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変わらないために変わる

「変わらない」と「変わる」は
当然ながら正反対の意味。
だから、
「変わらないために変わる」
と言われても、一瞬キョトンとなる
のが普通だ。
明らかに「矛盾」だと感じる向きも
多いかもしれない。

しかし、「変わらない」と「変わる」
それぞれの主語や目的語次第で、
十分意味を成り立たせることは可能。

日本語の場合、主語や目的語を
文脈次第で大幅にカットしても、
何となく意味が通じているような
感じになるので、本来の意図が
伝わっているかどうかを別にして
一応表現は成り立つはずなのだ。

最近、『ドラッカー入門新版』
という本を題材とした、著者の
一人である井坂康志さんが直接
お話しくださる勉強会に参加を
させていただいており、
直近では
「正統保守主義」
なるものを学んだ。

遠い昔(30年近く前)に学生だった
頃、政治学の授業で多少は勉強した
概念かもしれない、
そんな気がしなくもない、
その程度の淡い記憶なので、
当然その名前を聞いても、
中身は全く見当もつかない・・・。
初学者のつもりで、本を事前にサッと
確認し、講義を拝聴した。

いわく、「正統保守主義」とは、
社会を守るために、必要な変革を
遂げることを恐れない考え方。
変革を通じて、守るべきものを守る、
そういう考え方だというのだ。
つまりは、タイトルにも挙げた
「変わらないために変わる」
ことを実践すること。
それこそが、正当な保守主義の
スタイルだというのである。

これには頭をガツンと殴られた
気がした。
「保守主義」と聞けば、頑迷固陋、
古き良き時代を頑なに維持しようと
する頭の固い考え方、
そんなイメージが一般的だと
思っていた。
英語のConservativeという言葉に
しても、昔ながらのやり方、
スタイルに囚われて、進歩を追い
求めることをしないイメージを
抱いていた。

しかし、そうではなかった。
必要に応じて、変革、変節をも
辞さないのが保守の本質なのだ。

「ネスカフェゴールドブレンド」
という、インスタントコーヒー*の
代名詞的ブランドがある。
*最近はソリュブルコーヒーと
 呼んでいる様子

「♪ ダバダー」のBGMを聴いた
ことのない人はほぼいないのでは
ないか。
あのブランドも、
「変わらないために変わる」
ことを実践していると聞いたこと
がある。

味の好みは、時代の変遷を通じて
微妙に変わっていくもの。
本当にレシピを変えずにいると、
いつの間にかお客様が
「なんだか最近不味くなった」
などと言われて、離れていく。
常日頃から微妙に味の調整を
繰り返し、素人には分からない
ような変化を加え続けて初めて
「ネスカフェはいつも変わらない」
「ネスカフェはいつも美味しい」
と言っていただけるそうだ。

同じような話は、結構色々な
ところで聞くことがある。

例えば、浅草の有名なパン屋さん。

ペリカンは、その変わらない味や
スタンスを守り抜くために、
変わらない歴史を積み重ねるために、
私たちが変わる努力を惜しみません。

とは4代目社長の言葉だ。

一風堂の河原さんも、確か同じような
ことをおっしゃっている。
ラーメン屋さんも、常に味を進化させ
続けていないと、
「いつも通り美味しい」
と言ってもらえない最たるものなの
かもしれない。

保守主義という言葉を決して
誤解してはいけない。
「保守」するには、並大抵の努力で
は済まないのだ。
守るためにトコトン変わる、変える、
目的をしっかりと持ち、それを
達成するためには変化、変容、変革を
恐れずに断行する。
そういうアグレッシブな意味を
秘めているのだ。

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ahiraga
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。