見出し画像

カミソリのサブスク

マーケターとしてまだ駆け出しだった頃に
入社し、仕事を通じて大きく成長をさせて
もらった、シックという会社がある。

「キレてなーい!」
というキャッチコピーを覚えている人も
多いのではないだろうか?
そう、カミソリの会社である。

大抵の男子は、朝または夜に、儀式のように
男子はみな、朝ないし夜に儀式のように
ヒゲを剃らねばならない。
概ね、半分はウェットシェーブと言われる
T字型のカミソリを使い、もう半分は電気
カミソリを使っている。

シックは、ウェットシェービングの
リーディングカンパニーだ。
世界的には、P&Gが持っているジレットが
圧倒的なシェアを誇り、シックは万年2位。
だが、日本においては、色々な経緯があって
シックが今も1位の座を保っている。

この業界構造に、今グローバルで激震が
起きている、というのは噂で聞いていた。
昨晩、今もシックに勤める元同僚と旧交を
温めた際に、その噂を確かめてきたのだが、
天下のP&Gも大層苦戦をしているという
ことらしい。

原因は、サブスクリプション・モデルだ。
ユニリーバに2016年に買収された
「ダラーシェーブクラブ」
が、快進撃を続けているのである。

カミソリのビジネスモデルは、
よくプリンタとインクの関係になぞらえ
られることが多い。
一旦プリンタを買うと、専用のインクを
買い続けなければならず、そのインクが
高価格となっており、企業にとっては
利益の源泉となる。
これを、スライウォツキーは著書の中で
「インストール型ビジネスモデル」
と呼んだ。


T字カミソリの本体(ホルダー)を一度
買う=消費者にインストールされると、
数回は替刃を購入してくれる。
だから、ホルダーが多少安くても、
それこそタダであげてしまっても、
トータルで安定した利益を出せるのが
このモデルの優れたところ。

それに胡坐をかいていたとは言わないが、
替刃の価格が高すぎる!という消費者
からの不満が高まっていた。
替刃が1個当たり3、4ドルは当たり前に
していたのに対し、2011年に
「1か月ごとに新しい替刃を
 わずか1ドル/個で送ります!」
というサブスクリプションモデルを
売りにしたサービスが業界を席巻し
始めたのだった。

名前も分かりやすい。
「ダラーシェイブクラブ」
と聞いたら、1ドルでシェービングする
会員制のサービス、とピンとくるだろう。

とてもうまく行っていたこのサービスを、
P&Gのライバル・ユニリーバが見事に
買収し、北米でP&Gの牙城をメタメタに
切り崩しているというのである。

P&Gも自前でサブスクリプションの
モデルを導入しているようだが、
先行するライバルに追いつけない様子。
既存のビジネスに対する悪影響を極力
避けようとするあまり、サービス内容
が中途半端になっているのだろう。

他方、シックは、自前でサブスクを
導入せずに、別のサブスクプレイヤーを
買収する道を選んだという。
「Harry's」
という会社がそれだ。

ダラーシェイブにしても、Harry'sにしても、
カミソリだけでなく、メンズグルーミング
全般、更にはスキンケアのカテゴリーに
までサービス範囲を広げている様子が
サイトからうかがい知れる。

サブスクを成功させるポイントは、いかに
お客様にワンストップソリューションを
提供して、ストレスフリーな環境を作り、
長く使い続けてもらえるかどうかだ。
長い間とどまってもらうことで、初期の
投資を回収するのがサブスクの基本的な
スタンス。
スキンケアまで広げることで、回収を
しやすくしているのだろう。

これら、カミソリのサブスクが日本に
入ってくると言われて久しいが、
なかなか入ってこない。
各社、一体何を考えて日本市場に
踏み込んで来ないのか、正直なところ
よく分からない。
(さすがに友人にも聞けないし、
聞いたとしてもそれは書けない・・・)

日本の市場においても
「替刃が高い!」
という声が恒常的にあるのは間違い
ない中、誰が激しい戦いの火蓋を
切るのかに注目している。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。