激越にして激憤のフィナーレ!アグレッシブ烈子シーズン5感想!!
アグレッシブ烈子。
サンリオキャラクターの異端児でありごく平凡なOLにして幾度シーズンを重ねてもマンネリ知らずの毎回高打点で面白いわけわかんないスペックを誇る神アニメである。
社会人特有の仕事、恋愛、キャリアその他様々な『会社』『人生』に付き纏う悩みを可愛らしい動物のキャラクターでマイルドに誤魔化しつつ極めて鋭敏に切り抜いた本作品もシーズン5で終わりを迎えた。
今回はその憤怒と慟哭に彩られた物語の終わりに際し自らが感じたことをつらつらと書いていきたいと思う。
◆ハイ田25歳無職
キツい。全然キツい。
無職はキツいのである。
数々のライバルや苦難を退け順調に烈子の本命へと昇華したみんな大好きハイ田だが前シーズンでバキバキの無職になってしまった。
ゲームに課金し家を失いインターネットカフェへと堕ちていく姿は中々に滑稽だが笑ってもいられまい。
そう。アグレッシブ烈子。
それは25歳周りの決断と困難に見舞われがちな時期を緻密に描いた傑作である。
シーズン3で烈子も課金していたが、いや、我々もぶら下げられた欲望に手を出し破滅するなど何も珍しいことではないのだ。
そして無職になり得る可能性などザラにある。
当の私自身、アグレッシブ烈子に出会った時は会社員で烈子の苦難に全力で頷いていたが現在会社を辞めイラストレーターという名のよくわからんプーになっているこの身にはハイ田の無職ライフがあまりにも身に染みた。
勘弁して欲しい。
自由という名の牢獄。わかる。
出口がない。会社員に戻りたくない戻りたい。
会社員じゃなくても無職にもアグレッシブ烈子は毒針をチクチクブン投げてくる隙の無さを手に入れたのだった。
◆ダウナー女子 シカバネ
みんな大好きに決まってんだろ。
21歳、気怠げな態度、憂いと諦めに満ちた瞳、やたら近い距離感、ヘッドフォン。
エモいという言葉は彼女のためにある。
大好きだろこんなん。みんな好きである。
今シーズンにブチ込まれた劇薬こそが彼女である。
今までは烈子を中心とする25歳をメインにトン部長などの中年世代の憂いも書き上げてきた。ここに来て烈子達よりも下の世代、更に言えば会社員ではない。
非正規雇用者
彼女の存在がシーズン5をより社会に踏み込んだものにしている。
彼女こそが今の時代の若者達の代表者。
怒る力すら奪われて無気力に金のかからない娯楽を貪る様に飼い慣らされた、文句を言わないんじゃなくて文句も言えないようになった若者である。
インターネットカフェで暮らしネトゲに入り浸る日々を幸福と信じ、或いは諦めた。
人並みの幸福を得られない自分と向き合うことを諦めた。
ハイ田曰く『全部諦めてることで逆に満たされてる』人間である。
この手に入らない不幸を諦めで幸福であると信じようとする姿に自らを重ねる人間は多いのではないだろうか?
◆第一印象最悪!ハイ田家!!
最悪である。
まさかハイ田の出身が政治家家系とは…
母はともかく弟のジロウは兄のハイ田を見下しバカにし軽蔑し父は恵まれた環境にあった自らを棚に上げてシカバネ達を含む非正規雇用者を己の研鑽を怠った結果であると嘲笑う。こんな議員がおるから日本は…!!
親ガチャという言葉が流行り、というかもう自らの人生に『丁度良い諦め』を用意する手段として、そして凄惨な事実として定着したが、良いサイドに生まれた者はその自覚がない。
恵まれたものに気付かず自らの人生で得たものを自身の努力で勝ち取ったものであると信じて疑わない。
その分かりやすい例がハイ田の父だろう。
自身も恵まれた立場で生まれながら弱者や敗者に寄り添える人間性を持ったハイ田は本当に立派である。
お前が政治家になりゃ良かったのに。
◆烈子、出馬
わけがわからなかった。
いきなりシーズン6に飛んだかと思った。
ハイ田無職編と烈子政治家編がダブルで来るなんて思わなかった。
イヤシリーズが続けばいつか政治家編は来るとは思っていたが…
こんな突拍子もないように見える急展開だが流石は磐石のアグレッシブ烈子。
無気力な若者シカバネもすげえイヤな感じのハイ田弟もシーズン1から綿々と累々と滾って来たアグレッシブ烈子の怒りがついに世界に解き放たれ諦めに満ちた世界を変えるための布石だったのである…!!!
元はといえばアグレッシブ烈子は1人のOLが世の中の理不尽さに怒りを滾らす、そういった物語だった。
その烈子個人の怒りが今や無気力にうなだれる人々の心を再び滾らす着火剤となったのだ。
自分1人のためだった怒りが人々の鬱屈した魂に火を付け怒りという情動的なエネルギーに変わるシーンは作中だけではなくあの物語を見ている外部の我々でさえ勇気とエネルギーをもらえたのではないだろうか?
最早アグレッシブ烈子はファイナルシーズンにして怒りの伝道者となったわけである。
シカバネに対するメッセージはそのまま無気力な人々へと伝播し再び立ち上がる意思をくれたはずだ。
そういった意味においてアグレッシブ烈子は『怒り』を題材した作品としてこの上ない、完成されたフィナーレを迎えたのである。
…と綺麗な感じでまとめたが全然納得していない。
ハイ田プロポーズ編は!!???
烈子子育て編は!!!??
子育ての怒りをブチ撒けて主婦層の共感を得るんだろう!!??オイ!!!!
それはアグレッシブ烈子を見てた層が子持ちになるあと3年後くらいか!!??
なあ!!???
個人的にはフェネ子が大好きなんでフェネ子のスピンオフを8話くらい作って欲しい。
あとシカバネだ。シカバネのスピンオフもだ。トン部長の若かりし頃を描いた『トンのバブリー奮闘記』は?
まあとにかく終わったことを全く受け入れていない。
全然受け入れていないからな…
私は遊園地にあるパンダの乗り物と同じなので、お金を入れると動きます。さ、お金を入れてぴんくチャンを動かしてみよう!今度はどんなえげつない動きをするかな??