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グァプルブ Guapuruvu 王冠樹 ~ブラジル緑の歳時記 第96回~

#ブラジル緑の歳時記
#月刊ピンドラーマ  2021年1月号
#田中規子 (たなかのりこ) 写真と文

 太い幹がすっと真っすぐ伸び、上の方でやわらかな葉を広げている、見るからにスカッとする、グァプルブはいかにもそんな木だ。下枝はなく、幹は滑らかで丸く樹勢も美しい。ボリビア、パラグアイ、ベネズエラ、エクアドル、メキシコまで植生しており、ブラジルではバイア州からサンタカタリーナ州の海岸山脈にみられる。

 この丸く太く真っすぐな幹はインディオがなかをくりぬいてカヌーをつくるのに使っていたそうで、グァプルブという名前はインディオの言葉で船を作る幹という意味だとか。他の一般名にも Canoa de um pau só(1本の木のカヌー)というのがある。特にサンタカタリーナ州、パラナ州では漁師がよくこの木の船をつくっており、牡蠣の養殖で知られるサンタカタリーナ州の湖、Lagoa da Conceiçãoではいまでもグァプルブの小舟を使っている。そして同州の州都フロリアノポリス市のシンボルの木、サンパウロ州ではパライバ渓谷のシンボルとなっている。

 木材としては軽く柔らかいので幹をくりぬくのが容易く、カヌーをつくるのに適している。とはいえカヌー用の最適な太さになるには30年から40年かかる。いまでは絶滅危惧種で伐採できないため、自然倒木で作っている。幹は特徴的な灰色で見るからにこの木でつくったカヌーは美しいのだろう。

 特徴はブラジル原産の木の中で最も成長が早いことである。1年に3m伸びるといい、最終的には20mから30m、幹は直径60㎝~80㎝になる。成長するにつれ下枝は落ちていくため上にしか葉が残らずこのような樹姿になる。日当たりの良い場所に育ち、João-de-barroという泥で巣をつくる鳥は、高く日当たりの良いところを好むためこの木によく巣を作る。荒廃地にもよく成長することから森林再生のための植林に使われることも多い。しかし寿命は長くはなく、40年から50年である。子供の頃にこの木を植えたなら枯れるところを見ることになるのかも。幸いにも?私たちはずっと成長を楽しむことができるだろう。

 花は10月~12月、鮮やかな黄色い花を咲かせ、種子は4月~7月の間に生る。種子は平べったい鞘に入っており、大きめの固く平たい種ができる。堅いのでボタンや最近はバイオジュエリーにも使われる。この堅さのためか自然での発芽率が低く、やすりで外皮を削るか、お湯に10分ほど浸してそのあと2~3日水につけないと発芽しない。

 開花が10月からということで、ブラジル俳句の歳時記では夏の季語になっている。樹頭で大きく鮮やかな花が咲く様が風情があり、「王冠樹」という名前がつけられている。そういえばブラジルの春から夏にかけて黄色い鮮やかな花が多いような気がする。花粉には糖分が多く含まれ養蜂に良く、香りもいい。とはいえ、高い木の上で咲くので実際嗅ぐのは難しそうだ。

 先日アチバイアの公園で種を拾ったのでボタンにもしてみたいし、苗もつくってみたい。カヌーが出来そうなぐらい成長するかどうか気長に農場で確かめてみようか。

田中規子
1990年にブラジルに初めて来て以来とりつかれる。
現在アチバイアに栗園を開設し、焼き栗販売中。
norikosp@gmail.com

月刊ピンドラーマ2021年1月号
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