明日の広報1 情報接触の変化(パラダイムシフト)

広報活動の基盤が情報(コンテンツ)にあるのはいつの時代でも不変です。この情報接触、流通に数十年に一度、ひょっとすると100年に一度の変化(パラダイムシフト)が起こっています。まず、情報接触の4つのパラダイムシフトを示したうえで、この変化がもたらす広報の明日の姿を見ていきます。

第1の変化 情報爆発と情報消費(スピード)の急速化

過去10年で接触可能な情報量は637倍増加した一方、実際に消費した情報量は33倍でしかないという総務省の調査結果はよく知られています。膨大な情報が日々ネット上に蓄積されるのに、これを消費する人間には1日24時間しかないのですから、この乖離が激しくなるのは必然です。実に99、996%の情報は誰の目にも触れずにスルーされているのです。
「情報が多すぎる」と感じる人が84%もいるのです。必然的に「時間がない」「時間が過ぎるのが早すぎる」と感じる人が多くなり、倍速視聴やファスト映画がブームとなっています。
数年前にはアメリカでのニュースの賞味期限は48時間と言われていましたが、今、ニュースサイクルは24時間にまで短くなっています。
こうした変化が情報接触の構造変化をもたらし、広報活動自体に大きな変革をもたらすことになるのです。

第2の変化 誰でもメディア時代

インターネット、SNSが生まれる前の時代は基本的にメディアだけが情報の発信源でした、メディアが情報を独占していたのです。しかし、かつては情報の受け手だった生活者が今は最初の発信者であり、流通させ、拡散させ、論評する主人公となりました。一人一人の生活者が記者であり、カメラマンであり、批評家である「誰でもメディア」の時代になったのです。
アフリカのある国では5000人以上のフォローワーを持つインフルエンサーはメディアとして認定され国から規制を受ける対象となっています。
今は個人の情報発信力が組織を上回るようになり一人一人の個人がメディアの時代になったのです。

第3の変化 いつでもどこでも情報の受発信ができるインフラの完成 
→「スマホ」の誕生

従来のメディア(4マス)には時間と空間の限定性がありました。新聞・雑誌は紙、テレビ・ラジオは受信機がなければ情報は受け手に届きません。紙面と放送時間には限界がありました。つまり情報量も伝えるスピードにも当然限界がありました。しかもコンテンツの制作とそれを届ける流通には時間と手間とコストがかかっていました。インターネットと「スマホ」の登場により従来のメディアの持つこの時間と空間の限定性が超越されたのです。

第4の変化 SNSが情報接触のプラットフォームになった

インターネットの登場につずいて情報接触の劇的変化をもたらしたのがSNSの誕生です。
私は今年の4月にある企業の新入社員9名に研修を実施しました。その場で当時、話題になっていた某ファーストフードチェーンの専務の炎上事件をどのメディアで知ったかを聞いてみました。5人がSNS,、2人がTV、残り2人がネットニュースでした。この結果は今やニュースはSNSで知る時代になったことを証明するものでしょう。
今時、TVを見る20代はいないはずなのでTVで知った2人に自分の部屋にTVがあるのか聞いてみました。2人とも自分の部屋にはTVはなく家族がいつもいる居間のTVでこの事件を知ったのだそうです。ネットニュースで知った2人に情報源のネットニュース名を尋ねましたが全く記憶に残っていませんでした。
情報過剰で常に時間に追われている現代人、とくに若年層は知りたいことだけ知ればいいという受動的情報接触スタイルになっています。情報を見比べない、情報源は少なくていい、当然情報源を意識しないということになっているのです。「情報源を気にしない」「本文を見ず見出ししか見ない」人が60%という調査データがあるようにこうした傾向がますます顕著になっています。それでなくとも人は「自分の見たいものだけ見たい」自分が聞きたいことだけ聞きたい」という習性が強いのです。

昔のメディアが唯一の情報源だった時代から、SNSが情報と出会う場、ニュースを最初に知る場へと変化したのです。
勿論、SNSを含め多くのメディア間で情報がリアルタイムで交換され相互に影響を与える構造はいつの時代でもあります。マスメディアの情報源の60%がSNS、逆にSNSの情報源の30%はマスメディアといった相互依存構造が現実なのです。重要なのはSNSがすべてのメディアの基盤となる存在となっているという事実です。すべてのメディアのプラットフォーム、情報インフラがSNSという時代が今なのです。

情報接触構造の劇的変化は、広報がマスメディアだけを相手にしたパブリシティと広告といういずれもマス対象のコミュニケーション活動の限界を示唆しています。そもそも大ブーム、大ヒットは遠い昔の話になりました。もはや大衆、マスは消滅したのでしょうか?。
次回以降も広報の明日の姿を追っていきます。


となっている。


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