64. あれから
あの間違いなく人生で一番辛く苦しかった日々から、もう長い月日が経った。
思い出すと辛くなるのであまり考えないようにしてるけど、一生、忘れることはないだろう。この小説を書いてる時は何度もフラッシュバックをして悪夢を見た。
だけど、書いてよかったと思う。これで物語が現在進行形ではなく「終わった物語」になるからだ。
可奈は成長し、「少女」から「お姉さん」にダイナミックに変貌を遂げているところだ。
調停時に渡していた手紙や絵本は、ひとつも本人の元には渡っていなかった。
だけど、ハワイを出る最後の日に買った亀のぬいぐるみは、ちょこんと可奈の机に飾られていた。聞いてみたら、「パパの部屋にあって、可愛いなと思って、『ちょうだい!』ってお願いしたんだ。」と言われ、私は涙ぐんだ。
「再会した時、ママはなぜ泣かなかったの?」
と、突然言われて驚いたこともある。
正直に、「あの時は立ち会う人がいたから、泣いたら『不安定なママ』だと思われるから、泣かないように我慢していたんだよ。」と、答えた。可奈は「ふう~ん。」と前を見ながら言った。
そして、片親疎外だった時のことを、謝ってくるようになった。
「ママ、あの時はあっかんべーしてごめんね。」、と。
これから彼女はさらに成長して、あっという間に遠くへ行ってしまうだろう。だけどこの7年間、文字通り命がけで取り戻した信頼関係は、ちょっとやそっとじゃ揺らがない。
可奈は優しい子だ。
私を、小さな体で一生懸命守ろうとしてくれる。私が悲しまないように、傷つけられないように、気遣ってくれる。まだ幼い彼女にそんな風に気を遣わせてしまう自分にふがいなさを感じつつも、誇りに思う。
私たちはよく、くっついて寝そべる。そして、いろんな話をする。
恋の話、会えなかった時の話。
ある日、私は可奈にこう言った。
「可奈は、前世でママのお母さんだったんじゃないかなあ。なんだかそんな気がするよ。」
「え~!そうかな。・・うん、そうかもしれない。」
「でしょ?可奈の方がしっかりしてるしなあ。(笑)・・・ママはね、生まれ変わっても可奈のお母さんでいたいよ。あ、可奈の娘かも知れないけど。とにかくね、また可奈の家族になりたいよ。」
「んふふ!可奈もだよ~~!ママ大好き!!」
「ママもだよ!愛してるよ~!!」
離れていた時間を埋めるかの様に、私たちは何度も何度も、愛してる、好きだと言い合う。
裕太とは、時に友達のような会話ができるまでに回復した。ぎこちなさはどうしても残るけど、あの、争っていた時には考えられないほどのまでに回復した。
決して諦めないで、相手を認めて寄り添えば、時間が解決してくれるんだなぁ、、と思う。遠回りの様でいて、一番の近道なんだろう。
時間は巡る。 それは円をぐるぐる回るのではなく、螺旋のように浮上していくものだ・・・と、私は信じている。
思えば、私が可奈を育てる!取り返す!!という考えから、
『一人で育てるのではなく、今までみたいに共同養育したい!』と強く思い始めた時から、流れが変わった気がする。
そして、あの時の自分を想い出し、パワーを送る。
苦しくて苦しくて消えてしまいたかったあの時、私は未来の「大丈夫な自分」に話しかけていた。
「今はこんなに辛いけど、未来では可奈と会えているはずだ。だからお願い、私に力を貸して、、。」と。
それは、他人に甘えるのは限界があるけど、未来の自分になら甘えてもいいだろう、と思って作り出した、私なりのセルフヒーリングだった。
今どんなに辛い思いをしていても、明るい間未来は必ず待っているから、決してお子さんを愛することをあきらめないで欲しい。
1日も早く、この制度の不備からくる苦しみを受ける親子がいなくなるように、切に祈ります。
☆
私の物語は以上です。。
長い間お付き合いいただきありがとうございました!
ピノコ拝
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