「期待値」とは

こんにちは。

今回は「期待値」について解説していきます。少し難しく、抽象的な話もかなり多いです。より具体的な解説を心がけますが、わからない人は適宜他の文献なども見てみてください。

証券投資の世界では、「確率分布」という概念を使います。これは、少々難しい理論です。直感的には十分理解できるものだと思いますので、頑張ってください。

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上の図を眺めてみてください。といっても、何がなんなのかわかりませんよね。結論から言うと、μという文字が「平均」σという文字が「標準偏差」を意味しています。そして、この青い線が「確率」を表しています。

このグラフには縦軸と横軸がありますね。横軸のなかから好きな場所を指定してみます。

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今回はこの辺を指定してみました。この時の青い線はどこになるでしょうか。

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この辺りになりますね。よって、この下の黒丸の値(横軸)が発生する確率は、上の黒丸の値(縦軸)になります。

厳密には、ある1点が起こる確率は0になるため、ある一定の範囲が起こる確率という表現をします。しかしながら、感覚的には上記のような感覚で十分です。

そして、青い線と横軸で囲まれた面積は、1になります。「どの数字も出ない」なんてことはないと考えているのです。必ずどれかの数字は出るので、「全部のうちどれかが起こる確率」は1になると考えています。

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例えばこういう図が考えられるとき、-1から1の間が起こる確率は、図の斜線部分の面積で表現することができます。青い線と横軸で囲まれた部分の面積は1と考えますので、それよりも小さい部分の面積は全て、1よりも小さい数字で表されます。例えば、ちょうど半分くらいであれば0.5などです。0.5はすなわち50%のことを表しますよね。

なんとなく分かる方もいると思いますが、確率分布(青い線)の形状は、μ(平均)付近で大きい値となります。これは、大体μの周りの値が出やすいということを表しており、逆にμから大きく離れた値はでにくいということになります。例えば直前の図だと、0近辺の値は出やすいけども、3より大きい数とかはなかなか出ないでしょう、ということを表現しています。

もちろん、σ(標準偏差)が大きければ、この「大きく離れた値」もやや出やすくなっていきます。例えばμ=0としても、σ=5の確率分布を考えれば、もちろん、μ+σでも5になりますので、5も全然出てきやすいような確率分布が考えられます。

さて、なぜわざわざこのようなことを考えるのかというと、証券投資の「リターン」や「リスク」はこの確率分布という概念から考えることができるからです。

結論から言うと、このμ(平均)が証券投資の世界では「期待リターン」σ(標準偏差)が証券投資の世界では「リスク(ボラティリティ)」となります。

前回、前々回でリターンやリスクについて解説しました。ここで、リターンの定義を振り返ってみましょう。

リターン = (売値 ー 買値) /    買値

でしたね。ここで、売値は買った時点ではわからないので「予想(期待)」するしかありません。よって、リターンも必然と、買った時点では「予想(期待)」に過ぎなくなるのです。この予想しているリターンを「期待リターン」と呼びます。

期待リターンを導く方法には天才たちから色々なものが提唱されていますが、どれも完全な正解を表現することはできていません。例えば、「ブラック・ショールズ式」という革命的な式を発明したブラックさんとショールズさんは、この式を使ってリターンを求めた結果、なんと会社を潰してしまったのです。それだけ、未来のリターンを予想することは難しいと考えることができます。

さて、話を戻します。これまでの解説で分かるように、将来に期待される期待リターンは、あくまで予想なので、「予想からのズレ」が想定されます。この「ズレ」がリスクなのです。

例えば、期待リターンが3%だと予想される株式Aがあるとします。では、この株式が必ず3%のリターンになるかと言われれば、そうではないです。もしかしたら-3%になるかもしれないし、価格が動かずに0%かもしれない。さらには、3%よりも上になるかもしれない。色々考えることができます。でも、さすがに50%も上がらない、なんてことも直感的にわかったりもします。これが「ズレ」です。

さて、この「ズレ」が確率分布上のσだといいました。

というのも、先の例で、50%も上がることはないだろうと直感的にわかったり、3%を期待しているのだから、大体その辺りの値にはなりやすいだろうとか、-50%とかにはならなさそうだけど、-3%とかにはなりそうかもな、とかそういったことを全て表現してくれています。

μ(期待リターン)= 3%、 σ = 5%

としてみましょう。すると、一番最初の確率分布の図では、右端の方のμ+3σの値は18%になり、左端の方のμ-3σの値は-12%になりますね。厳密には、この端っこの方に書かれている値よりもさらに端っこが存在し、そのあたりが起こる確率も0ではないです。しかしながら、μ-3σからμ+3σの間が起こる確率は99%程度だとされています。

この予想から「ズレ」が起こるのが、証券投資の「リスク」で、このズレを生んでいるのが、前回の項目で述べたような要素なのです。


いかがだったでしょうか。

少し抽象的で難しいとは思いますが、複数回読んだり、他の文献を見てみるなりしてできる限り理解を深めてほしいと思います。

次回は、この「期待リターン」や「ズレ(標準偏差)」について、具体的にどう算出していくかについて考えていきますので、より頭の中が具体化されていくと思います。


〜まとめ〜

・確率分布では、全部のうちどれかが起こる確率は1と定義される。

・確率分布では、平均周りの値が出やすく、平均から離れた値は出にくいと考える。

・証券投資の世界では、確率分布の平均は「期待リターン」で定義される。

・期待リターンからのズレが「リスク」である。