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2022阪大(文以外)国語/第二問/解答速報

【2022阪大(文以外)国語/第二問/解答速報】

出典は全卓樹『銀河の片隅で科学夜話』。筆者は物理学者。

問一「技術的に言うと、観測された曲の人気分布のジニ係数は、1回目の実験ではおよそ0.4、2回目の実験では0.5を超えるほどであった。両方の実験とも他人の評価を見ない参照データとなる第一グループでは、ジニ係数は0.25であった。」(傍線部(1))にある三つのジニ係数の値の違いについて、ワッツ博士のグループの実験結果をふまえて、200字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
ワッツ博士らは被験者を9グループに分け、第一グループのみ他の被験者の評価を表示せず、それ以外のグループは他の被験者の評価の集計を見ながら、自分の評価を下すように設定した。後者では、実験を2回に分け、1回目は曲をランダムに並べ、2回目は評価の大きい順に並べた。以上の実験よりジニ係数は、1回目より2回目の方が人気曲の偏りが大きくなり、また第一グループは他のグループに対して偏りが小さくなることを示した。(200)

〈参考 S台解答例〉
全グループ共通の人気曲、不人気曲はあるものの、他の訪問者の評価が表示されないグループの場合、評価の分布はなだらかである。一方、他の訪問者の評価を見て評価するグループの場合は、特定の曲に評価が集中し、その際、曲がランダムに並べられるよりも、評価の高い順に並べられた場合の方が、人気曲とそれ以外の分極は大きい。これは人間がものごとを決めるときに他人の判断に頼り、対象の優劣が社会的に構成されることを示す。(200)

〈参考 K塾解答例〉
曲の評価をめぐり、他人の評価が示される場合、曲をランダムに並べた表に基づく実験と、評価のランク順に並べた表に基づく実験のいずれにおいても、突出した人気曲とそれ以外の曲への分極が顕著に表れ、後者ではそれが極端化している。それに対して、他人の評価を見ずに各人が独立に判断する場合、人気曲と不人気曲との分極はなだらかであった。これらの結果から、人間は物事を決める時に他人の判断に頼る傾向があることが分かる。(200)


問二「内的価値に基づかない人気曲」(傍線部(2))はなぜ生まれるのか。著者が援用する故事の意味をふまえて、110字から130字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
リーダーと思しき羊が海に投げ込まれたのを契機に他の羊も周囲に呼応して海に飛び込んだパニュルジュの羊のように、初期段階で偶然高評価が重なった曲を、人々が自らの感性よりも人気があるという事実性に依拠して評価し、それが新たな評価を呼び込むという付和雷同が起きたから。(130)

〈参考 S台解答例〉
曲自体に内在する魅力とは無関係に、初期段階で偶然高評価が重なった曲に、長い先史時代に人類が獲得した形質であろう、パニュルジュの羊の故事に示唆される他者の判断を参考にしてものを決める付和雷同の心性によって、一層高評価が集まった結果、大人気曲が作り上げられるから。(130)

〈参考 K塾解答例〉
人間には他人の意見に同調しやすい付和雷同の心性が備わっており、音楽の曲の選好においてもそうした心理が働き、人々は自らの好みや楽曲自体の価値に基づくことなく、多数の他者が高く評価する曲を価値あるものとみなし、それになびきがちであるから。(117)


問三「ダークサイド」(傍線部(3))と表現されたのはなぜか、60字から80字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
真理を希求し公共的な利益に寄与するはずの学問が、私企業の営利追求や社会的な不正を手助けするというように、学問の現状がその本筋から著しく外れていると思われたから。(80)

〈参考 S台解答例〉
科学の実験成果が、社会制度の賢い設計ではなく、私企業の営利追求の手助けや世論操作などに応用され、人間の卑しい面に関わるもののように、筆者の家人には思われたから。(80)

〈参考 K塾解答例〉
いかに科学的に実証されたものでも、その成果が、科学者の社会貢献の意図とは別に、私企業の営利追求や世論操作などの道具として容易に悪用されてしまう恐れがあるから。(79)

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