見出し画像

可奈との再会、いや、「試行面会」は連れ去られてから実に1年3ヶ月後、審判取り下げから3ヶ月も経った、初夏の空気が色濃い日に行われた。
はやる気持ちを抑えられず、早めに家を出た。バス停から病院までは小走りで向かった。

先に可奈と裕太の二人が先生と面談し、準備が出来たら私を呼ぶという手はずだったので、フロントでそわそわしながら裕太からの連絡を待った。
何度も何度もLINEの画面を覗いた。10分ほど経ってから「今から来て」とLINEが入り、私は走って診察室へ向かった。

ドアを開けると、、娘がいない?キョロキョロすると、カーテンの影から可愛らしい笑い声が聞こえてきた。 
可奈が驚かそうと隠れていたのだ。
でも可笑しくって、こらえきれず、笑いながら飛び出してきた。

なんて嬉しいサプライズ!なんて可愛いの!!

裕太が、「ママを驚かそう、って昨日から計画してたんだよ。」なんて言った。可奈は嬉しそうにニコニコしていた。

「可奈、ずっと会いたかったよ。」
ハグをしようと手を回したけど、可奈は恥ずかしそうに、背後に回ってしまった。

私をチラチラ見ながら、診察室の中を走りまわっている。可奈にしたら、ここは慣れた部屋なのだ。

先生は「抱きつかないんですね。」と言いながら、何かカルテに書き込んでいたけど、私は「シャイな子なので」と返した。 

先生と話している間、可奈は紙とペンを与えられ、絵を描き出した。その絵を裕太と先生が写真に撮る。また何か分析しようとしているのか、、嫌な感じだ。

「可奈ちゃん、その絵は何を書いたの?」

先生の質問に可奈が答える。

「おそとにある、どうぶつだよ。」

可奈は絵を描き終えると、椅子に座ってくるくる回ったり、裕太に抱きついたり、私のところに来てちょっかいを出したりと、動き回っていた。はしゃいでいるようで、嬉しそうだ。

髪の毛がほどけていたので、前に座らせ三つ編みを編むと、嬉しそうにじっと座っていた。久しぶりに、母親らしいことが出来たなぁ、と、しみじみ感じた。

診察が終わり、「今度また、経過報告に3人で来てください。」と言われ、病院をあとにした。

「パパー!」

可奈が帰り道、裕太に抱っこをせがんでいる。いいなぁ、うらやましいな。私も抱っこしたいよ。そう思いながら二人を見つめた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?