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ファーウェイ排除が世界経済にもたらす損失

アメリカ、イギリスなど西側諸国で、5Gネットワークから中国の華為技術(ファーウェイ)製機器を閉め出す動きが広がっています。

「2018年以来、アメリカはファーウェイを法的な攻撃の的にして、貿易戦争の火種にした。イギリスは自国の5Gネットワークからファーウェイを排除すると言っていて、欧州の他の国々もこれに追随する気配を見せている」
"Since 2018 America has subjected it to a legal assault, making it a flashpoint in the trade war. Now Britain has said that it will block Huawei from its 5g networks. Other European countries may follow."(英エコノミスト 2020年7月18日号 "Trade without trust"より。以下引用同じ)

中国の機器はスパイ目的で設計されており、信用できないというのがその理由です。中国製の人気動画投稿アプリ「ティックトック」も、いくつかの国で使用禁止の方針が打ち出されてニュースになりましたが、こちらも個人データが中国政府の手に渡る可能性があるというのがその理由でした。

しかし、ファーウェイやティックトックが「実際に」中国政府にデータを渡したという事実も、その証拠も今のところありません。トランプ大統領がそう言っているだけです。

米中貿易戦争のせいで、アメリカに輸出される中国製品には高い関税がかけられるようになり、産業界に及ぼす影響と負担はかなり大きなものになっています。また、ファーウェイが5Gに参入すれば、通信費は確実に安くなり、消費者にも恩恵があります。それなのに、証拠はないが中国企業ってなんだか怪しいから禁止、というのは、合理的な判断とは思えません。エコノミスト誌はこう述べています。

「開かれた社会と一党独裁の中国とが経済的なつながりを保ち、秩序のない状態に陥るのを防ぐためには、新たな貿易の枠組みが必要だ」
"If open societies and authoritarian China are to keep their economic links and avoid a descent into anarchy, a new trade architecture is needed."

それにはアメリカと西側諸国が連携をとって、双方にとってメリットのある政策をとることが必要です。例えば、中国企業がアメリカや欧州に進出する場合、その支店はアメリカや欧州のスタッフが自国の法の下で運営する、などの案が考えられます。しかし、どこの国とも協調しようとしない独善的なトランプ政権のせいで、世界は中国企業とビジネスをする機会を奪われ、経済停滞の一因となっているのが現状です。

「トランプ政権は、世界がファーウェイを切り捨てるように仕向けており、ファーウェイのサプライヤーに対して一方的に輸出禁止の措置をとるよう命じ、アメリカの製造装置で作った海外製チップを含む、一部の部品をファーウェイが入手できないようにした」
"The Trump administration has urged the world to ditch Huawei and enforced a unilateral embargo on its suppliers, preventing sales of some components as well as chips made abroad using American tools. "

トランプ氏のこのような姿勢は、コロナ禍によるアメリカ経済の落ち込みに対する世論の批判をかわすためだと思われます。経済が落ち込めば、現職大統領は再選される可能性が低くなるからです。

「だがいつの日か、トランプ氏が再選されなければ近いうちに、アメリカは同盟国との関係を再生するだろう。同盟国の協力がなければアメリカは力を発揮できないからだ」
"Yet at some point, soon if Mr Trump fails to win a second term, America will reinvigorate its alliances because it has been less effective without them. "

トランプ大統領のおかげで、世界のあちこちが経済的にも社会的にもめちゃめちゃになっています。早くまともな人に大統領になってほしいものです。エコノミスト誌の見立て通り、バイデン優勢ならいいのですが。11月の大統領選には世界の運命がかかっているようですね。日本も決して無関係ではないので、息をのんで見守りましょう。

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