家と私 (9)君の夢が叶うのは
ギターと押し入れ
中学1年の春、親から誕生日プレゼントでアコースティックギターをもらった。
YAMAHAのベージュのものだ。
特にほしがっていたわけではなく、唐突なチョイスだった。
母と私は当時コブクロにはまっていたので、弾いて欲しかったらしい。
もらった時の気持ちは良く覚えている。
「どうせうまく弾けずに押し入れに入れられる運命なんだろうな」と、もらったうれしさよりもプレッシャーと申し訳なさが先行した。
スピッツのチェリー
予想に反して、ギターは押し入れ行きを逃れ、いまも実家のギタースタンドに飾られている。
ピックガードはぼろぼろで、本体も至る所にぶつけたようなへこみが付いている。
大学に上がるまでの4年間、毎日弾き続けたからだ。
ギターをもらった中1の1年間は、やはり誰も弾かず(というか練習した覚えもない)、押し入れに眠っていた。
日の目を見るのはそれから1年後、当時仲の良かった陸上部の友達とバンドを組むことになったときのことだ。
友人の家の廃工場にドラムを置き、練習場所にした。練習曲目はスピッツのチェリー。
今思うと中学生にしては渋いが、この曲はコードを4つくらい覚えれば弾けるので初心者向きだった。
Youtubeで弾き方講座を見ては毎日練習した。
初心者の壁と言われるFコードが押さえられないなりに、すこしずつ弾けてくるのがうれしく、へたくそなギターを弾きながら自分の部屋で歌うのが日課になった。
コードだけを集めた本がある
その時のバンドは流行りが終わるとすぐに活動しなくなったが、ギターというか弾き語りの趣味は残った。
弾き語りのために歌詞にコードだけ書いた楽譜というのが売っていて、譜面台にミスチルのやバンプのコード集を広げ、高校に入ってからも毎日弾いては歌い続けた。
ギターを弾くことも楽しかったが、ギターの伴奏のおかげで思いっきり歌うことができたのがストレス解消になった。
自分で録音して聞いてはまた録って、すこしずつ歌もうまくなった。
自分でもうるさいと思う
特に毎日歌っていたのが、ピロウズのFunny Bunnyだ。
妹たちはピロウズなんか聞かないが、私の部屋から漏れてくる歌を聞いて、「君の夢が~ってやついつも歌っとるよね笑」「うるさい」と言う。
自分で聞いたことがないので他の部屋や家の外にどれくらい歌が漏れているのか知らないが、いまでも帰省する度に歌うので、近所には盆や正月の風物詩と思われているような気がしている。
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