基本的な価値と付随的な価値
早くも5年以上前のことだが、
炭水化物ダイエットの考え方を
知って以来、麺類を食べる回数が
かなり減った。
特に減ったのが、スパゲティだ。
ランチの外食で割と定番の一つ
だったのに、ほぼ食べなくなった。
我が家では、子どもたちが食べる
ので常備されているものの、
私自身が食べる回数はかなり
少ない。
そんなことから、買い物で
スパゲティの棚を眺める機会も
めっきり減っていたために、
どんな新商品があるのか、
あるいはないのか、情報を更新
する機会がなかった。
今日、久々にスパゲティを買う
よう頼まれたので売場に行くと、
見慣れない商品が目に飛び込んで
来た。
パスタと言えば、「マ・マー」が
恐らくカテゴリNo.1のブランド。
その「マ・マー」から、
「早ゆで FineFast」なる商品が
出ていた。
名前の通り、早く茹で上がるのが
特長で、1.6㎜だったら通常7分とか
8分かかりそうなところを、たった
3分でアルデンテになるというのを
うたっている。
消費者がスパゲティに求める価値は、
まずは「美味しさ」だろう。
それが基本中の基本。
なので、どんな美味しさなのかを
訴求するべく、食感にフォーカスを
当てていることが多い。
「アルデンテ」
「プリプリ」
「もちもち」
「食べ応え」
といった具合だ。
麺の太さが、この食感に直接的に
影響を与えるため、好みによって
選べるようになっている。
細いのは1.4㎜位から、太いと2.2㎜位
まで、数種類のバリエーションを
持っていることが多い。
こうした基本中の基本となる価値に、
違う角度から斬り込んできたのが、
「結束タイプ」である。
これは、食べる方の都合ではなく、
作る側の都合を考えた作戦だ。
「基本的な価値」に対して、
「付随的な価値」を提供している
と言っていいだろう。
いちいち何gかを計ることなく、
1人分100gで小分けになっている
ために、作る際に軽量する手間が
省けて非常に便利なのだ。
この利便性に価値を見い出し、
1~2割ほどは高いであろう価格を
払っても惜しくないと考える
消費者が、確実にいるのだろう。
すっかり定番商品として定着した。
この「結束タイプ」の延長線上に
今回の「早ゆで」は位置づけられる
かもしれない。
茹で時間が半分(以下)に短縮できる
という利便性・付随的価値をもって、
作る側としてのお客様の関心を引こう
という点が共通していると思うのである。
あるいは、「早ゆで」シリーズを
もっと早くから展開していた、
マカロニやペンネなどのショート
パスタが良い売れ行きを示している
ので、それを単に横展開しただけ、
という見方もできるかもしれない。
ただ、いずれにしても、この
「早ゆで FineFast」は、あまり
上手く行かないのではないか、
というのが私の個人的な見立て
である。
まず、茹で時間が半分(以下)になる
と言っても、たかだか3分とか5分の
短縮に過ぎない。
ショートパスタは、お弁当などの
準備で何品もおかずを作るうちの
一品であることが多いため、
短時間のうちに茹で上がるという
特長はとても重宝するだろう。
しかし、ロングパスタの場合は、
それ自体がメインの食材であり、
時短がもたらす価値がショート程
大きくないと思えるのだ。
また、そこまで茹で時間の短縮化に
こだわる人ならば、既に別の時短
アイデアに辿り着いている可能性が
高い。
例えば、こちらの水漬けアイデアで
ある。
基本的な価値に、時短という新たな
軸で価値を加え、単価を上げて行こう
とするその試みは、大変素晴らしい
ことだと心の底から思う。
とは言いながら、やはり価格を上げた
分以上にしっかり価値を上げるという
ことの難しさを、ヒシヒシと感じた
次第である。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。