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京都VSゆるふわぴんくチャンー自転車撤去編ー


かの獣は既に発狂していたのだ。
その双眸に既に正気の灯火は消えうせ
ただただ虚無を湛えたまっくらやみが揺蕩うのみである。

伊塚 邦夫  『奈落の野辺にて』

京都 2日目

『チャリねえじゃん』

京都 百万遍 
最高学府と名高い京都大学の鎮座する十字路に素っ頓狂な声を上げる無職がいた。

というか私である。

正気を失った私は何を思ったか生まれて育った東京を後にして京都へと居を移したのであった。

東京にいたままでは美しい思い出達に殺されるのも時間の問題だったからだ。

もっとも、居を移すも何も変わる代わるいろんな人間の住居を転々と居候してきたホームレスである私に居を移すもクソもないのだが。病気を移されなかっただけ幸いだ。

とにかく、私は京都へと流れ着いてきた。
そして先程30分前だろうか?
見も知らぬ土地で生き抜くための相棒として自転車を購入したわけである。

それが、今、無い。

絶叫。

食費半月分である。
198円のバナナ1房を主食とする大型類人猿である私にとって余りにも大きな痛手であり、既に右手はコンクリを引き剥がし鈍器と成し盗人の頭をカチ割らんと明らかに正気を失った炯眼をギョロつかせていた。

『チョト、アナタの自転車、京都が持ってッタヨ!!!!!』
と、怒気と絶叫を上げる私にネパール国籍らしき女性が話しかけてきた。

その手には市の撤去ステッカー。



理解した。

私の愛車、今名付けよう。

【撤去トルネイダー】 は

邪智暴虐なる市政の策略により『撤去』されたのだ。

此れは戦争だ。

私と京都との長い戦いが始まった瞬間であった。

【略】

撤去トルネイダーは3500円の罰金を代償に帰ってきた。
いやまったくつまらない金の使い方である。
本当に罰金と薬代ほどつまらない金の使い道はない。

買ったチャリを30分で失った私はヤケクソを起こし普段5000円で受けている簡素なデザインを3800円で請け負いその損失を埋めんと躍起になったわけだがそれが後の『私紋』でありその私紋が京都での私の暮らしを大きく変えることとなった。




まったく人の縁、運命とはおもしろいものである。

続きはまた気が向いたら鴨川で寝そべりながら描こうと思う。

私は遊園地にあるパンダの乗り物と同じなので、お金を入れると動きます。さ、お金を入れてぴんくチャンを動かしてみよう!今度はどんなえげつない動きをするかな??