証券投資の「リスク」

今回は、「リスク」という言葉について考えます。

みなさん、「リスク」と言われたらどんなことを想像しますか?なにやら、危ないものがいろいろ思い浮かぶと思います。しかし、証券投資の世界ではちょっとこの認識とは違った使い方をします。


証券投資(に限らないかもしれませんが)において、「リスク」とは「分からないこと」を指すと考えてください。ここから転じて、ボラティリティという言葉で表現される「値動きの荒さ」とかもリスクの1つになっています。ですが、あくまで「リスク」と言われたら「分からないこと」だと思ってください。


では、「分からないこと」は具体的に何があるでしょうか。「明日電車が遅れるか」、「来年の自分が住んでいる場所」など、未来の自分に起こることもほとんどわかりませんよね。最近の話題だと、「新型コロナウイルスがいつおさまるか」などもわかりません。


このように、世の中には「分からないこと」が多くあります。この「分からない」という状態が「リスク」なのです。証券投資の世界では、「不確実性」とよく呼んだりします。


例えば、明日台風が来たら、明日の電車は遅延する可能性が高いですよね。よって、「明日の電車が遅延するかどうか」という出来事には、「台風が起きるかどうか」というリスクが含まれていると言えます。他にも、「明日人身事故が起きる」や「明日地震がおこる」など、電車の遅延を発生させる可能性のある出来事はすべて「リスク」と言えます。


では、「リスク(=分からないこと)」は何があるでしょうか。まず、最も簡単な証券投資は株式売買などです。前回お話しした通り、ここで関心があるのは、利益を決定する「売値」ですから、今回興味があるのはこの「売値」を動かす出来事で、それが「リスク」と言えます。電車の遅延のように、未来の出来事が起こるかどうかは、基本的に「分からない」と言えますよね。よって、これから「売値」を動かす出来事は全てが「リスク」です。


それでは、「売値」を動かす出来事について考えていきます。これは、挙げればキリがないほどありますし、まだ発見されていないものも数多く存在しています。例えば、「日本経済が悪化した」という事実も、この売値を動かす可能性がありますし、「南極の氷が溶けた」みたいな事実ももちろん、売値に影響を与える可能性があります。


このような色々な出来事が「リスク」として存在することによって、「値動き」が起こっています。例えば国債は「国の信用力」を表しているものです。よく分からないという人も、一旦は、そんなものだと思ってください。国の信用力が高くなればこの債権の価格は上昇し、国の信用力が低くなればこの債権の価格が下落します。他が何も変わらず、日本のGDPだけが下がったら、日本の信用力は少なからず低くなったと考えることができますよね。よって、もし日本のGDPが下がったら、債権の価格は下落します。


しかし、この出来事が起きるかどうかは確定していません。よって、出来事が起こるかどうかを「予想」するしかないわけです。この予想にも、「そもそも上がるか下がるか」や「どれくらい上がるか、どれくらい下がるか」という部分にも1人1人差があります。そうした結果として「値動き」が日々起こっているのです。そしてそれらの出来事1つ1つが「リスク」なのです。


ここで一旦考えてみましょう。

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Q.「未来の景気が良くなる」という事象はリスクと言えるでしょうか?

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答えは、「リスクといえる」です。

これは、未来の事象ですので、「分からない」です。なので、これは「リスク」と言えるのです。

良さそうな事象なのに「リスク」と呼ぶのは、日常生活のリスクという言葉に慣れていると多少違和感があるかも知れませんが、証券投資の世界では「分からない」をリスクと言いますので、間違いなく「リスク」なのです。


さて、なんとなく「リスク」について感覚はつきましたか?

最後にもう一問です。

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Q. どちらが「リスク」が高いでしょうか?

A. 今は100円だが、50%の確率で150円になり、50%の確率で100円になる株式。

B. 今は100円だが、50%の確率で120円になり、50%の確率で90円になる株式。

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答えは、「Aの株式」です。

確実に得するのに!?と思われるかも知れませんが、Aです。

Aを買った時、将来起こる事象は、「50円得する」「0円得する」の2つです。これらはどちらも等しい確率で発生します。よって、未来の自分の所持金に「50円分」分からない部分が生じてしまいます。

Bを買った時、将来起こる事象は、「20円得する」「10円損する」の2つです。これらはどちらも等しい確率で発生します。よって、未来の自分の所持金に「30円分」分からない部分が生じています。

この「未来に起こりそう」なものの中では、そろぞれで「リスクの大きさ」が違います。

この問題に関して、少し違和感を覚えたままの人が多いと思います。

次回はこの違和感を完璧に拭えるように、少し数学的に「期待値」というものを解説してみます。必要な数学知識は不要です。四則演算のみで解説いたしますので大丈夫です。

それではまた次回〜。


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〜まとめ〜

・「リスク」とは「分からないこと」である。

・例えば買って売って利益を出すような投資だと「売値を動かす要因」が「リスク」と考えられる。

・良い事象であっても、分からなければリスクである。

・リスクには「大きさ」がある。