足し算ではなく引き算してみる
12月6日に、日経MJから年末恒例の
「ヒット商品番付」が発表された。
2023年のヒット商品の筆頭は、
東の横綱が「生成AI」
西の横綱が「大谷翔平&WBC」
ということで、極めて順当な印象。
史上最高額でのヤンキース入団の
インパクトを加えると、東と西を
交代させても良いかもしれないが、
いずれにせよ両者ともに今年を代表
する「大ヒット商品」に違いない。
顔ぶれをざっと眺めて、
名前すら全く知らないというのは
ほとんどないものの、その内容が
よく分からないというものは割と
チラホラあって、今の世の中で
まんべんなく情報をキャッチする
ことの難しさを感じる。
興味深いモノが多く並んでいるので、
この先いくつかをこのnoteで取り
あげてみようと思う。
今日は、西前頭3枚目に選ばれた、
パナソニックの電動シェーバー
「ラムダッシュ パームイン」に
ついて紹介したい。
冒頭の写真は、パナソニックの
ウェブサイトから拝借したもの。
従来の電動シェーバーとは全く
異なる、小さくてかわいらしい
フォルムだ。
名前の「パームイン」、お分かりの
方も多いと思うが、「パーム」が
「手のひら」を意味している。
その「パーム」に収まる=「イン」
というのが由来である。
番付にある説明では、
とあり、人気のほどがうかがえる。
12月10日には、
「ヒット商品番付 着眼点に迫る㊥」
という記事があり、開発企画に携わった
マーケターの方へのインタビューが
掲載されていた。
ヘッドの部分だけで商品を作って
みたらどうか?
そんな突拍子もないアイデアから
企画が動き出した。
持ち手をなくすために、不要な機能を
極限まで「引き算」したのだという。
特に、あごの形に合わせて動かす
サスペンションの機能を人の手に
委ねた点が、「思い切った」決断
だった様子だ。
商品を開発する際には、
消費者から色々とヒアリングして、
ニーズを聞き出すことが多い。
しかし、聞けば聞くほど、
あれもこれも盛り込みたくなり、
どれもこれも中途半端なものに
成り下がる。
そんなオチが付くことも少なくない
というのが実情である。
そんな「足し算」をしがちなところ、
あえて「引き算」をするというのは、
意識的に取り組まない限り、
そうそう出来ることではない。
本当に重要な、コアな機能だけを
残して、後は徹底的にそぎ落とす。
残したコア機能の部分では、
一切妥協をしない。
結果、2台目需要を切り拓いたり、
かわいらしいフォルムに引かれて
女性が男性へのギフトとして購入
する等、新たなニーズを満たして
ヒットにつながった恰好だ。
「引き算」商品として歴史に名を
残すものと言えば、ソニーの
「ウォークマン」を挙げることが
できる。
「持ち歩けるオーディオ」という
コンセプトがコアの価値なので、
音質は二の次と割り切った。
その割り切りがあったからこそ、
世紀の大ヒット商品となったのだ。
「パームイン」が「ウォークマン」
ほどの大ヒットに化けるとまでは
思わない。
しかし、成熟したマーケットにおいて
「足してダメなら引いてみよ」という
逆転の発想がヒットを生むことがある
見事な実例という点で、共通している
とは言えるだろう。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。