EffectuationとMarketing/Innovationの概念整理
優れた起業家の思考様式を体系化した
「Effectuation(エフェクチュエーション)」
という理論を学んでいる。
このnoteでも、何度か取り上げた。
この言葉に出会って、かれこれ2年ほど。
提唱者のサラス・サラスバシー教授が
この理論を世に問うたのは10年以上も前の
ことだが、日本でその存在が注目を浴び始めた
のは割と最近のことだと認識している。
サラスバシー教授の本の邦訳を手掛けた
神戸大学の吉田真梨准教授から、
エフェクチュエーションの基礎、並びに
実践的な活用について一通り学ばせてもらい、
今後はいかに自分自身の行動に反映させる
ことで起業家的な成功を手にしていくかが
問われることになる。
学んだだけで実践しなかったら、
学んだ意味が全くないことになる。
自己満足的な学びを抜け出して、
いかに実行、実践を積み重ね、
成果につなげていくことこそが重要で
あるのは言うまでもない。
改めて、学びを反芻しながら、色々と
湧いてくる疑問を解消しようとしている。
そんな中で、エフェクチュエーションと
イノベーションは何がどう違うのか?
ということに引っ掛かった。
ちなみに、エフェクチュエーションとは、
と言われ、以下の5つの原則から成る。
良い機会なので、これらの概念を、私の専門と
するマーケティングの文脈で整理をしてみたい。
マーケティングという言葉の定義は、
人によってかなりバラバラであるのが実情だ。
私が個人的によく使うのは、
「市場をつくること」
あるいは
「売れる仕組みをつくること」
という定義である。
前者は、「Marketing」という英語と
にらめっこをすれば分かる。
ingが付いているということは、
「Market」は動詞である。
その意味するところは、「市場をつくる」。
なので、名詞形で「市場をつくること」と
なるというわけ。
後者は、ドラッカーの有名な言葉、
「マーケティングはセリングを不要にする」
から派生していると思って良い。
セリング、つまり売り込む、売り付けるの
ではなく、売れるようにすることこそが
マーケティングの本質である、という
考え方である。
ドラッカーは、
として、マーケティングとイノベーションを
挙げている。
私などがドラッカー先生に物申す立場には
ないことを承知であえて言うが、
ここでマーケティングとイノベーションを
分ける必要はないと思っている。
イノベーションも、広義のマーケティングに
含まれると思うからだ。
イノベーションの訳には、シュンペーターの
述べた「新結合」などと言う言葉が充てられる
ことが多いが、ドラッカーは
という定義をしている。
そして、具体的な事例として、
・高くても新しく優れた製品の創造
・価格の引き下げ
・新しい利便性や欲求の創造
・昔からの製品の新たな用途の開発
などを挙げている。
これらは確かに「イノベーション」だが、
「市場をつくること」に寄与する活動という
意味では明らかに「マーケティング」の一部
だと思うのである。
このマーケティングの理論は、
今ではコトラーなどの大家によって、
相当に詳しく体系化されている。
すなわち論理的な手順が組まれている。
Effectuationの立場からは、このような
論理的に体系化がされた、目的主導の
考え方を「コーゼーション(Causation)」
言い換えると「因果論」と呼び、
「実効論」、すなわち論理であれこれ
考えるより先に、まずは実行してみて、
効果が出たものを選び取っていこう、
という自らの考え方と区別している。
ドラッカーは、イノベーションについて、
と語っているところから見て、
上に述べた「因果論」的なアプローチを
取っているとみなせそうだ。
頭の中でぼんやりと、イノベーションは
「因果論」というよりも「実効論」に
近いのではないか?
とりあえずやってみたらうまく行った!
みたいなイノベーション事例が多いのでは
ないか?
そんなモヤモヤがあったからこそ、
エフェクチュエーションとの違いが
気になったわけだが、
基本に立ち返ってドラッカーの本を
パラパラと読み返したら、
彼がハッキリと、イノベーションに関する
目標を各部門に持たせるべきだと断言
しているのを見つけ、スッキリした次第。
イノベーションを含むマーケティングの
アプローチである因果論と、
エフェクチュエーションが採るアプローチ
としての実効論。
どちらが良い・悪いではなく、
どちらも必要な考え方だ。
その「両刀使い」を目指して、
実行、実践を着実に積み重ねていきたい。