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真実の瞬間

スカンジナビア航空のサービス戦略が
絶賛され、その秘密を解き明かした本
ということで、『真実の瞬間』という
タイトルの本が随分前にベストセラー
となった。

今見てみたら、1990年の本なのでもう
30年(!)も前だ。
確か、新卒で入った会社で、社員に
配られたか、あるいは推奨されたか、
いずれにしても社会人になりたての頃、
20年以上前に読んだ本である。

タイトルにある「真実の瞬間」という
のが何を指すかと言えば、お客様に
対して一番最初にサービスを提供する
わずか15秒にも満たない時間のこと。
そのわずかな時間で、いかにお客様の
心をつかむような、真心のこもった
サービスが提供できるか、そこにこそ
お客様がサービスに対する満足度を
決定する要因が全て詰まっていると
いう話だ。
お客様満足度を重視する「CS経営」が
流行った元にもなったと言われる。

お客様というのは、モノを買うとき、
サービスを受けるとき、何らかの期待
を持っている。
対価を払うのだから当然と言えば当然
だが、その対価に見合う価値を得る
ことを期待しているわけだ。

そこで得られる価値が、自分が期待
していたよりも上を行けば、そのモノ
やサービスに対する愛着が湧き、逆に
下回れば、別のモノやサービスに浮気
することとなる。

1ヶ月ほど前、充電池がいかれてきて
いた iPhone を、新しくアップグレード
した。
旧SEをやめて、新しいSEを買い求めた
のだが、そのパッケージを開けた時に
「真実の瞬間」は訪れた。

Apple Storeから配送されてきた iPhone
が入っていた段ボールを開け、小さな
白い箱を取り出す。
そこにはフィルムがかかっていて、
中身を取り出すためにそのフィルムの
上部にあった開け口らしき先端を指で
開いたその瞬間。
「ハラリ」というか、
「するり」というか、
とにかく、絹でできた風呂敷がハラリ
とほどけたかのような感触でフィルム
が開いたのだ。
思わず、「おぉー」と嘆息を漏らした。

所詮はパッケージ、邪魔なだけで、
開けたらすぐに捨てるのだから、
金も手間もかける必要などない。
そんな判断をしても全くおかしくない
ところで、しっかりと「驚き」を演出
して情緒的な価値を見事に埋め込んで
いる。
さすがApple、そう思わざるを得ない
ような商品体験。

「真実の瞬間」というのは、何も
第一印象さえよくしておけばOK、
というような軽い話ではない。
モノにせよサービスにせよ、ピカピカ
にクオリティを磨き上げておき、それ
が最初にお客様と接するタイミングで
ベストな形で供されるよう、お客様の
「体験」を設計するべし!
そんな話だと理解している。

メッキを貼ったところで、中身が
ホンモノでなければ、いつかメッキが
はがれて本性が露呈するのがオチ。
中身をしっかりと磨いた上で、最初の
接点においてお客様のハートを射抜く
ような体験を演出することが大切。
そんなことを、またしてもAppleに
教えてもらった。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。