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HBR読む2023/12(2)特集1「人を惹き付ける会社」

前回に引き続いて、HBR2023/12月号を読む。

特集1「人を惹き付ける会社」について。


本記事、支援を求めることについて

「私たちはなぜ、『助けを求めること』が苦手なのか」という寄稿。2023年の7-8月号に掲載されたものの翻訳記事。

読者の管理職などが業績を達成しながらも助けを求めることができずにいるということに寄り添って防止できる方法を一緒に探るような記事。

上司は部下に支援をもとめれば、部下は期待されてると思ってがんばるだろうし、親しみやすい上司とも感じてるようになりますよというアドバイスも掲載されていた。確かに、部下の経験ならあるから、いいアイデアだと思う。

同僚とちょっと困っていることについて話すことによって、同僚が同じような問題を解決したことがあった場合は助けてもらえるケースもあるという。

助けを求めること練習が必要で、あんまりよく知らない相手(同級生で仕事で同じような立場になっている人)でも自分と同じような立場の人であれば同じような問題について話す交流をとってもいいんじゃないかという提案もあった。

助けを求めることは”弱さの表れ”ではなく、”勇気ある行動”として自分にできることの一つであり、そのことで人間関係を改善していくことができる、というエンパワメントだった。

日本人の論文は 流して次の記事

ITM(インターナル タレント マーケットプレイス)

従業員の職務満足度とエンゲージメント向上のためのITMについての特集。

日本だと最近はHRテックの分野でタレントマネジメント…カオナビなどのソリューションが脚光を浴びていると思う。そして、最近はアムルナイ(OBOG)についてもつながりを保つシステムが必要だと言われるようになってきている。

事例を挙げつつ、このような場合はこのように役立つ、という説明になっていく。

米軍の陸軍の事例。適切な担当者を探すために軍内のシステム「グリーンページ」を使った話が出てくる。(例えるとLinkedInの社内型であるという説明)

シュナイダーエレクトロニックの事例。世界100カ国に113 オフィスを持っている企業。ITMソフトウェア プロバイダーのグロウトと提携をしてITMを立ち上げ、従業員の60%がこれを利用し、利用者の80%以上は同僚に利用を推奨すると述べたということ。

米国防総省の事例。200万人以上のメンバーがいる組織だがITMがうまく働いているという。メンバーが多いとマッチングの精度が上がるし、単一のHR部門で人事施策の成功を追いきれないという2つの点で。

…うまく行ったからといって、沖縄で横暴をはたらいたりしないでほしいものである。

Googleの事例を挟んで、実際に導入するためには?という話になってくる。いくつかそのようなシステムを提供するサービスの名称があがる(グロート、フューエル50、ヒッチ)。

システムだけでなくキャリア目標を支援する制度、マネージャーは情報をどこまで見ることができるのか従業員に知らせるといった準備も紹介される。

また、どうしても花形のプロジェクトには優秀な人が応募をして集まってしまうので、花形以外の仕事については運営側(HR部門や経営側)から推奨やインセンティブが示されるような形で関与が必要なようだ。

うーん、自由度が増すとそんなことも起きるわけか。まだまだ途上だなあ。

学位よりもスキルをという話

学位でふるいをかけるのは実は効果がなかったので、IBMが学位よりスキルを優先し始めたという話。

職務記述書※に学位を条件とすると書かないようにした。

※ジョブディスクリプション。外資ではあるもの。日本でもジョブ型雇用にしている場合はあるのでは。仕事内容が詳しく書いてあるもの

IBMはスキルがあれば学位がなくても働きながら学校に行って必要な単位をとれる制度を作っが。IBM近隣のコーヒーショップの店員(子どもがいる)で「IBMに入れたら…」と思っている人がその制度を知ってカスタマーサポートフルタイムの仕事をしながら学校に通ってIBMでキャリアを築き始めたという。

スキルベースにするには文化の変容が必要だし、一人か二人をテストケースとしていてはうまくいかないといったことも説明されていた。

そうだなー。よく考えているなー。

日本でスキルベースにした場合、勉強をするための時間をとらせるような仕事量の配分はできるだろうか。SESという業態の企業では、社員のエンジニアには学校のようにスキル習得を求めることはしている。分かれてしまっていないだろうか。

文系科目を省略した従業員が多数になり、その層が支配的になった時、企業の倫理観が壊れてしまうことはないだろうか。

障碍者を雇用する企業が優位性を獲得するという話

経営者に向けて障碍者雇用によって企業が競争優位に立つということを説明する論文。

この論文は冒頭で特別な能力の獲得、企業文化の向上、顧客との関係強化、資本と人材へのアクセス拡大の4点のトピックを出してその順に説明している。

特別な能力の獲得:例えば品質管理には自閉症スペクトラムの人、車椅子ユーザーの視線からはスリを見つけやすいし追いかけるスピードも速い、顧客担当として現場に入っていくだけで顧客の雰囲気が変わる等

企業文化の向上:社内文化に影響。心理的安全性が高まる、困難を抱えた人がパフォーマンスを発揮するところをみて「自分もできるはず」と気づくため。

顧客との関係強化:障碍者が働くカフェには顧客として障碍がある子どもとその家族が来る。障碍者が働く工場は見学者がファンになり口コミが発生。この段落には〇〇ウォッシュのような形になってはならないという趣旨の注意文言も入っていた。

資本と人材へのアクセス拡大:障碍者が働く企業で自分も働きたいと応募する人が増え、投資家もESG投資を行うようになっている。

内容は想像の範囲に収まった。ウォッシングが起きませんように。

AI時代の従業員リスキリングの話

以前はレイオフをしないで済むためにリスキリングをするというネガティブな位置づけだったが、全職業の何十パーセントがAIの影響を受けると予測されている現在、戦略的にリスキリングを行う企業が出て来ているということらしい。

そうなんだ。日本の場合は、なんか政府が号令かけて突然すごく言うようになったよね…。

戦略的なリスキリングはチェンジマネジメントと似ているということで説明が続く。中間管理職の抵抗がある(部下が業務に集中できるのか、等)から、中間管理職の評価項目に部下の成長に寄与したかを入れるとか、制度設計に巻き込むといったことがテクニックとして記載されている。

トレーニングは教室型ではなく、体系的に誰かがやっているのを見て試して行くやり方の方がいいという話もあり、これはそうだなと思った。

従業員は、自分の業務にディスラプション(AIによって仕事が脅かされること)が迫っている場合はリスキリングをしたいと思うものなのでメリットを明確にするとよいという話も。だけどこれも制度がついてくるかどうかだよね。

論文は終わりにかけて、先行している企業の会社が学習に必要なお金を出す制度。まあ従業員にとってはそうあってほしい。そして、研修会社にとっては嬉しい記事の作りになていると思う。

ボーダフォンの年4回学習するためのまとまった時間を持てる制度、すごくいいと思った。自分は勉強したいことがあれば古本中心にガンガン買っていくスタイルなので、時間があることはとても大事なこと。

以上が特集1

意外とこれ書くの時間かかるなと思った。

基本的にこの本は経営者目線なので、中間管理職をどう扱うのか、ということがよく書いてあって、中間管理職が何をしがちで上からどういうプレッシャーをかけられているのかがわかってよい。

アメリカの世論がずっとダイバーシティで、労働者の力が大きくなっている最中だから、そのことを経営者に説く内容になっている。

従業員としては、実現されればけっこううれしい。

偏見かもしれないが、日本の中小企業の経営者にとっては「やれればやってるよ」「金があればな」で片づけられそうな内容ばかりだった。

しかしHBRに載っている情報は、10年くらいしたら廉価にすこしづつどこの職場にも少しづつ入っていくのだと思っているので、こうした情報には気長につきあいたい。

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