ネズミ奮闘記 家と私(14)
父が「こんな良いとこ他にないじゃ」と豪語した六畳一間に住み始めて数カ月が経った。狭くて古いアパートの2階は、ベランダに続く掃き出し窓を空けても隣のビルの壁が目の前にあるだけで、日光はほとんど入らない。部屋には京都のあの盆地特有のじめじめとした熱気がこもり、アパート全体に独特のかび臭さが漂っていた。
そんな部屋のことだ。僕がまず一番に心配したのは害虫である。臭いや湿気は対処できても、部屋のあらゆる隙間から、今にもあの光沢のある黒い虫がこんにちは!と顔を出してきそうで気が気でな