犬王感想〜作品世界に強制的にブチ込まれる熱狂的狂騒〜
犬王。
シンウルトラマンのヒットの中大きな話題にならなくともその目を引く宣伝に興味を持った人間は少なくないだろう。
能の祖、猿楽をテーマにした日本古来の文化の継承と普及を目的とした高尚な作品…
という第一印象を盲目の琵琶法師の掻き鳴らすロックと(明らかにギターだ)明らかに人間の姿形をしていない奇形、異形の舞手(明らかに現在存在する人類の中で最も美しい身体と声を持つアヴちゃんだ)がボッコボコに打ち砕く。粉砕する。
PVを見ればわかるように、完全なるロックフェスである。和ロックとかじゃない。
完全新規の京を舞台にした熱狂的狂騒。
(ちなみに私は作中の楽曲の中でもこの『腕塚』が一番好きだ。この作品の凄惨さやアヴちゃんの力強く美しい歌声、まるで滑る様な舞の動きなどあらゆる点において突出していると思う。
劇場で観てる間鳥肌が立ちっぱなしだった。)
きっとこの文章を読んでいる人間達は様々な映画をアレは映画館で見た方が良い!!と人から勧められて来ただろうがこの人生において犬王ほど映画館で『見なければならない』と思った作品はない。
賛否であるとかそういった評価はあの心臓を早鐘のように打ち鳴らす興奮の前には大して意味を持たない。
完全に自分達の存在する世界と犬王の世界が癒合する。
明らかに自分が映画館の座席に座る観客ではなくなる。
気づけば600年前の京の河原で犬王と友有の狂騒に共に狂うズタを纏った町民になっている。
コレは誇張ではない。マジだ。
以下ネタバレ含む
楽曲に対する考察、時代考証等においてはきっと有識者による緻密で整然とした感想がどこかで書かれているだろうしあくまで自分個人としての、人間として感じたものをつらつらと書いていきたいと思う。
やっぱ人との出会いって偉大だなあ!!!!
コレに尽きる。
舞の才能がありながらも異形故に日の目を見ない犬王、その舞のためにそしてその舞と共に掻き鳴らす自らの音色のために自分の人生をブン投げて捧げる友有。
友有が無ければ犬王も人々の魂に深く刻まれるような感動を与える事が出来なかっただろうしベストマッチな出会いが大きな渦を生み出し世界中を巻き込んでいくこの姿!!!
完全に王道少年漫画!!!!!!!
すげえハードな世界観なのに少年ジャンプ的アツさが混在しているからこその『あ、コレ自分もめっちゃ魂アツくしていいやつだ!!!!!』という安堵感!!!!
ボヘミアンラプソディなどろろではあるが根底に友情と夢に向かって走っていく高揚感があるからこそ気持ちよく作品を楽しむ事ができる。
やっぱり人間、友情、努力、勝利に弱いらしい。
京の河原から成り上がっていく2人を見るのは非常に清々しい。
なんていったって先程述べた様に自分もまるで河原にいる様な臨場感である。
こちとら2人のデビューから全ライブ見守ってきたオタクなのだ。
最後の舞など当然涙無しには見られない。
◆総合芸術として
この作品を一言で表すのならば陳腐な言い方になってしまうが総合芸術だ。
ありとあらゆる才能の塊と言える。
作中では犬王と友有の才能がぶつかり合って生まれた狂騒が京の町を熱狂させるがこの作品自体、湯浅監督の映像的センス、津田健次郎等による臨場感と狂気に満ちたキャラクター、極めに音楽、女王蜂アヴちゃんの低音から高音まで網羅した圧倒的歌唱力、まるで平家の命運の如く諸行無常、栄枯盛衰を盛り込んだシナリオ、全てが畝り重なり合い調和した劇物と言える。
ただただ数多の才能に圧倒されるしかない。
なんなんだアレは。
言語化できない。
イマイチ評判が伸びないのもそもそもあの作品を上手く言語化できないのが最たる理由ではないかと今自分の感情を文字にしていて思う。
凄まじいまでの傑作だ。
賛否は自分で見て決めればいい。
しかしながらその評価に関係無く劇場で体感するあの狂騒は一生魂に残るものになるだろう。
要するに今すぐ京の河原、否、数少ない上映中の映画館に走っていくべきなのだ。
急げ!!!!!!
私は遊園地にあるパンダの乗り物と同じなので、お金を入れると動きます。さ、お金を入れてぴんくチャンを動かしてみよう!今度はどんなえげつない動きをするかな??