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文化の違いが契約書に表れる

以前、仕事で契約書のやり取りに
関わっていた。
これが非常に時間がかかり、
なおかつ内容が難解で、
知力も体力も消耗させられるのだが、
その分自分の学びも多いと思うようにして
何とか踏ん張ったものだ。

海外にある本社の意向に沿った条文を、
日本のサプライヤーに飲んでもらわねば
ならないというのが我がミッション。

しかしながら、文化の違いなのだろう、
うまく話がすり合うまでには
いくつものハードルがありそうだ。

内容は機密事項ゆえ、あくまでも
ざっくりとした表現しかできない点、
予めご容赦願いたい。

本社は、性悪説に基づき、なおかつ
交渉というのは狐と狸の化かし合い
という認識を持っていることが、
ひしひしと伝わってくる。

それに対して、日本のサプライヤーも
様々な外資系企業と渡り合ってきた
だけのこともあり、容易に首を縦には
振らない
のだ。

ペルシャ絨毯を買うときに、
最初は必ず吹っ掛けられるので、
値切って値切ってとにかく値切り倒せ
そんなことを言われる。
そうして、メチャクチャ安くなったと
思っても、実は売り手もしっかり利益を
確保しているもの、そんな話を思い出す。

相手を信用してはならない。
自分をだまそうと、虎視眈々と狙っている
に違いない。
だからしっかり交渉を重ねて、
値切ることが重要だという価値観。

「人を見たら泥棒と思え」
ということわざそのもの。
とりあえず、契約書の条文には
泥棒に盗まれないようにするために
色々と牽制をするような内容が
所狭しと並べたてられている。

最初からそのような条文を突きつけ
られたら、
「売られた喧嘩は買ってやろう」
とばかりに相手も戦闘モードになる。
「これは飲めない」
「これは削除してくれないと困る」
「この片務義務を双務にせよ」
そんな返答のオンパレード。

会社対会社で、お互いに意思疎通を
図るだけでも、「取引コスト」
それなりにかかっている。
電話をする時間分の人件費、
そしてその電話料金。
メールを打つ時間分の人件費、
その際に使うPCやネットの料金。

これらは決して「タダ」ではない。
そして、お互い戦闘モードで交渉を
すれば、当然ながらその取引コストは
グングンと跳ね上がる。

もちろん、一切文句を言わずに、
言われた通りの金額を払います!
というようなスキだらけの態度では、
世知辛い世の中であっという間に
身ぐるみはがされてしまう。

それでも、あまりに疑り深くなりすぎて、
取引コストを増大させてしまえば、
自分だけ得するつもり(Win-Lose)が、
自分も相手も損をする(Lose-Lose)
そんな結末になる可能性が高いだろう。

本社の代弁者として動かねばならない
立場上、
「Lose-Loseにならないように、
もう少し妥協しましょう!」
などとはおいそれと口にできなかった
のが、なかなか歯痒い思い出だ。

「取引コスト」の存在を十分に
考慮して、値切ることに血道を上げ
すぎず、ほどほどのところで着地させる
のが大切。
そんな風に思うのは、日本人気質という
ことかもしれない。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。