見出し画像

アンダーアーマーの販売代理店がドームから伊藤忠へ

ここ20年強で急速に認知度を上げ、
ビジネスを急拡大してきたドーム社
ドームの名前を聞いたことがなくとも、
「アンダーアーマー」の日本における
販売代理店
だと言えば、ピンとくる
人も多いはずだ。

私はバスケットボールを長年プレイ
しており、あまり野球には興味、関心は
ないのだが、それでもプロ野球、巨人の
ユニフォームがアンダーアーマーに
変わった*ときは、結構衝撃を受けた。

*2021年からミズノに変更されている。

バスケ界隈でも、ナイキやアシックスを
中心に人気があったところへ、
アンダーアーマーが殴り込みをかけ、
見事に大きなシェアを奪っている印象を
持っている。

そんなアンダーアーマーの日本代理店で
あるドーム社は、創業社長が有名人。
法政大学のアメリカンフットボール部で
プレイし、大学全日本選抜のキャプテンも
務めた
という安田秀一さんである。

バリバリの体育会系社長の下、
グングンと勢いよくビジネスを伸ばし、
外から上っ面だけを見ていたら、
とても上手く行っているように
思えたのだが、ここのところ内情は
厳しかったようだ。

こちらの日経の記事に簡単な分析が
載っているが、要はアメリカの創業社長も
イケイケどんどん
で、それに付き合って
日本の販社も突き進んだ

結果、販売不振による在庫過剰で赤字決算、
株式市場の信頼を失った
という顛末だ。

記事内に、2017年ごろから米国本社の
売上が伸び悩むようになったとある。
D2Cのモデルがビジネスを伸ばし、
量販店中心のビジネスモデルを脅かす
ようになった
とも指摘されている。

このタイミングは、あのナイキが販売
戦略を大転換した直後
である。
ナイキは一足先に、自らがD2Cモデル
へと舵を切っていた。
3万以上あった直接取引先(卸売や小売)を、
たったの40社程度に絞り込み、
併せてD2Cで自ら直接消費者との接点を
コントロールするモデルへと転換
したのだ。

ナイキの後を追うように、アディダスや
プーマといったブランドもD2C重視へと
転換せざるを得ず、アンダーアーマーも
追随をしたはずだが、初動の遅さを取り
戻すのはそう簡単ではなかった
のだろう。

その後、ナイキは益々D2C重視の方向性を
鮮明にしている
という話もある。

D2C、すなわち消費者と直接つながる
モデルの利点は何かといえば、
お客様の具体的なニーズや、
彼らのインサイト=ホンネを、
直接、素早く、生のままで入手できる

ことである。
そして、それらを次の一手に速やかに
活かすことができる
点である。

従来は、直接消費者とつながることは、
取引コストが高すぎて、不可能に近い
ことだった。
卸売や小売店が、メーカーと消費者の
結節点となって、情報集約・フィード
バック機能
を果たしていた。

それが、ITのイノベーションなどに
よって、「中抜き」が可能になってきた。
むしろ、「中抜き」した方が効率が良い、
効果が出せる
、そういう時代になった。

中小が、大企業のスキを突いてD2Cで
伸びてきたところで、大企業の中では
ナイキが早めに手を打ったということ
なのである。

ドーム社の意思決定が遅すぎたのか、
株式市場のプレッシャーが不当に強すぎ
るのか、私には判断しかねる。
ただ、「ひとこと解説」で一橋大学の
鈴木准教授が指摘する通り、
「ブランドの価値を毀損させずに成長
させることは本当に難しい」
「成功と失敗は紙一重」

と感じさせられる記事であった。

今後は伊藤忠商事が商売を引き継ぐ。
アパレルの強さに定評ある商社ゆえ、
恐らく人材も揃っているだろう。
個人的に気に入っているブランド
でもあり、是非ビジネスの再活性化を
期待したい。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。