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友人の所作

心の底から尊敬している親友がいる。
その人は素敵な女性で、その立ち居振る舞いはフランスで言うところの
「Art de Vivre (アール ド ヴィーヴル)」を体現しているのだと思う。

例えば一緒に出かけたとき。
シンプルなAラインの黒いワンピースをさらりと羽織り、肩には
「がまかつ」の魚拓がデザインされた粋なトートバッグ。
化粧室に並んで入った時、そのトートバッグからさっと取り出したのは
ゲランの香水瓶。

てっきりメイクを直すのかと思っていたから、驚いた。
「気分を変えたいときに、手首につけるの」
蜂蜜の濃厚でクラシカルな優しい香りは、彼女にとてもよく似合っていた。

身に着けるものは全て自分自身を構成するもの。
声に出していたわけではないけれど、どこか自信を信念が感じられた。
そんな振る舞いを自然と身に着けている彼女はとても美しいと思えたし、
彼女と親友でいられることにずいぶんと感謝したものだ。

そんな彼女の前での私はというと、ワンピースに荷物がどうせ
多くなるからと、質実剛健さを絵に描いたようなmontbelの
ショルダーバッグをガシッと斜め掛けしていた。
……せめて、もう少し装いと小物とのバランスを考えてくるべきだった。
自分自身の雑さと適当さをずいぶんと後悔したものである。

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