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2021九大国語/第一問/解答速報

【21九大国語/第一問/解答速報】

出典は今福龍太『宮沢賢治 デクノボーの叡智』

問1「「舞踏」を読む」(傍線部A)とあるが、それは具体的にどういうことか、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
自然の中にみなぎる力を文化の側に組み込み活性化させるために、野生動物になりきり所作を模倣することを通して、そこに潜む神的な存在を理解しようとすること。(75)

〈参考 S台解答例〉
文字以前の人間の文化の創造において、原初の人間が野生の自然を自らの身体に写し取って再現する模倣の所作を通じて、自然との精神的な交流を打ち立てようとすること。(78)

〈参考 K塾解答例〉
原初の人間にとって神でもある野生動物としての鹿の身振りなどを模倣しながら、精霊たちの住む領域へと入り込み、神や精霊と交流し、世界を蘇らせる所作のこと。(75)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人間が野生動物に擬態し、その所作を踊りとして模倣するという儀礼や芸能によって、人間が自然の世界に入り込み、自然に内在する力を文化の世界に組み込んでいこうとすること。(82)


問2「人類がみずからの内臓感覚を、生命記憶の源泉として意識すること」(傍線部B)とあるが、それは具体的にどういうことか、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
人類は原始、暗闇に入り内臓感覚を外化し、外化された内蔵を示す壁に動物を模写することで野生へと浸透し、自然の一部としての自己の起源を確認したということ。(75)

〈参考 S台解答例〉
自らの身体感覚を呪術的儀礼や壁画の形で外化することで、野生の世界へと浸透し、自然の一部としての自己を確認して、自らの生命体としての記憶を想起するということ。(78)

〈参考 K塾解答例〉
旧石器時代の人類は、内臓感覚を自らが入り込む洞窟へと外化し、その洞窟の壁面をみずからの生命体としての記憶を刻印していく場として了解したということ。(74)

〈参考 Yゼミ解答例〉
旧石器時代の人類は、洞窟に自分の内臓感覚を外化し、その壁面に野生動物を模写することで、自然の一部としての自己を確認し、自分が生命体であるという記憶を刻印したということ。(84)


問3「星を読む」(傍線部C)とあるが、それは具体的にどういうことか、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
類似性に基づいて天体の原理を自己の身体や世界像へと適用して行動の指針とするために、全身体的な感覚を動員して星の配置や運行から意味を見出そうとすること。(75)

〈参考 S台解答例〉
全身体的な感覚を動員して天体の「星」の配置を読みとり、自らの感覚への投影を通じて、類似の原理に基づき、世界における自らの位置や運命を読み取ろうとすること。(77)

〈参考 K塾解答例〉
海の民が、全身的な感覚を通じて星の配置を読み取り、それを自らの方向感覚に投影したり、占星術師が、天体運動を自らの身体や世界像と結びつけたりすること。(74)

〈参考 Yゼミ解答例〉
海の民が星の配置を読んで船を操縦する自らの方向感覚に投影したり、西欧の人々が天体を読んで自らの身体や世界を類推したりしたように、星の配置や運行を人間の身体に写しとること。(85)


問4「こうした模倣の能力の系統発生的歴史が、人間の個別発生的な道筋において反復されていること」(傍線部D)とあるが、それはどういうことか、説明せよ。(4行)

〈GV解答例〉
人類が自然の模倣を通じ自然を文化へと架橋して文化的創造を生み出してきた歴史的過程は、微視的に見ると、子供が模倣的想像力を発揮し自在に遊ぶことで創造性を育んできた、個々人の成長過程に対応するということ。(100)

〈参考 S台解答例〉
模倣を通じて自然を文化の側へと関連づけることで、野生の土地に定住し、文化的な創造行為を作り出す人間集団的な営みが、模倣的な行動様式によって作られた、幼少時に行われる自在な模擬遊戯から繰り返されているということ。(105)

〈参考 K塾解答例〉
文字以前の人間が身体感覚によって自然界を模倣することで文化を創造してきたことが、人間の幼少時の模倣的想像力を用いた自在な模擬遊戯の中で繰り返されているということ。(81)

〈参考 Yゼミ解答例〉
原初の人類が野生動物の所作を模倣した舞踏を生んだように、模倣は人間文化における創造性の根源だが、これと同じことは人間個体の成長過程にも見られ、子供が人や動物やものを自在に模倣する遊戯が創造行為の準備段階になっているということ。(113)


問5「言語のミメーシス的な根っこ」(傍線部E)とあるが、それは具体的に何か、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
森羅万象の音を感性的・身体的に模倣することをくりかえし蓄積していくうちに抽象化され記号化されたすべての言語の起点にある、自然と即応する肉体性・物質性。(75)

〈参考 S台解答例〉
森羅万象と自己とのあいだに、呪術的・霊的な照応=交感の関係を打ち立て、感性的・身体的な模倣の繰り返しの蓄積によって成立した言語に残る、身体的な肉体性・物質性。(79)

〈参考 K塾解答例〉
擬声語や擬態語の中に色濃く残されている模倣的な肉体性・物質性や、手で書かれた文字の中に潜在する身体的模倣の能力のこと。(59)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人や動物の音声を真似る擬声語、人やものの動きを写す擬態語、あるいは主に手で書かれる文字のなかに残っている、模倣的な肉体性・物質性のこと。(68)


問6「文字を身体的ミメーシスの帰結として捉えるような感性は、いま急速に失われようとしています」(傍線部F)とあるが、それはなぜか、その理由について説明せよ。(4行)

〈GV解答例〉
文字は本来、身体を介して表現される日常の技芸に関わる点で身体的ミメーシスとしての内実を持つが、現代のディジタル化した社会では文字を書く機会が減った上、文字を情報伝達の媒体として捉える傾向が強まるから。(100)

〈参考 S台解答例〉
現代のディジタル化した社会では、模倣の能力を通じて身体感覚、自然、それらとの交感の関係を読む経験と、日常生活で文字を手書きする経験が少なくなり、文字が情報伝達のための記号的符牒にすぎなくなったから。(99)

〈参考 K塾解答例〉
現代社会がディジタル化し、人類が自己の身体や天体の星や自然を模倣することで文化を創造してきた身体的な模倣の感覚が失われ、文字が情報伝達のための記号的符牒にすぎなくなっているから。(89)

〈参考 Yゼミ解答例〉
内臓や星や舞踏を読むことにはじまり、感性的・身体的な模倣を繰り返すことで創造されてきた人間文化の帰結の一つが文字だが、現代のディジタル化した社会では、文字を手で書くという模倣的な肉体性・物質性や感覚的悦びが失われつつあるから。(118)

#九州大学 #国語 #解答速報 #今福龍太 #宮沢賢治

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