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色鉛筆を大人に売る

色鉛筆と聞くと、子どもの頃に
心躍った経験
を思い出す人も
多いのではなかろうか。

メタル素材でできたケースを
開けたときに目の前に現れる
カラフルな世界。

絵心のない自分のような人間で
あっても、何だかワクワクする
心持ちがしたものだ。

幼稚園や小中学校で使って以来
ご無沙汰している人も多いのでは
ないかと推測するが、
別に大人が使ったって
バチは当たらない。

むしろ、童心に帰って、無心に
なって画用紙に色鉛筆を走らせる

ことができたら、大いにストレス
解消
になるだろうし、とにかく
純粋に嬉しい、楽しい気持ちに
なるのではないか。

そんな大人のニーズに応えている
と思しき色鉛筆を、知人がよく
Facebookに投稿しており、
ずっと気になっていた。

通販大手のフェリシモが、
500色もの色数を揃えた商品
「TOKYO SEEDS」
を展開している。

月に1セットずつ届く。
1セット2,860円(税込み)で、
合計25セットで500色が完了
なので、500色全てを揃えようと
思うと、71,500円もの出費
になる。

これを高いとみるか、安いとみるか、
それは人それぞれだろう。
サブスクのようなもので、
毎月あたりの金額は抑えられている
ため、総額を意識しなければ意外と
リーズナブルに感じなくもない。

結局、商品自体の魅力が十分に
高ければ、価格の高さは相対的に
低く認識される
ことになる。

その魅力のポイントは、
色数の多さと共に、その各色味に
付けられるネーミングの妙
にある
ように思われる。

25セットに分かれて届く、
その25回それぞれにテーマが
設定されており、
そのテーマに沿った色の名前が
とてもユニーク

例を挙げると、
「春」のテーマでは、こんな名前の
色が登場する。
(順不同、一部のみ抜粋)

・果汁したたるパパイヤのルビー色
・花壇の主役 お日さまみたいなガーベラの色
・彼女のお得意のレシピ レディ・マーマレード色
・ネオンの初陣の色
・ピリリと辛いがフレッシュな色
・高貴な王家の聖水の色
・食べちゃいたいくらいあのこのほっぺはあんず色。

是非使ってみたくなるネーミング
ではなかろうか?

似たようなアプローチとして、
サンスター文具からも面白い
色のネーミングをウリにした
ボールペンが最近出た。

静音設計のボールペン
「mute-on(ミュートン)」
色名が、極めてユニークなのだ。

・鯨の居眠り
・初夏の雫
・夜更かしの猫
・真冬の恒星
・セピアの午後
・浜辺の小瓶

といった具合で、パッと聞いただけ
ではどんな色味か判断しかねるが、
とても詩的で情緒あふれる名前
こういったネーミングによって、
消費者の感性に訴えるというわけだ。

こうした感性に訴えるタイプの
色名は、さすがに子どもたちには
ピンと来ないだろう。
あくまでも大人向けの商品だ。

色鉛筆を従来通りの手法で売って
いるだけでは、じり貧を免れない。
モノがあふれ、余る時代においては、
見向きもされなくなる。

大人をターゲットに、何か面白い
価値を届けることはできないか?

誰かがそのような問いを発して、
そこからこれらの商品コンセプトが
生まれたに違いない。

ターゲットをずらし、
そのずらした相手に対して
素晴らしい価値提供を実現するに
至っている事例として、
大変に興味深い。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。