おにいちゃん
私は三人兄弟の末っ子だ。
1番上が姉、次に兄、そして私。
姉は小さい頃からまるで母親のように私の面倒をみてくれていた。
と言うよりも、小さい頃はほぼ母親代わりのようなものだった。
母子家庭だったことも理由のひとつだ。
大人になってからもなかよしで、同性同士の良き相談相手でもある。
姉には常に感謝している。
だが兄とはほとんど会うことも連絡を取ることもない。
嫌いとか遺産相続でもめたとか、そんな事も一切ない。
理由を言えば、兄に会う用事がないということになる。
たぶんこれからもよほどのことがないと会う機会もないだろう。
子供の頃の兄の話をすると大概の人が
「お兄さん、今はまともな大人になってるの?」
と心配したりする。
まぁ、普通に会社員として働き、お嫁さんも子供もいてまともそうな人生は送っているらしい。
私は彼のLINEすら知らないので確かめたければ姉に連絡を取るしかないのだが、その予定もない。
たまには会ってもいいのだけれど、会わなくてもいい。
そんな感じの存在だ。
兄との幼い頃の思い出話をしたい。
兄はいつも私を好奇心を満たす実験台にしていた。
プロレス技は日常。
奴が(奴、と言いたくなってしまった)私にやってきた残虐行為は数知れず。
その中のほんのいくつか暴露することにしよう。
その1
冬の寒い日、外で遊ぶ私のところに、
ビニールを持って兄がやってきた。
「さゆり〜、バスクリンのお湯だよ!(懐かしい)暖かいから手を入れてごらん」
「お兄ちゃんありがとう〜ポチャ」
「なーんてね!それ俺のション◯ベンだからー!ギャハハハ!バーカ!」
鬼畜です。
その2
「お兄ちゃん、遊んで〜」
「いいぞ、じゃあオヤツ買ってくるから、待ってろ。
頭に枕を乗せたままな!
俺が戻るまでずっと乗せてろ!」←意味不明で理不尽な要求。
「うん、わかった」←バカ
そのまま兄は遊びに出かけ、私は夕方までずっと枕を頭に乗せていた。
その3
「ハクション大魔王か…ニヤリ。
おーいさゆり!」
「なぁに?お兄ちゃ…」ドバッ!!←振り向きざまにコショウを顔にかけられた。
「うぎゃあああー!目が!目があああ!」
「あれ?クシャミしねえなぁ…」
ムスカ大佐を見るたびにこれを思い出す。
その4
「オレ特製の弓矢ができた。割り箸とゴムと赤い羽根におもりと太い針をつけた」
(赤い羽根、とはその昔小学校で一定期間に配られる募金の目印の羽だ)
「お兄ちゃんすごーい!」
「お前の足元スレスレに当ててやる!」
「え。」
「動くな」
「やめ」
ビュッ!!
ザクッ!!
見事に足の甲に刺さった弓矢が、
ビヨヨヨ〜ン!!
と揺れていた。
鬼畜。
鬼畜すぎる。
そんなある日の学校の帰り。
兄貴は巨大ミミズを木の枝にぶっ刺して、嫌がる女の子達を追いかけ回していた。
道脇の小川の橋を渡って、女の子は逃げていき、それを追いかけていた兄は橋から足を滑らせ落下した。
頭から血を流し、結果額に5針ほど縫うまあまあな怪我をした。
それから兄貴は多少改心したらしく、鬼畜行為は少なくなっていった。
長い時を経て、それぞれ子供を持ち、正月に集まった時に私はこれらの話をした。
あの時の鬼畜行為を、子を持つようになって君はどう思うのかと。
兄は当時を思い出して、大爆笑していた。
兄貴の奥さんと娘にもこれらの行為をどう思うか聞いたら、
「パパ信じられない!最低!」と罵られていたが、変わらず大爆笑していた。
なんたるサイコパス野郎。
まぁ、私も何度もネタにしてるんですけどね。
おーい兄貴、
元気にしてるかい?
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