見出し画像

『自称霊能力者、本物になる?! 地下壕の奇妙な冒険』


第1章:下北沢発、珍道中

集合、そして出発

「よっしゃー!幽霊トンネル調査、いっくぞー!」

山田太郎の声が、下北沢駅前の静かな朝もやを切り裂いた。

「おい、太郎。朝っぱらから騒ぐな。ご近所迷惑だぞ」

親友の佐藤二郎が、あくびを噛み殺しながら太郎の肩を叩く。

「あ、ごめん。つい興奮しちゃって」

太郎は照れ笑いを浮かべながら、声のボリュームを下げた。

霊笑い通信部のメンバーが、次々と集合してくる。全身黒ずくめの鈴木三郎、タロットカードを片手に占いに夢中の田中花子、そして...。

「おーい、みんな待たせたな!」

最後に現れたのは、ゾンビメイクを施した高橋五郎だった。

「うわっ!朝からゾンビかよ!」

太郎が思わず叫ぶと、周囲の通行人が恐れおののいて逃げ出した。

「おいおい、まだ電車に乗ってないのに、もう霊を呼び寄せちゃってんじゃねーの?」

二郎のツッコミに、一同が笑い転げる。

電車の中で

「で、どこの幽霊トンネルに行くんだっけ?」

花子が、タロットカードを広げながら尋ねた。

「都内某所にある、旧陸軍の地下壕跡らしいぜ」

三郎が、首からぶら下がった怪しげなペンダントをいじりながら答える。

「へー、軍隊か。ゾンビ軍団とか出てきたりして」

五郎が、ニヤリと笑う。その表情が、ゾンビメイクと相まって異様な雰囲気を醸し出す。

「おい、やめろって。電車の中で変な顔すんな」

太郎が慌てて制するが、すでに周囲の乗客は恐れおののいていた。

第2章:幽霊トンネルへ、いざ突入

入口にて

「おー、これが噂の幽霊トンネルか」

太郎が、薄暗い入り口を見上げながら呟く。

「なんか、入りたくなくなってきたな...」

二郎が、おそるおそる中を覗き込む。

「おいおい、ビビってんじゃねーぞ。霊能力者様のお供なんだから」

太郎が、威勢よく胸を張る。しかし、その手は微かに震えていた。

「よーし、みんな準備はいいか?」

三郎が、懐中電灯を取り出しながら尋ねる。

「はーい!」

全員で声を合わせると、ゾッとするような冷気が背筋を走った。

トンネルの中

「うわっ、なんか冷えるなー」

太郎が、身を縮こまらせながら歩を進める。

「当たり前だろ。地下だし」

二郎が、冷静にツッコミを入れる。

「あ、待って!」

突如、花子が立ち止まった。

「どうした?」

全員が、花子の方を振り向く。

「タロットカードが...『死神』の札を引いちゃった...」

花子の手が震える。

「おいおい、マジかよ...」

太郎の顔が青ざめる。

その時、トンネルの奥から、かすかな足音が聞こえてきた。

「え?誰かいるの?」

全員が固まる中、五郎だけが前に出る。

「よーし、ゾンビの出番だな!」

五郎が、ゾンビの真似をしながら歩き出す。

「おい、やめろって!本物の幽霊に会ったらどうすんだよ!」

太郎が慌てて止めようとするが、時すでに遅し。

足音の主が姿を現した瞬間、全員が息を呑んだ。

第3章:予想外の展開

意外な遭遇

「や、やあ。こんにちは」

現れたのは、なんと元院長先生だった。

「え?院長先生?なんでここに?」

太郎が驚きの声を上げる。

「ふぉっふぉっふぉ。君たちを待っていたのさ」

院長先生が、不気味な笑みを浮かべる。

「待っていた?どういうことですか?」

三郎が、首からぶら下げたペンダントを握りしめながら尋ねる。

「実はな、このトンネル。私が若い頃に作った秘密の研究所なのさ」

院長先生の言葉に、全員が驚きの声を上げた。

衝撃の真実

「研究所?何の研究を?」

花子が、恐る恐る尋ねる。

「霊能力の研究さ。そして君たち霊笑い通信部を、最終被験者として選んだのさ」

院長先生の言葉に、一同が凍りつく。

「ちょ、ちょっと待ってください。僕たちは霊能力者じゃありません。ただのお笑い集団です」

太郎が必死に弁解する。

「ふぉっふぉっふぉ。そう思っているのは君たちだけさ。実は君たち全員、生まれながらの霊能力者なのさ」

院長先生の言葉に、全員が唖然とする。

「えー!?」

五人の声が、トンネル内に響き渡った。

第4章:混乱と疑惑

パニックに陥る一同

「ちょ、冗談きついっすよ...」

二郎が、頭を抱えながら呟く。

「私がゾンビメイクしなくても、本物のゾンビが見えるってこと?」

五郎が、自分の顔を触りながら尋ねる。

「まさか...私のタロット占い、本当に当たってたの?」

花子が、手に持ったカードを見つめる。

「おいおい、マジかよ...じゃあ俺の霊能力者キャラ、本物だったってこと?」

太郎が、頭を抱えて座り込む。

「落ち着け、みんな。これは何かの間違いだ」

三郎が、冷静を装いながら言う。しかし、その声は微かに震えていた。

疑惑の目

「待てよ...」

突如、二郎が立ち上がる。

「もしかして、これって霊笑い通信部の新ネタ?」

その言葉に、全員の視線が太郎に集中する。

「え?いや、違うよ!俺だって何も知らないんだって!」

太郎が必死に弁解するが、みんなの目は疑いに満ちていた。

「本当に知らないの?太郎くん」

花子が、じっと太郎を見つめる。

「マジだって!俺だってビックリしてんだよ!」

太郎の声が、トンネル内に響き渡る。

第5章:予想外の展開

思わぬ能力覚醒

その時、突如として奇妙な現象が起こり始めた。

「うわっ!」

二郎の体が、突然宙に浮き始めた。

「な、何これ!?」

パニックに陥る二郎。

「おい、二郎!浮いてるぞ!」

太郎が驚きの声を上げる。

「わ、分かってるよ!でも、どうすりゃいいんだよ!」

宙に浮いたまま、二郎が叫ぶ。

その瞬間、花子の手元のタロットカードが、突如として光り始めた。

「きゃっ!」

驚いて手放したカードが、まるで生き物のように宙を舞い始める。

「な、何だこれ...」

三郎が呟いた瞬間、首からぶら下げていたペンダントが激しく振動し始めた。

「うわっ!」

ペンダントが発する光が、トンネル内を照らし出す。

そして...。

「うおおおお!」

五郎の叫び声が響き渡る。

「五郎!どうした!?」

太郎が振り向くと、そこには...。

本物のゾンビと化した五郎の姿があった。

パニックの頂点

「うわああああ!」

全員が悲鳴を上げる中、太郎だけが立ち尽くしていた。

「お、おい...みんな...」

太郎の声が震える。

「俺に...見える...」

「何が見えるんだよ!」

宙に浮いたまま、二郎が叫ぶ。

「幽霊だ...トンネルに住み着いてる幽霊が...みんなの能力を活性化させてる...」

太郎の言葉に、全員が息を呑む。

第6章:真実の行方

院長先生の真意

「ふぉっふぉっふぉ。よくぞ気付いたね、太郎くん」

院長先生が、にやりと笑う。

「これが私の研究の集大成さ。眠っていた霊能力を、一気に覚醒させる装置をね」

「装置?」

三郎が首をかしげる。

「そう。このトンネル全体が、霊能力覚醒装置なのさ」

院長先生の言葉に、全員が驚愕する。

選択の時

「さあ、君たちはどうする?このまま霊能力者として生きるか、それとも...」

院長先生の言葉が、トンネル内に響く。

「それとも?」

太郎が、恐る恐る尋ねる。

「元の霊感ゼロに戻るかだ」

院長先生の言葉に、全員が考え込む。

「どうする?みんな」

太郎が、仲間たちの顔を見る。

「俺は...」

二郎が、ゆっくりと地面に降り立つ。

「このままでもいいかな。浮遊能力、けっこう楽しいぞ」

「私も!」

花子が、宙を舞うカードを見つめながら言う。

「タロットの精霊と話せるの、すごく面白いわ」

「俺もだ」

三郎が、ペンダントを握りしめる。

「この力で、もっと面白いネタができそうだ」

「私は...」

ゾンビ化した五郎が、ゆっくりと人間の姿に戻る。

「ゾンビメイク、もう必要ないかもね」

そして、最後に残った太郎。

「俺は...」

全員の視線が、太郎に集中する。

「やっぱり、霊能力者やめられねーな!」

太郎の言葉に、全員が笑顔になる。

新たな船出

「よーし!じゃあ霊笑い通信部、パワーアップだ!」

太郎の声が、トンネル内に響き渡る。

「霊能力者のお笑い集団か。面白そうじゃないか」

院長先生が、満足げに頷く。

「ふぉっふぉっふぉ。楽しみだよ、君たちの活躍が」

そう言うと、院長先生の姿が、霧のように消えていった。

「さあ、帰ろうぜ。新しいネタ、考えなきゃな」

太郎の言葉に、全員が頷く。

トンネルを出る彼らの後ろ姿に、幽霊たちが手を振っていた。

もちろん、それが見えたのは太郎だけだったが...。

こうして、霊笑い通信部の新たな冒険が始まったのだった。

(おわり)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?