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視線や脳波で科学的にデザインを評価する

最近のリサーチ会社は、
被験者の頭にオウム真理教を彷彿と
させるようなヘッドギアを装着し、
仮想の売場を再現した棚の前に連れて
行って、視線の動きや脳波を測定しながら、
消費者がどのポイントに反応するかを
チェックするようなソリューションを
開発・提供
している。

例えば、リサーチ大手のマクロミルが、
アサヒビールの依頼を受けて実施した
事例がサイトに掲載されていた。

「アイトラッキング」の名前の通り、
目=視線がどのような動きを示したかを
追いかけて、パッケージが店頭でより
目立つようなデザインを探る
ための調査を
実施した事例である。

こうした手法は、リサーチ会社が競って
開発している印象を持っていたのだが、
少し前の新聞記事で、アース製薬
独自の手法を開発したことを知った。

この手法を確立するにあたり、
学術的な裏付けも取るべく、
大阪大学大学院人間科学研究科の
入戸野宏教授のアドバイス
を元に
諸々進めていた様子。

そして、その内容を、5月に開催された
「第41回日本生理心理学会大会」
発表したとのことである。

アース製薬では、パッケージデザインには
大きく3つの役割がある
と整理している。

  1. お客様の目にとまり、認識していただく
    こと(視認)

  2. お客様の興味をひき、ポジティブに
    (心地よく)感じていただくこと(好感)

  3. 商品特長を分かりやすく表現し、コンセプト等
    のメッセージをしっかり伝えること(伝達)

私も以前に似たようなネタをこちらで
書かせてもらったことがある。
ショッパーマーケティングの基本
なる「Stop、Hold、Close」という
考え方だ。

Stop(ストップ):歩行者を売場に立ち止まらせる
Hold(ホールド):そこに足を引き止めさせる
Close(クローズ):購入する意思決定へと導く

アース製薬が指摘する
「視認」「好感」「伝達」という
3つの役割とは多少ズレているものの、
かぶっている部分も多い。

いずれにせよ、こういった理論に基づいて
実際に人間の行動(視線の動きなど)を
測定し、パッケージの良し悪しを判断する
ことが、安価に、かつ容易にできる時代が
既に訪れている
わけだ。

しかも、それをリサーチ会社ではなく、
アース製薬のような事業会社が独自に
開発した
というところが興味深い。

恐らくは、経営判断として、
リサーチ会社に調査を外部委託する
よりも、自前の組織を立ち上げて
消費者行動に関する知見を組織内に
溜めていく方が、中長期的に良いと
結論付けたのであろう。

私がこれまでに所属して来た企業を
思い返すと、この手の仕事は外部に
委託するのが常識
で、自前の組織を
立ち上げて研究するという判断には
正直驚きを隠せない。

きっと、年に何本もこの手の調査を
実施し、外部に払う費用もバカに
ならないレベルなのだろう。

そして、それだけでなく、研究結果を
社内に溜めることが、競争優位を築く
ことにつながる
と判断したのだろうと
推測するところだ。

地味な印象の強いアース製薬だが、
バスクリンの買収など、知らない
ところで結構大胆な動きをしている。

株を買っておこうかなと思う程、
優れた経営をしているとの印象を
彼らに対して抱いたのであった。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。