見出し画像

「道民にも道外の魚を食べてほしい」スーパーとの差別化で生き残る 鮮魚店「魚屋 とっち」札幌市

 札幌市の鮮魚店「魚屋 とっち」は2022年にオープンし、地元の人々や業者に愛されています。スーパー全盛の時代の「街の魚屋さん」の実体とは。店主の田中寿宜さんに聞いてみました。


鮮魚が並ぶ様子

 こじんまりとした売り場にはズワイガニや赤ガレイ、青ゾイ、アジなどがそのままの姿で並んでいます。「今、旬なのがホッケ」。店内には30~40点程が並んでおり、いわゆる街の「お魚屋さん」という様子です。


 札幌市中央卸市場が開場している日は朝の5、6時頃に出向き、なじみの卸売店を周り魚介類を買い集めます。魚介類を選ぶ基準について「鮮度は大事だけど値段も大事。ある程度抑えないと一般のお客さんは買ってくれない」と言います。

 店頭には鮮魚のほかに、加工品も多く取りそろえています。「ほっけの西京漬け」に「桜ます バジルソース」――。半身の大振りの切り身が視界に飛び込みます。漬け魚(つけうお)は地元の主婦に人気だといいます。

 「やはり主婦の方々は時間がない。だからフライパンにオリーブオイルを引いて焼くだけの『桜ます バジルソース』が人気」

 そして一番人気なのがお刺身の盛り合わせ。休日だと魚用ショーケースに2、3回補充するほど人気だといいます(=写真)。


魚用ショーケースに入っている刺身の盛り合わせ


スーパー全盛の時代 なぜ「街のお魚屋さん」を開店したのか?

 「いずれは自分のお店を持ちたいな」と考えていた中、札幌に鮮魚店のオープン・ラッシュが始まりました。田中さんは2022年の開店当初を振り返り、「一和鮮魚店さんやみなとや鮮魚店、マルトヨ新沼鮮魚店などここ数年で開店した鮮魚店も多い。うちもその流れに乗ったという感じ」だと話します。

 なぜ急に札幌に複数の鮮魚店がオープンしたのでしょうか。田中さんは鮮魚店の世代交代が起こっているといいます。

 「意外に思う人もいるかもしれませんが、数年前までは札幌の魚屋さんの店主の平均年齢は40代後半から50代位だった。ここ数年で30代前半から40代前半の若手が自分の店を持ち始めた」

「スーパーにないモノを店に置きたい」「道外の魚を食べてもらえたら」

 魚屋 とっちの目の前には、北海道で幅広い地域に展開する食品スーパー「ダイイチ」があります。しかし、魚屋 とっちも大手スーパーにはない強みがあると言います。「市場ではスーパーさんが置いていないものを探している」

 確かに店内を見回してみると、「青ぞい(釧路産)1本999円」や「ずわい姿(道東産)1杯699円」「活ぼたん(虎杖浜産)1尾220円」など、スーパーではあまり目にしない魚介類が並んでいます。店頭の魚の種類も季節の移ろうごとにどんどん変わります。


店内の魚介類

店内にある魚介類

 さらに田中さんは、北海道民にも道外の魚を食べてほしいと言います。「北海道の人の中には、どうしても北海道の魚が一番だと思っていて、道外の魚を毛嫌いしている人がいる。でも道外にもおいしい魚はいっぱいある。そのことを知ってほしい」


刺身の盛り合わせ

 実際取材時に店で販売されていた刺身には、ウリの本マグロのほかにサワラ(長崎県産)や天然のタイ(熊本県天草産)がありました。「これからの暖かい季節は、どんどん南の地方の魚介類がおいしくなる」と田中さんは言います。(野中直樹)

八協魚類(株) 魚屋とっち

2022年に開店した札幌市西区の鮮魚店

住所:札幌市西区八軒10条東4丁目1-26
営業時間:午前10時から午後5時まで
定休日:日曜日、月曜日、祝日


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?