家賃収入が途絶えた負動産とジャングル負動産

「もしもーし、インターネットが繋がらなくなっちゃったんだよね〜繋がらないと将棋ゲームが出来ないんだよぉ〜なんとかしてくんないかなぁ〜?」

・・・苦怒・・・

どうにもならない負動産を抱えているにも関わらず、あまり積極的に処分に向けて動いてくれない父からの電話。将棋ゲームをやってる場合か?と説教したくなる今日この頃。

祖母から母が継いだ築50年以上の空き家、父所有の旗竿地に建つ再建築不可の築40年以上の空き家…

両親が持っている負動産は、これだけでは無い。

2階建ての木造一軒家。同じく築40年は超えた古家。
こちらは私鉄の最寄り駅からは車で約30分(遠い…)。

父は定年後、家賃収入を得るため退職金をあててこういう古家を購入したそうだ。
人に貸すことで利益を得る。いわゆる「不動産投資」ってやつですかね。
現在、この古家は数万円で人に貸している。

しかし、かつて賃借人がいた頃の旗竿地の一軒家同様、こちらも幾度となく定期的に、「換気扇が壊れた」「木が延びてきた」「キッチンの排水が悪い」etc…不動産屋から父へ修理代という名のお金を請求する連絡がきている。

そんな請求が来ても、遠くて現地に見に行くわけにもいかないから、不動産屋の言うがままに修理代を支払い続ける父(高齢)。

そんなある日、父が頭を抱えていた。
「いやーまいったなー」
「何?どうしたの?」

「(古家の)賃貸管理をしてくれている不動産屋から連絡があったんだけど、今住んでいる人たちが、離婚しちゃったんだって。それで奥さんと子供が出て行っちゃって、旦那さん1人になっちゃったんだけど、その人が家賃を払わなくなっちゃったんだって」

「……何それ?……大丈夫なの?」

「今は家賃保証?とかで、保証会社が家賃を負担してくれているから、当面は家賃分のお金は入ってくるんだけど、その保証がいつまで続くかは分からないなぁ…」
「!!」

古家の現地を見に行くことにした。

建物は築40年以上なので、当然古い。
家の外には、段ボールやキャスターの付いた錆びたラック等、色々ながらくたが放置してある。
草ぼうぼうの荒れた庭で、また草刈り夫の出番が増えそうな予感がする腐動産。

隣地には新築の洋風のオシャレな戸建てが建っている。

その新築オシャレ洋風戸建てと古家との境界には、2階位の高さのある真新しいフェンスがそびえ立っていた。

設置したのは新築オシャレ洋風戸建ての住人のようだ。

このフェンスのおかげで、新築オシャレ洋風戸建てからこの荒れた古家は全く視界に入らないし、荒れた庭からの虫やゴミも侵入してこないのであろう。
「隣地の古家とは一切の関係を断絶させたい」というオシャレ住人の切なる願いが垣間見える。


古家の逆の隣は、荒れた古い2階建てのアパート。
こっちもなかなかの荒れっぷり。

住人はいない?のか、アパート駐車場に人の高さ以上の草がジャングルのように生い茂っており、その草達が古家の庭に侵入してきている。
こっちの古家の庭もぼうぼうだから、もうどっちがどっちの草かなんて分からないくらい融合している…。

さらにもう一方の古家の裏側に面した隣地も空き家で、相当古い一軒家だ。
「売り出し中」の看板が掲げられているが、その看板が錆びていて、斜めになって取れそうで、売り出していることも忘れられそうな感じ。

敷地の外から古家の中をこっそりと覗いてみる。

障子が破れていて、その破れた隙間から見えた部屋の中には、物がたくさんあって一目で荒れているのが分かる。

家賃を払ってくれなくなった賃借人がいずれ出ていくとすると、父所有のこの古家も大規模なリフォームが必要になるだろう。
そのリフォーム代が出せなければ、旗竿空き家同様、これもまた永遠の空き家に!?。

いや、それ以前に、家賃を払ってくれなくなったというこの賃借人がおとなしく退去してくれるだろうか?

そんなことを考えていた数日後、また不動産屋から父宛に古家の修理代の見積書が届く。

今度は屋根直し30万円、アンテナ直し7万円、合計37万円の見積もり書.......

家賃払ってくれてないのに、修理代は出さなきゃいけないの?

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さらに、母が父(私からみて祖父)から継いだ田舎のジャングル負動産もある。

大げさではなく、現地を見に行ったら本当に、中に足を踏み入れることができない高々とした立派な木々が生い茂った森で、荒れたジャングルそのものだった。
途方に暮れた。

もう1か所、更地負動産があり、そこも膝丈ほどの草が生い茂っていた。
母によると、隣の土地の所有者が20年ほど前に、「売って欲しい」と言ってきたそうなのだが、母はそれを断ったそうだ。
その時に売っていてくれれば!と悔やまれる。

20年経った今、その隣の土地も同じくらい草ぼうぼうで荒れていた。
隣地の所有者からはそれ以来、連絡はなく、今はどうしているか分からないという。
おそらく隣地の所有者も母と同じくらい齢をとっていることだろう。

「売れる見込みは全く無いけど、今何も使ってない土地は処分しなよ!」
母に言うも、聞く耳を持たない。
「処分はしないワ。だって固定資産税がかかってないんだもの。持っていたってイイでしょ。持っていたら何かイイことがあるかもしれないし」

固定資産税がかかってない理由はよく分からない。
あまりにも田舎のジャングルはかからないの?

母が言う「何かイイこと」というのは、10年ほど前にあった出来事をさしている。
10年ほど前に、その更地の近くに道路を作る計画が浮上し、いくらか土地を道路のために譲ったことで、自治体から幾ばくかのお金をもらったそうなのだ。

この想い出のせいで、頑なに土地を処分しようとしないのだ。
時間をかけて負動産を持つリスクを語り掛けていくしかない。

この他にも、父が複数の兄弟と共有で持っている山(しかも兄弟の何人かは既に亡くなっている)もあるようだ…。

ところで、船業界では、バブル期に買われたレジャーボートの所有者が高齢化して、維持管理がままならなくなっていることがあるらしい。
知人が、船を持つ高齢者から「中古の船を買ってくれないか」と持ち掛けられていた。

港には所有者のいない空き家ならぬ、耐用年数を超えた空き船が置き去りにされていることもあるとか。
船も家と同じ問題を抱えてきているんですね。


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