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2021広大国語/第一問/解答速報

【21広大国語/第一問/解答速報】

出典は岡崎乾二郎『近代芸術の解析 抽象の力』

問一(漢字の書き取り)

a.器官 b.洞察 c.購読 d.並列 e.挿入


問二(記号選択)

「感覚与件」→f 「対象の認識」→F 「具体的な対象」→f 「興趣」→F


問三「音楽の二文字がぴかりと眼に映った」(傍線部(2))とある。これを受けて筆者は、「つまり漱石はこの小説が書かれた1906年の時点で、やがて抽象画と呼ばれるものが出現することを、すでにはっきり予告していたともいえる」(傍線部(3))と述べている。なぜ筆者はこのように述べたのか。「音楽」と「抽象画」の類似点をふまえて説明せよ。

〈GV解答例〉
漱石は、具体的な対象のない興趣を音像化する音楽と重ね、それを画像化する手法を画工に語らせる形で抽象画を構想しているから。(60)

〈参考 K塾解答例〉
音楽も抽象画もともに具体的な対象を持たずただ興趣だけが表現されている芸術であり、漱石が自分の小説の中でそうした芸術の可能性を表現していると筆者が考えたから。(78)


問四「逆のアプローチ」(傍線部(4))とある。1️⃣と2️⃣が逆のアプローチであることについて、本文中に用いられている「f」と「F」を使って説明せよ。

〈GV解答例〉
(1️⃣は)fを捨象しながらFを形成するアプローチ。(20)
(2️⃣は)fを集積しながらFを形成するアプローチ。(20)

〈参考 K塾解答例〉
(1️⃣は)「f」の集積によって「F」を形成する。(19)
(2️⃣は)「F」を「f」によって疑い解体する。(18)


問五「(ピカソが《アヴィニョンの娘たち》[図1]を描いたのは、この翌年の1907年のことである)」(傍線部(5))とある。この( )内の叙述を書き加えた筆者の意図について、特に製作年に注目しながら説明せよ。

〈GV解答例〉
『草枕』が《アヴィニョンの娘たち》の前年に書かれたことを示すことで、芸術の世界的動向に対する漱石の先見性を確認する意図。(60)

〈参考 K塾解答例〉
ピカソが《アヴィニョンの娘たち》という抽象画を描く一年前に、そうした絵画技法を『草枕』の中で描いた漱石の先進性を指摘しようとする意図。(67)


問六(空所補充)

〈答〉乱調


問七「『草枕』はそれ自体実験的な小説でもあった」(傍線部(7))とある。『草枕』はどのような点で、「実験的」だったのか。形式面と内容面の二面から説明せよ。

〈GV解答例〉
内容面で前衛的な抽象芸術の生起する様子が描かれる点に加えて、形式面でも異なる言語形式と情報を混在させ読者を錯綜した思考に導くことで、結論に収斂されない固有の小説経験を可能にする点。(90)

〈参考 K塾解答例〉
形式面では、異なる言語形式を混在させたり、規定された結論に読者を導かなかったりしている点で実験的であり、内容面では、抽象的な興趣を画にしようとする画工を登場させたり、女の表情をめぐる画工の錯綜した思考を描いたりしている点で実験的である。(118)


問八「漱石の功績は二〇世紀以降の芸術を支配するモダニズムと呼ばれる一連の問題群をその基礎から構造的に把握し、批評、実作によって実践的に示したことにある」(二重傍線部A)とある。これはどのようなことか。本文全体をふまえ、「批評」「実作」の各々の例を挙げながら、100字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
漱石には、「f+F」図式による『文学論』、抽象芸術の生起と結論に収斂されない形式性を示した『草枕』などを通して、二〇世紀以降に興隆する芸術の世界的潮流を根本から考察し先駆となった功績があるということ。(100)

〈参考 K塾解答例〉
規定の概念像がとりとめもない数限りない感覚印象の集積によって解体されたり再構築されたりすることを『文学論』で示し、結末に収斂されないゆえにどこを読んでも面白い『草枕』という作品を書いた、ということ。(99)

#広島大学 #国語 #解答速報 #岡崎乾二郎 #近代芸術の解析

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