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国民民主とれいわが「粘った」わけ

今回の衆院選の自分にとっての一番の驚きは、国民民主とれいわ新撰組が予想以上に比例で議席を獲得し、粘ったことである。

それを今回は紐解いていこうと思う。


1.国民民主党の場合

まず、国民民主党の「改革中道」「対決より解決」路線が支持されたわけではない。

得票率も2年前の参院選から2.4%落ちており、得票数も348万票から259万票と25%も減ってる。

改革志向の有権者は普通に維新に行っちゃうし、保守票はほとんどが自民党に投票する。

「国民民主党がいい」と評価されることはあっても、それは自民や維新の2番手政党に過ぎない。

では、それでもなぜ粘ったのか。


1-1.労組政党である

国民民主を支援する労組は、電力、自動車、電機連合、UAゼンセン、基幹労連の5産別だ。

いわゆる、旧同盟系列ではあるが、ここの皆さんたちが頑張ってくれたことに尽きる。

また、滋賀1区、長崎1区、茨城5区に関して言えば「ここで落ちたら比例復活はない」「国民民主はマジで終わる」「立憲に吸収合併される」という危機感はあったと思う。

それがいい方に働いたと見るべきだろう。

特に近畿ブロックや九州ブロック、南関東ブロックはかなり難しいと見られた議席獲得は大健闘と言っていい。

1-2.反立憲の受け皿として。

大前提、立憲民主党ですら知られてるか微妙なのに、国民民主を知ってる人なんてかなり少ない。

保守票は基本的に自民党、改革志向は基本的に今回の場合は維新に流れたため、なかなか国民民主に入るというのは考えにくい。

それでも、「共産と組んでる立憲はイヤ」とか「立憲民主党のあのスタンスはちょっと…」と思ってる野党支持層の受け皿になったのかもしれない。

政策提案路線が支持されたかどうかはまた別物であって、「立憲民主党あっての国民民主」という側面は抜け出せてない。

1-3.コアな支持層の獲得

とは言いつつも、この3年半で野党支持者の間には一定のコアな支持層を獲得できたと思われる。国民民主が20代に相対的にウケてるのも確かに事実だ。

旧国民民主後期は独自路線と共闘路線で違いはあったものの、新国民民主になり、より独自色を出せるようになったのもプラスの側面はある。

「家計第一」「給料が上がる経済」というのはキャッチーで分かりやすかった。

この部分は従来のリベラル系列が弱い分野であり、民進党の曖昧なカラーを結果的には立憲民主党も引き継いじゃった側面もあるため、国民民主の強みとしてさらにブラッシュアップされるだろう。

1-4.今後の国民民主党

とは言え、来年の参院選では1人区で立てられる候補は大幅に限られ、現職の舟山さんや足立さんでも共産党抜きで戦うにはかなり難しいのも現実だ。

足立さんに至っては前回2000票差だった。

大分全県区での話だ。

また、2人区(静岡や広島)においても、立憲の協力なしには勝てない。それに、広島では柳田さんが次出るかどうかも分からない。

あとは、埼玉の上田清司さんも会派にいることはいるが、70歳以上の現職に逆風が吹き荒れる現状、慎重な判断になってくるだろう。

単独で戦えるのは愛知の伊藤たかえさんだけだが、維新が擁立するだろうから、前回以上に厳しい戦いになることは間違いない。

独自路線だと言っても、基本的には国会内部での話になり、選挙ではどうしてもそうは行かない。

また、維新との連携という話が持ち上がるが、基本的に維新は労組をかなり叩いており、実は根本では相容れない。

やれたとしても国会内での緩い連携に止まりだ。

それに、国民民主が取り上げられるときは野党政局絡みであり、政策的には立憲民主党と全く違いがない。

玉木さんは、「消費税減税」が理由で立憲民主党に合流しなかったが、今回の選挙では立憲もそれを掲げているので、ある意味ではハードルはなくなってる。

ここに国民民主の構造的な限界がある。

それでも議席を増やしたいのであれば、今回共産党のみの候補者がいるところに、勝敗度外視で積極的に擁立するしかないだろう。

出る人は「なんで立憲じゃダメなのか?」「維新じゃダメなの」という理由にきっちり説明できる能力も問われるが…

2.れいわ新撰組の場合

木下ちがやさんは「どんな政党でもブームは1回しか起こせない」と言っていた。

れいわ新撰組も2019参院選から凋落傾向にあり、山本太郎の東京8区騒動や都議選0議席でもう終わったと思った。

ただ、今回の衆院選、なんと224万票も稼いだ。正直、すごい。

「山本太郎」という名前が書けないという制約があってこれだから、なおさらだ。

野党政治家で1人で224万票も稼げる人は正直いない。小沢さんですら2013年以降は100万票しか稼げてないのになおさら。

今回のれいわ新撰組は本当の躍進とも言っていい。その理由を考えてみた。

ただ、自分自身れいわ新撰組はあまり好きじゃない。

2-1.ターゲット戦略のうまさ。

元々、山本太郎は脱原発でのし上がってきた男だ。ただ、たまきチャンネルの対談のなかで語ってたのは、「語ってて一番反応がいいのが経済」ということ。

原発政策を脇におけたという部分では非常に凄いことである。共産とかだとこれがなかなか難しい。

国民民主もそうだが、従来のリベラル政党と違うアプローチは上手とも言える。

最も、消費減税が今後話題の中心になるということはしばらくないだろう。

2-2.「話題になればいいんだ」精神

山本太郎はとにかく野党支持者でも好き嫌いが別れる。

そして、選挙特番の中継トークでは「反ワクチン」を公言してるという、他の政治家なら一発アウトな発言をしている。

でも、彼をそれを何とも思ってない。

「たとえ炎上しようが話題にならないと何も始まらない」という精神で割り切ってるんじゃないかとすら思う。

不思議なもので、ネットニュースの台頭で、山本太郎は「野良犬」だからこそ、スポーツ紙の政治担当はある意味ではとっつきやすくなった。

同時に小政党が生き残るのはこうしかないとも熟知してる気がする。

テレビのcmだけでなく、YouTubeやヤフーに広告出すのも当たり前だが予算が必要。

それならば、一発炎上させた方が予算の面から考えたらある意味では合理的。

社民党や小沢さんでも、影響力は年々低下していくなかで、彼の影響力は今後さらに増すかもしれない。

野党共闘を進めたいのか壊したいのかもよく分からないし、かと思えば、中谷一馬や太栄志の応援演説に参加する。

山本太郎は圧倒的なヒールだけど、それをやれるプレーヤーは少ない。

会得さえすれば、生き残りは意外と簡単で、3%の固定支持層を掴めれば何とかなっちゃう。

これが一番うまいのはクロちゃんである。

言い換えれば、プロレスが非常にうまい人でもある。

山本太郎のやり方を他の政治家がやったら間違いなく大怪我するし、真似しない方がいい。

ただ、昨今のワイドショーでの叩かれっぷりを見てると、必要悪かなと思う自分もいる。

2-3.左派系文化人からの不思議な信頼

ここに立憲民主党の弱さもあるんだろうが、

まあ左派系文化人は山本太郎のことが大好きだ。

立憲民主党は、ある意味でこの手のアプローチが弱いんじゃなかろうか。

限界サヨクと言われたらそれまでなのだが、限界右翼はなんやかんやで自民党を支持する。(菅政権はここを束ねられなかったのが短命の一因にちょこっとはなったと思ってるし、岸田政権も前ほどは結束できてない。)

が、左派はなかなかそうは行かない。アメリカの民主党やイギリスの労働党はガンガン有名人の支持者を全面に押し出す。

この構造問題もなかなか興味深い。

連合批判、枝野批判がなぜか左派系文化人はそっちに走っちゃう。

保守系なら公明党批判に走ることはあっても、自民党批判に走ることは少ない。

ただ、山本太郎が維新批判を強めたら、この傾向はますます強くなると思う。

エコーチェンバーというか、安保法制以降の流れと言われたらそれまでかもしれないが、なかなか難しいところだ。

3.最後に

基盤がない政党はほとんどが5年持たずに終わってる。

第三極として一定の役割を果たしたみんなの党や自由党ですら5年ちょっとで終わってる。国民新党でおよそ7年半かな…

もし、れいわ新撰組や国民民主党が5年政党を続けられたら大したもんだと思う。

最も、立花孝志が「2年前の参院選とあまりニーズが変わらなかった」というのも確かに頷ける。









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