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社員の幸せを創る経営

昨日に引き続き、長府工産の社長である
伊奈紀道氏の「奇跡のストーリー」を
追ったノンフィクションを紹介する。

ポイントが二つあると感じており、
一つ目として昨日挙げたのが、
長府工産を従前の「営業」体質から
「マーケティング」体質へと見事に
転換
された点であった。

今日は二つ目のポイント。
これは正に、本書のタイトルにある
「社員の幸せを創る」という意識の
置きどころ
にある。
「社員ファースト」と言い換えても
良いだろう。

本書には、この「社員ファースト」
体現しているエピソードが数多出てくる。
給与や手当てのこと、
休暇のこと、
男女差撤廃のこと、
環境問題への取り組み、
健康への配慮、
自社株の無償支給制度、
それこそ枚挙にいとまがない。
詳細は割愛するが、どの事例を見ても、
本気で社員のことを信用し、社員の
ためになる選択を積み重ねている

いうことが分かる。

中でも、とりわけ心動かされたのは、
社長から全社員一人ひとりに
個別のメッセージが添えられた
バースデーカードが渡される
という
エピソードだ。
単に「おめでとう!」というレベル
ではなく、社員個人個人の人となり、
どんな仕事をしているかなどを
把握していないと絶対書けないような
親密さ、配慮の行き渡ったメッセージ
をカードにしたためているのである。

200人を超える社員一人ひとりに、
3,000円のデパート商品券を副えて、
毎年必ず異なる内容で、粛々と
メッセージを届ける。
社員を心の底から「宝物」と思い、
「社員ファースト」を言葉だけで
終わらせずに「有言実行」している

表れといっても良いのではないか。

「社員ファースト」というと、
思い出すのは伊那食品工業の経営
である。

こちらの記事で紹介した通り、
伊那食品工業だけでなく、新井和宏さん
が創業された鎌倉投信も、似たような
フィロソフィーで経営をされている。
更には、静岡にある都田建設の蓬台浩明
社長の経営にも通じる。

この記事の最後にも書いた通り、
「きれいごと」に見えることも、
本気で推進すれば実現可能
なのだ。
塚越さんや新井さん、蓬台さんらの
実践が、そんな勇気を与えてくれる
わけだが、ここに新たに伊奈さんと
いう優れた「背中」が加わった。

帯にある

「迷ったら社員のため」

という言葉。
これを、単なるスローガンに留めず、
実際の経営上の意思決定において
判断基準として用いている。

その本気度、真摯さが、末端社員に
までしっかりと浸透
している。

経営者が、機能する組織をどうやって
創るかを考える上で、非常に示唆的な
内容に富んだ書であった。

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