あと10年で「美術館で鑑賞する」という習慣が終わるかもしれない。という話。
//病気の子供を使った詐欺と被害にあった男の末路
//破壊主コロナと創造主テクノロジー
//アート鑑賞のリワード
//絵を見るのではなく絵に入る時代へ
1.病気の子供を使った詐欺と被害にあった男の末路
ある女性が赤ワインを飲んでいる男に「病気の子供がいるんです。お金を恵んでください」と言った。
男は不憫に思い、お金を渡す。去っていく女を見届けると別の男が近寄って来て言う。
「おまえ騙されたな。あいつに病気の子供なんていないんだよ。」
男が「そっか・・・病気の子供がいないんだ。」と笑う。男は嬉しそうに店を出て行った。
金を取られたことよりも、病気の子供がいなかったことを喜ぶ男。何を示唆しているのでしょうか?
・この男は赤ワインを飲んだ竈門炭治郎かもしれない。
・男と女は、元カップルだったのかもしれない。いや妹だったのかも。
など、変な示唆を半ば強引に導くことはできますが、私はこの物語の示唆をこのように受け止めています。
・視点を変えれば、態度も変わる。態度が変われば、チャンスが見つかる。
2017年の美術館への延の来場者は3978万人でした。現在、新型コロナウイルスにより正確な数字は見つけられなかったのですが、120万人以上を呼ぶフェルメール展のような大型企画展が軒並み開催されていないことを考えると単純計算でも1/3以下になったと考えられます。
不幸は来場者数減少に留まらず、売上減少によるスタッフ人数の減少。さらにはそれが引き金となって、運搬費の高騰。また少ないスタッフによる運搬作業の状況から保険金の高騰が問題となっています。
これにより世界中の名作が日本で見られず、コロナはアート鑑賞を退屈なものに変えてしまいました。
では、赤ワインの男にこの状況を話したら、何ていうでしょうか?
おそらく男は
「そっか・・・行けていない人の予算が浮いてるんだ」と笑うでしょう。
では、このチャンスどうやって拾おうと思っているのでしょうか?
それが次の話にもある、テクノロジーを活用した全く新しい鑑賞体験です。
2.破壊主コロナと創造主テクノロジー
破壊主コロナが消滅させたものは
・過酷な通勤時間
・無駄な上司との打ち合わせ
・雑菌だらけの現金支払い
など、枚挙にいとまがありません。そして、このような意味のある破壊は、現代だからこそ成立しているということです。例えば、これが、僕が生まれた1988年に新型コロナウイルスが流行していたらどうなっていたでしょうか?
そう。成立していないんです。ここはすごく重要なポイントだと思います。赤ワインの男に言わせれば、
「今でよかった・・・」と安堵しているでしょう。
そして、成立させている最大の要因は、テクノロジーの発展です。いつの時代も破壊と創造は滞りなく連続的に起こるものです。
コロナウイルスの感染が東京で2000人を超えた1/12時点で、目を向けるのは破壊主の方ですが、創造主である現在のエンタメ領域におけるおよびVRやARなどのテクノロジーに視点を移したいと思います。
まず、人間が「画(映像含めて)」を見るという意味での歴史をざっと振り返ってみます。
元々は、人類が焚き火を囲んでいた時代から、「画」は言葉によって限りなく想像に容易い状態で情報伝達されていました。やがて、ルネサンス期に遠近法の確立により絵画は、布教理由としても使われ、一気に広がりました。それをさらに加速させたのが、印刷技術の登場です。最初は版画からでしたが、情報量の観点から本、新聞、雑誌は400年に渡って世界の中心となりました。それを破壊したのが、テレビの登場です。続いてプラズマスクリーンの登場で場所の制約を緩くしました。
ではその薄型のテレビを破壊するものは何か?それはもしかするとマジックリープという会社が目指しているスクリーンの非物質化かもしれません。
2019年は時価総額は64億ドルだったのですが、2020年6月には4億5000万ドルと半年で93%以上下落した。そう、世界はもうこれより進んでいるのです。(受け手、マーケットが適応していないだけ)
現在、最も期待されているのはこんなヘッドギアを装着する必要のない、ARスマートコンタクトです。開発元のMojo Visionは、現実世界に重ね合わせた拡張現実(AR)の映像を見ることができるコンタクトレンズの試作品を開発しています。また、スタートアップアップルのCEOティムクックもインディペンデント紙で「ARスマートコンタクトはスマホと同じくらい大きな市場になる。900億ドルの市場を生み出す」とインタビューで答えています。
ドコモのiモードを使っている時に、誰も今のようにスマホを使うなんて想像できなかったように、このARスマートレンズも現実になるとは想像できないでしょうが、その未来は近いと思います。
日本の家電メーカーが「どうやったら薄型にできるか?」と日々格闘している中、アメリカでは「どうしたら、スクリーンをなくせるか?」と別の問いに向き合っているのでした。彼らは、1億ドル以上の資金調達を済ませて、アマゾン、マイクロソフト、Appleから優秀な人材を集め、日本のコンタクトメーカーと協業しています。サプライチェーンや各国の承認が必要であるという課題は残っていますが、スケールするのに3年はかからないと言われています。
さらに、ARスマートコンタクトの追い風というか相性のいいテクノロジーが出てきています。それは、元々「※閉じ込め症候群」の患者を支援するために開発されていてBCI(ブレイン・コンピューター・インターフェイス)です。これは脳を使って、現実世界を写し出す技術です。具体的な事例としては、イギリスの映画監督であるリチャード・ラムチャーンは「ザ・モメント」と題した映画を発表しました。この映画では、観客にヘッドキアを装着させて、場面場面で観客の頭の中で起きていることに応じて、音楽や映像が変わるというものでした。この技術が応用されれば、頭の中で作った世界を仮想現実化してそこでシェア(交流する)みたいな体験も近いかもしれません。
※意識が保たれ開眼していて外界を認識できるが、完全四肢麻痺と球麻痺のため、手足の動きや発話での意思表出能が失われた状態を指す。
3.アート鑑賞のリワード
さて、そろそろテクノロジーの進化とアート鑑賞についての話を帰着させなければなりませんね。(頑張ってつなげますので、もう少し読んでください!)
私がPINTORというサービスを作ってきた中で、なぜ人は美術館で絵を見るのか?について多くの人にその問いを投げて、考えてきました。
結論を言うと、絵単体を見たいのではなく、その空間に自分を立たせている自分に満足している。非日常にいる自分に酔いしれたい
という欲求があることがわかりました。もちろんこれだけではないですが。
美術館で絵を見るという体験が原始的なままになっている理由はこの欲求に直結していると思います。
もう少し、言えば、雑誌やテレビ、アプリで見るレベルではにいくら素晴らしい絵がその上に乗っかっても、そのリワードに報うことができないのです。
それが、VRやARなどに乗っかるとどうでしょう?
4.絵を見るのではなく絵に入る時代へ
PINTORはこのテクノロジーの進化とともに、アート鑑賞における根本的な欲求を満たすチャレンジをしていきたいと思います。20世紀後半の技術では到底成し遂げられなかったことが今では可能となってきています。
ARやVR技術の進化とともに、今では想像できないようなアート鑑賞体験を作っていきたいと思います。
それは、もしかするとゴッホの最も醜い傑作「夜のカフェ」にあなた自身が入るような体験かもしれません。そのカフェでビリヤードやティータイムを楽しむのもいいですね。
そう。10年後は美術館はあなたの目の前にあるかも。
いや、もっと早いかも。
PINTOR使ってください!
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