターネット投票の冒険者?!

F:こういった分野に参加している企業は多いんですか?

市:選挙関連のメディアを運営したり、投票システムを構築したり、それぞれ取り組む企業や団体はありますが、公職選挙にゴールを絞ってメディア運営からシステム構築、法改正の提案や具体的な実運用の掘り下げまでしているのは珍しいのではないでしょうか。

F:冒険者と言ってもいいぐらいですね。

2017年の衆院選投票率は戦後2番目の低さ

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市:では、インターネットの基礎知識について概略からご紹介します。全体の投票率の推移からおさらいしましょう。2017年の衆院選投票率は53.68%で戦後2番目の低さでした。統一地方選の投票率は50%以下で、半数の人しか参加していないという状況です。また、年代別で見ると、20代、30代が30%台と非常に低いです。

投票所に「行きたいのに行けない人」が一定数いる現状

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市:では、なぜ投票所に行かないのか?という棄権の理由ですが、無関心が最も多いんですが、「仕事があったから、体調がすぐれなかったから、重要な用事があったから、天気の影響、投票所が遠い」など、行きたいのに行けない人が一定数います。

投票所までの距離が長いほど投票率は下がる!

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市:続いて、投票所の数と距離と投票率についてですが、投票所までの距離(時間)が長いほど投票率は下がることが過去の調査研究からも明らかにされています。また、投票所まで10分以上かかる人の半数は期日前投票を利用するということで、投票日に投票所に行くことのハードルの高さがこのことからもうかがえます。

さらに、人口減少や自治体の財政難、合併などにより投票所の数も着実に減少しています。これまで10分で行けた投票所が30分、1時間かかるケースも増えていくと思います。こうした投票率低下の課題にもインターネット投票の導入が有効と考えられます。

また、投票率向上の施策では、拡大傾向にある「選挙割」を若い人が好んで利用する傾向があります。

F:「選挙割」!?そんなのがあるんですか?

市:はい。投票所に行って、証明書をもらい、近くのお店で証明書を提示すると、ささやかな割引などを受けられるというようなサービスも少しずつ普及しています。

衆院選1回の実施に約600億円のコスト!!

市: 現在、選挙にかかるコストとして、衆院選1回に約600億円、参院選1回に約500億円と言われています。

F:600億円??そんなにかかるんですか?

市:そうです。多くは場所と人にかかるんです。なので、選挙実施に必要な人員も含め、インターネット投票であれば少ない人員で、費用を抑えて実施することが可能になります。

視聴者と一緒にインターネット投票を実体験してみた

F:早速、みなさんにもインターネット投票を体験していただきましょう!

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市:「メアドで仮登録→仮登録完了メールから本登録画面へ→本登録完了メールから投票コード入力画面へ→投票コード入力後ログイン→投票画面→投票完了」という流れで投票していただきます。投票コードを入力してログインするのが投票所に入るのと同じ行為だと思ってください。

【質問内容】
次回の国政選挙では、インターネット投票を実現すべきと思いますか?
【選択肢(択一)】
「全面的に実施すべき」、「段階的・部分的に実施すべき」、「どちらとも言えない」、「検討しても実施すべきでない」、「検討も実施もすべきでない」

市:投票画面での候補者の並び順や一覧性については、実際の選挙でも配慮が必要になります。例えば、一番上に表示される人は投票されやすいとか、候補者が並んだ時に両端は投票されやすいとか、先入観や答えにくい環境、位置効果を排除した画面構成に配慮することも重要です。
集計結果は後ほど。

視聴者からの質問にズバッと回答!

「Web投票にしたら、忙しくて行けなかった人も投票できるから投票率は上がると信じたい。」

市:投票率は確実に上がると思います!
実際に2017年の衆院選で投票日が台風と重なり、子育て中の主婦の方が「こんな天気の中、子ども連れて投票になんか行けない」と言っていました。この時期から、これまで「インターネット投票できたらいいね」と言っていた人たちが、「なぜ、インターネット投票できないのか」と言うような空気に変わりました。

F:確かに、これだけインターネットでいろいろできると、アナログなことが、なぜいまだに自動化されないのか、現場でないとだめなのかと思う場面はありますよね。皆さんの意識も変わりつつあるんですね。

「インターネットで本人確認は本当にできるのか?」

市:本人確認に関しては、現在総務省でも指針を示している「マイナンバーカード」が前提です。日本で考えられる限りでは、マイナンバーカードでの個人認証が、最もセキュリティレベルは高いです。かつ選挙で本人確認をしようとしたら、マイナンバーカードを使わざるを得ないと思います。

「リテラシーの低い人や、ネットに不慣れなお年寄りなどはどうするの?」

市:実際には、ボタンを押す操作画面などは、とてもやさしい画面構成にすることが可能なので、特別な知識がなくても、どなたでも投票できる、それこそエレベーターでボタンを押すぐらいの操作感覚でインターネット投票の完了までできる設計は可能だと思います。

「不正投票や投票率アップに向け政治家の皆さんはどう対策を立てていかれるのでしょうか?」

市:今の制度では、投票所に投票券を持って行き、性別・年代くらいの確認になるので、投票券を不正に入手すれば不正投票でき、実例も出ています。マイナンバーカードを使えば、そのリスクは防げると思います。しかしながら、マイナンバーカードを持参するだけではなく、マイナンバーカード内の証明書用パスワードや顔画像データを掛け合わせて本人確認すれば、より厳重に個人の不正投票を防げると思います。

また、政治家の方々の対策についてですが、投票場所が変われば、選挙運動も変わっていくと思います。議員のリテラシー向上だけでなく、ネット上で選挙・投票が完結するなら、候補者や選挙管理委員会などはネット上できちんと情報を発信していく方法を検討していく必要があると思います。

「投票システムの管理は誰がするんですか?」

市:実際のシステム自体は、国政選挙であれば総務省や中央管理委員会で、自治体の選挙は各自治体の選挙管理委員会が管理するべきだと思いますが、管理の内容がブラックボックスになってしまうと選挙の公正性や透明性が保てないので、第三者機関などを入れて仕組みや人を監査する体制をとる必要があると思います。

第1回目投票結果発表!
88%が「前向きに進めてほしい」

F:投票の状況は、今リアルタイムで見れるんですよね?ということは、今後投票している最中に選挙速報ができたりするということですね。

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市:リアルタイムで投票結果は見れます。ただ、現在の公職選挙では、法律上、投票期間中に投票状況は出せません。1回目の投票では、88%近くは前向きに進めてほしいという方のようです。

2022年参院選の在外投票でインターネット投票の導入が実現するかも

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市:続いて、インターネット投票の取り組み状況を国内から説明します。現在、日本では在外邦人の投票にインターネット投票を導入する方向で総務省が準備を進めています。早ければ、2022年の参院選で実現できるかもしれません。

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市:自治体での取り組みでは、つくば市が市の政策コンテストの投票において、実際の選挙でも使えるようにマイナンバーカードでの本人認証や顔認証、デジタルID、ブロックチェーンなどを活用した投票実証を2018年から2020年までにおこないました。

「やり直し投票」で自由意思を守るエストニアの選挙

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市:次に国外の状況です。エストニアが最もインターネット投票が進んでいる国であることは間違いありません。2005年の地方議会議員選挙、2007年には国政選挙からインターネット投票を導入しており、近年では4割超がインターネット投票を選択しています。人口のほぼ全てがIDカードを保有しており、期間中の投票確認とやり直し投票を可能としています。

F:やり直し投票って何ですか?

市:上書き投票とも言いますが、選挙期間中に投票した内容を上書きすることができるというものです。投票を強要された場合、後日投票先を変更でき、自由意思を守ることができるので、やり直し投票を可能にしています。これは、日本でも考えるべき重要な観点です。

投票システムの個人情報漏えいやデータ改ざんの心配は?

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市:続いて皆さんが、最も心配されている個人情報漏えいやデータ改ざんなどのサイバーセキュリティについてです。
紙の投票については、施錠された投票箱を施錠可能な部屋で管理と分かりやすいのですが、インターネット投票では、投票データを暗号化してアクセス権限を制御するなどがあります。投票内容の改ざんについては100%のセキュリティはあり得ないので、事後検証可能な仕組み作りが必要です。あと、フェイクニュースや偽サイトへの誘導にも注意が必要ですね。

投票所で望まぬカミングアウトをしていませんか?

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市:最後に、民主主義の根幹を支える「投票機会の平等」という点についてお話しします。
個人的には一番思い入れがあり、これがあるからインターネット投票を進めるべきと考える根拠にもなっている「平等な投票環境」です。

これは、当たり前のことのようですが、日本では実現していないことです。別に世界と比べて劣っているわけではありません。在外投票や山間部、島しょ部に住む人にとっても移動コストが投票率低下に影響することは冒頭でもお話ししたとおりです。

その他、インターネット投票であれば、障害や介護で移動が難しい、育児で家を空けられない人も投票所に行かなくて済みますし、読み書きに支障のある人も代理投票を使わず、自身の投票の秘密を守ることができます。

そして、投票所受付時の本人確認は、個人情報漏洩やアウティングなどリスクが高いと感じています。個人情報漏洩では、目の前の人の住所を悪意のある人が名簿で見た際に、犯罪に悪用される可能性があります。

また、アウティングはとても重要な問題です。投票所入場券には性別の記載があります。受付に来た人の性別記載が男性なのに、見た目が女性の場合、この投票者は自分が望まない性別の暴露をされるんです

数年前までは投票所で性別によって点灯ランプを色分けするような地域もあったんですよ。こうすると周りの人には分かってしまうんです。選挙権を有しているかどうかに性別は全く関係ないのに、本人確認のための運用上、こういう制度が盛り込まれているんです。

これはLGBTの方に対する配慮という点でも解消していく必要があると思います。投票所に行く人も、受け付ける側も、相当なストレスですよね。

インターネット投票でSDGsの課題も充分解消が可能

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市:SDGsやESGの視点から考えた際、インターネット投票はどうあるべきかというと、17のゴールのうち、少なくとも5つに該当します。

例えば、「5.ジェンダー平等を実現しよう」では、女性の政治参加率の低さが日本で問題視されていますが、子育て中で投票所に行けない、妊産婦の病院からの投票など、ハードルの高さがあるので、インターネット投票が貢献できます。

「12.つくる責任 つかう責任」は、環境問題と一言でいうと分かりやすいかもしれませんが、選挙には紙や木材、資材が大量に使われています。今の投票用紙はとても便利になっていて、片面がプラスチック加工されていて、折りたたんで投票すると開票時には開いていて、開票作業がスムーズになるんですが、処分する時は紙とプラスチックを分けなければいけないんです

F:えっ!誰がやってるんですか?人ですか?

市:人がやるか、専用設備を使うか、いずれもかなりの費用がかかります。ですので、使用済みの開票用紙が倉庫に眠ってるなんて噂もあったり。それこそ、それが外部に漏れたら問題ですね。

このように、インターネット投票でSDGsの課題も充分に解消できるので、SDGsの視点からも進めるべきではないかと思います。

今の選挙では選挙期間中に候補者が亡くなったら無効票って知ってた?

市:いろいろお話してきましたが、今までの内容を聞いて考えが変わったよという方は、このイベントではぜひ上書き投票してみてください。
実際に選挙最終日まで考えられる投票環境はとても重要で、先程の買収・強要の話もそうですが、私はどちらかというと、こちらの方が民主主義ではより重要なのではないかと思ってます。例えば、現在は、選挙期間中に候補者が亡くなった場合にその方に投票した票の変更ができないので、無効票になってしまいます。かつ、無効票にされた方は再投票できません。

F:えっ、ダメなんですか?

市:はい。その他、人気候補者のスキャンダル発覚などで投票後に投票先を変更したいと思っても、今はできないんです。なので、もしその人が当選してしまったら、そんなつもりじゃなかったというストレスと不信の元ですよね。ぎりぎりまで選挙に関わり、関心を持って考えて投票してもらうことが重要だと思います。

F:2回目の投票状況では、「全面的実施」から「段階的実施」に移行した方が増えましたね。皆さん理解の上で、前向きには捉えていただけたということですね。

視聴者のチャット質問への回答を再開!

「選挙費用はやはり抑えられるんですよね?」

市:間違いなく抑えられると思います。紙からネットへの切り替え時には一時的にダブルコストはあると思いますが、参考までに国勢調査を受け付けるシステムの基幹は20~30億円ぐらいでできています。完全に移行することができれば、今の600億円とかの10分の1近くにはなるので、段階的にコストを下げていくことが可能です。

「無効票減るの?」

市:間違いなく、無効票、白票は減ります!インターネット投票では不明票・疑問票が発生しません。現在は1回の投票で2%が無効票になっており、衆院選のように7000万人が投票する選挙だったら140万票が無効になっているので、その点だけでも大きな価値はあると思います。

デジタル庁設置、マイナンバーカード普及がインターネット投票を進める

市:選挙のミライというところでは、在外邦人のインターネット投票の実証やデジタル庁の設置、マイナンバーカード普及施策の加速により、インターネット投票に前向きな体制作りが進んでいます

F:今日はありがとうございました。東京都議会選挙が令和3年7月4日(日)に決まったので、みなさんもぜひ投票に行ってみてください。

開催概要:1月29日(金)18:00~19:30 YouTubeライブ配信
主旨:新型コロナウイルス感染症禍で行われた東京都知事選挙は、過去最多の22名が立候補し、投票率は全体で55%となりました。一方で、選挙期間中から、「投票所で密にならないか」、「こんな状況だからこそ、インターネットでの投票はできないか」といった有権者の声が多く聞かれました。
そこで、「鷹の爪団・選挙のススメ」※でもお馴染みのFROGMAN氏と、インターネット投票の研究・検証実績の豊富な当社代表市ノ澤が参加して、トークセッション「FROGMAN 氏と考える選挙のミライ」を開催し、「インターネット投票とは?」といった素朴な疑問のほか、選挙の未来に向けた課題や展望についてわかりやすく紹介しました。
※鷹の爪団・選挙のススメ
選挙の大切さを訴求するアニメーション。教育機関での出前授業をはじめ、様々な場所で活用されている。

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