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伊豆の国市 正蓮寺 本堂で「おりん」の音の巡りに浸る

「音の巡礼」noteの管理人、遠藤卓也です。

伊豆のお寺で日帰りワーケーション?

10月も半ばにさしかかった週末、早朝トイレに起きたら「まっすぐ歩けない、、、」昨晩はお酒を飲んだけど量は多くないし、寒くて血の巡りが悪いのかなと思って朝風呂に入るも改善なし。吐き気もありました。
脳だったらやだなと心配になってきて、しんどいけどふらふら歩いて耳鼻科で検査してもらったところ「良性発作性頭位めまい症」とわかりました。

三半規管に耳石という異物が入ってしまったことでめまいが起こる病気で、根本的な治療法は「体操をして石を撹拌して追い出すこと」という医師の指示、、、。土日は安静に過ごしました。

月曜日、めまいが軽減したので仕事をやり始めました。最初は休み休みやっていたものの、ついつい夜遅くまで作業をしてしまったことにより、夜中に激しい頭痛に見舞われます。頭痛薬を飲んで、なんとか痛みを軽減できないかと首や肩のあたりを揉みほぐすと、薬も効いてきたのか和らいできてようやく眠れました。

「めまい症」は発作的な病気ですが、後に頭痛を引き起こしたことには首や肩の凝りが影響しているように思えます。振り返れば自粛生活に入って在宅中心のデスクワークとなり、悪い姿勢で長時間延々とMacの画面を見続けている毎日です。ウィークデーはリフレッシュする機会もなく、目や首や肩に負担ばかりかけていたのではないかと、反省しました。そんな気付きがあったのが火曜日でした。

翌水曜日はサウンドエンジニアの友人から、「伊豆のお寺に施工したスピーカーの仕上げ作業があるから一緒に行かない?」と誘われていた日です。めまいのこともあるので迷っていましたが、気分を変えて伊豆のお寺で仕事しよう!と決めました。日帰りでお寺ワーケーションです(笑)

伊豆のハス寺、正蓮寺へ

今回誘ってくれたのは、株式会社Fly soundの福岡功訓さん(通称:福ちゃん)。福ちゃんには長年、自分が仲間たちと主催しているお寺の音楽会「誰そ彼」でPAを担当してもらっており、そのご縁もあって各地のお寺のライブイベントや音響施工も手掛ける「お寺向き」のサウンドエンジニア。この「音の巡礼」や「Temple Morning Radio」の収録・編集を指南してくれている師匠でもあります。

二人で向かったのは静岡県伊豆の国市にある真宗大谷派の正蓮寺(しょうれんじ)。同世代のお坊さん、渡邉元浄(げんじょう)さんが住職を務めています。

朝9時に都内を出発して、昼前には正蓮寺に到着。都内は割と混んでいましたが抜けてしまえばスムーズでした。

正蓮寺につくと、お寺が運営するこども園の運動会リハーサルで盛り上がっています。練習を邪魔してはいけないので、まずは本堂へあがらせてもらってご本尊にご挨拶します。

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早速、福ちゃんはスピーカーの仕上げ作業にかかり、僕は元浄さんに許可をもらって本堂で仕事をさせてもらいました。

お寺の本堂でひとりコワーキング

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なんと贅沢な空間の一人占め(笑)
先ほど自分で手向けたお線香の香りと、やわらかく差し込む光。外からは園児たちのにぎやかな声が聞こえています。

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少しすると、元浄さんと一人の女性が本堂へ入ってきました。お世話になっていたお花屋さんが、実家にもどられるということで門出をいわって一緒にお経をあげるとのこと。
僕もなんとなくお経に参加させてもらいました。三人で「南無阿弥陀仏」をお称えすると、肩の力がすっと抜けてリラックスができました。

やっぱり本堂の静謐な空気の中で仕事をするのは気持ちがいい。

そして境内に流れだす、アンビエント音楽

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仕事が一段落して外に出てみると、だいぶ日も暮れていました。園児たちは「さようなら」の時間。昼間に聞こえていた活発な声も、すっかり夕方らしい声になっています。

すると、境内で福ちゃんがサウンドチェックをしはじめました。「仕上げ作業をしていたスピーカー」というのは、本堂内ではなく全て屋外に設置されています。
本堂入り口、裏山、木の下、墓地など、境内に合計12発もの防水スピーカーを配置。自由に音を出せるようにしたのです。

現在正蓮寺では、第三園庭の造成&ぼーっとできる境内の造成の真っ最中。そのなかのひとつの取り組みとしてスピーカーを設置しました。

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境内や墓地で、まるで音に囲まれているような音楽体験は、他では得難い魅力があります。
アンビエント音楽をかければ、鳥の声や木々の揺れる音など周囲の自然音と調和して聴こえます。屋外イベントなどでロックをかければ野外フェス、4つ打ちビートのトラックが流れればまるでレイブパーティーの雰囲気です。

正蓮寺の境内にスピーカーを設置する目的は様々にあります。
特に運動会など、こども園の行事で使う機会は多そうですし、お寺で「ハスまつり」などのイベントも開催している正蓮寺では活用機会がたくさんありそうです。
どのシーンにおいても「音を楽しんでほしい」というのは、音楽好きの元浄さんのこだわりなのでしょう。

また、参拝者や園児たちが興味を持ってくれそうな、サウンドインスタレーションを配置しても面白そうです。お寺の境内にひっそり「アートへの入り口」が開いていたら、、、想像するだけでもワクワクします。

現在いろんな可能性を検討していますが、僕が期待しているのは「おりん」の音を鳴らすというアイデアです。

おりん付喪神オーケストラ!?

元浄さんは以前より、檀家さんや仏具屋さんが使わなくなった古いおりんを譲り受けるようにしていて、今では200個を超える数のおりんを持っています。そのおりんと境内のスピーカーを使ってなにかできないか?という検討を重ねているところなのです。

この日は「おりんの音を録ってみよう!」ということで、プロのサウンドエンジニアである福ちゃんが、元浄さんの鳴らすおりんをレコーディングしました。本堂の絨毯におりんを並べて、元浄さんがひとつひとつの音を確かめるように鳴らしていきます。

中にはとても古そうなおりんも混じっていて、まさに器物百年を経て精霊を得た「付喪神」が奏でるオーケストラのよう。

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僕は絨毯に仰向けで寝そべって目を閉じて、おりん付喪神達の音に耳を傾けました。大きさ、材質、経年変化などで、ひとつひとつが全然違う音をしています。続けて鳴らしてみると、調和と不調和をいったりきたりしつつ、いくつもの音が巡ります。

音が巡る、、、これもひとつの「音の巡礼」かもしれません。

体調的にはまだ「めまい」の残る状態でしたが、あまり不安はなく安心した気持ちで、金属のひびきと少しのめまいに身を委ねてみました。

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おりんの音をおすそわけ@「音の巡礼」Podcast

僕も、持っていたポータブルレコーダー(ZOOM H1n)でおりんの音を録らせてもらいました。おりん付喪神オーケストラの雰囲気を、少しおすそわけします。

プロが録音したフルバージョンは、いつか正蓮寺の屋外スピーカーでお聴きください。そのうち聴けるようになる、はずです(笑)

▼ 元浄さんによる「おりん」ライナーノーツ

おりんの音を聞いていると、その美しさはもちろんですが、音を探す自分に気付くと思います。無音の状態で音を探すときにふいに聞こえる鈴虫の鳴き声や、鳥の羽音、枯れ葉が地面を歩く音。こんなにも世界は小さな音にあふれていることに気付いてもらえたら。(渡邉元浄/正蓮寺住職)

お寺のこと

正蓮寺の近くには伊豆長岡温泉があり、宿泊もできますし立ち寄り湯もあります。少し車を走らせれば沼津港で新鮮な美味しい魚も食べられます。
ぜひ、正蓮寺へお参りしてみてください。

【遠藤おすすめの日帰り湯】
高い天井のひのきのお風呂が気持ちいい!!

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名称:正蓮寺(しょうれんじ)
宗派:真宗大谷派(しんしゅうおおたには)
住所:静岡県伊豆の国市南江間930
HP:http://www.shourenji.or.jp


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