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pilgryNOTE月報24.10|The Times They Are a-Changin'

全国各地の宗教的な場にまつわる「音」のプラットフォーム「pilgry」を企画・運営する遠藤卓也による活動月報

TMR/音の巡礼のこと

webメディア「お寺のじかん」に隔月連載させてもらっている「お寺さんの音景色」に、10/12(土)に行われた「高願寺 十五夜音楽会」のことを書いた。月夜のお寺の境内で、箏の今西紅雪さんのトリオによる演奏によって立ちあらわれた "お寺さんの音景色" ぜひ味わってみてほしい。
シチュエーションにばっちりはまっていた名曲「山越えの阿弥陀」演奏時の音も聞けます。


音のこと

10/18 折坂悠太「呪文ツアー」東京公演 最終日

LINE CUBE SHIBUYAで行われた、折坂悠太「呪文ツアー」最終日へ。

元・渋谷公会堂のLINE CUBE SHIBUYAはちょっと久しぶりかも。明治神宮側から歩いていると間違えてNHKホールへ行きそうになる。
1階の前から8列目というなかなか良い席で、スタンディングは最近疲れちゃうから着席ライブがいいなあと、、、安心。

※ 今回のライブは写真撮影OKとのこと

ライブはアルバム「呪文」の1曲目「スペル」から始まり、続いて1stアルバム「平成」から「坂道」を演奏。

坂道をかけあがる!とか、(降りるにしたって)君を自転車の後ろに乗せてとかじゃなくて、ゆったりとした曲調で「坂道を かけおりる」と歌う感じに、平田オリザ『下り坂をそろそろと下る』という本を思い出したりもしながら、共感を覚えたなあ。「そろそろ」じゃなくて「鳥のように」というのもいい。その颯爽さ。
曲の後半で曲調が変わってブラジル音楽みたいなリズムになるところもいい。早速ここでちょっと涙ぐむ、、、。

アルバム「呪文」の楽曲を中心に、一曲ずつ丁寧に演奏していく。インストゥルメンタルの「信濃路」は地面に座り込んで、それまで歌中心にあった場を変容させていく。
そのまま「正気」という曲に突入。この曲を聴いていると高田渡さんのことを思い出す。

鍋に立てかけたお玉の取っ手のプラが溶けていく
パチンと出所のしれぬ音
夕方のニュースです

日常のありさまをミクロな視点で取り上げながら

私は本気です 戦争しないです

という結び。
じわじわと、しかし真摯に伝わってくる思い。この日の彼の歌からも、それがすごく伝わってきた。

そしてシームレスに「朝顔」へ。この曲はTVドラマにも使われて、おそらく一番お茶の間に知られたであろう楽曲。今回はやらないかもな、、、と思っていたら、中盤の山場とも言える箇所で演奏してくれた。
「正気」から続くと、歌詞の意味合いも違って聞こえてくる。願い。

「夜学」「怒怒」は急にモードが変わってラウドに鳴らされた。ハラナツコさんのサックスが本当にかっこいい。

本編ラストは一番聞きたかった「ハチス」。6月の月報で、「まるでマーヴィン・ゲイ(!)のようなサウンド」と書いてみたことがあったけど、同ツアーのライブを見ていた細馬宏通さんはこう呟いておられた。

ほんとそうですよね!と、頷きながら「すきってぼくは」のところを唱えてみる。

アンコールのMCで「仕事や生活で工夫をしたり抗いを続けることが戦争を避ける道へ繋がると思います。そういうわかりづらいたたかいをする人へ歌います」というようなことを言って、元ちとせに提供した「暁の鐘」という楽曲をセルフカバー。

戦争のこと、子どもたちのこれからのこと。大切なメッセージを静かに熱く淡々と歌う音楽家であると、信頼を深めた。彼は大きな言葉じゃなくて、身近な出来事をとりあげ親しみのわく言葉で発信し続けている。そういう人もいてくれることが、なんというかありがたい。


USインディーズで名のあるみなさんによる(僕にとっては)スーパーバンド the hard quartet。コーラ瓶カラーヴァイナルがなんとなく素敵。シンプルなジャケットも、盤とあわせると納得感ある。 こういうギターサウンドはやっぱりレコードで聴きたい。秋。


映画のこと|「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」、「シビル・ウォー」

ジョーカー」は公開前から、アメリカでは散々の評判という情報が伝わってきていたけど、ホアキン・フェニックスはやはり劇場でみたいと思い足を運んだ。
日本ではジョーカーの仮装をした男が事件を起こした。他国における状況までは知らないが、それくらい社会に影響を及ぼした前作。そのムーブメントの抑制という意図が、この2作目に込められているのではないか?と言われている。
確かにそうでなければ、アーサー・フレック(=ジョーカー)のここまで惨めな末路をあえて映像化する必要があったか?と思ってしまうような、陰鬱な物語が続く。レディー・ガガ演じるハーレイ・クインとのミュージカルシーンも、アーサーの妄想としていくらでも派手で煌びやかにすることができたはずだが、やはりどこか暗い。暗さを徹底的に通底させている。
"DCコミックスの(新しい解釈の)映画化"という目的であれば三部作にして、「フォリ・ア・ドゥ」は、SWでいうところの「帝国の逆襲」のような位置付けで、次に「ジェダイの帰還」的な3作目があるのだろうけど、トッド・フィリップス監督の心中はそんなところにはないのだろうな。
カリスマ化したロックスターが社会に与えてしまった影響を憂いて、内省的で陰鬱なアルバムを出して解散するような。そんな空気感を纏った映画だった。きっとこういう質感が好きって人もいるだろう。


そして、「シビル・ウォー」。予告映像は戦闘シーンが多めで「これがA24制作なのかあ」と意外に思ったけど、実際に見てみたら「戦場カメラマンのロードムービー」といった趣向の映画だった。(サブタイトルも含めて、ミスリードだと思う)
内戦状態にあるIF世界のアメリカを巡るという設定で、突然の凄まじい緊張感が度々訪れる。その度の効果音が刺激的で、メリハリを作りあげている。
今回、僕が映画館でみたいと思った大きな要因は、音楽をジェフ・バーロウ(ポーティスヘッド、Beak>)が担当しているということ。ロードムービーに大切なのは良い音楽。音楽よかった。
挿入曲も彼がセレクトしているのか、Suicide、Silver Apples、De La Soulなど「このシーンでこの曲!?」という非常に煽情的な選曲の妙に唸った(不快に感じる人もいるだろう)
後半の中心地での戦闘パートはまるでFPS(ファーストパーソン・シューティング)ゲームさながら。映像的な没入感はあるけれど、ほぼ一人称視点でストーリーが進行することで(状況がよくわからない故に)心情的な没入感があまり感じられないのが面白い体験だった。意図的に別視点からの情報を挟まないようにしているのだろうけど、クライマックスの物語的に重要なシーンでさえ「ふーん、そうなるのか」とどこか冷めた目で見ている自分がいた。
今まさに戦争が起きているこの時代に、「アメリカの内戦」というあり得るかもしれないと誰もが想像する状態を、ありえないシチュエーション(テキサスとカリフォルニアの連合軍とか)でうまく仮想化し、戦場カメラマンの一人称視点で潜入する。そのコンセプトの立て方や音楽や役者さんの起用も含めて、やはり流石のA24印なのだなあと感心。


お寺のこと

埼玉県草加市 光明寺「お寺マルシェ」

毎年恒例のお寺マルシェ(秋の回)をお手伝いした。天気がとても良かったけれど風が強かった。お客さんはたくさん来てくれた。
片付けが終わった後に、スタッフみんなで「重誓偈」をおつとめすることも恒例化してきて、その時間がなんだかとても心地よい。(録音すればよかった!)


静岡県伊豆の国市 正蓮寺「親鸞聖人報恩講」

伊豆の方のお寺で報恩講をお手伝い。ここ数年でシンプル化を図って、法要と法話という二部構成に。個人的にはそれがすごく功を奏しているように思う。大切なことに絞る。集中してきける。
大人数での法要を録音させてもらえたことも良かった。(音源は11/15のテンプルモーニングラジオ「音の巡礼」コーナーで配信予定)

あらゆるものは変る

豊橋→名古屋ツアー・2024 秋

今年の春頃、名古屋の大谷派 瑞因寺 飯田正範さんより「報恩講の前に本堂のスピーカーを新調したい」と相談を受け、名古屋出張のおりに現地を見させてもらった。

専門家の友人や、音響設備全般に強いお坊さんに相談し、「高齢の門徒さんにも法話がちゃんと聞こえるように」というご要望を満たす置き換えをご提案。そしていよいよ報恩講前日、という日に音響設備全般に強いお坊さんことリヴオンのごっちゃん(五藤広海さん)と一緒に瑞因寺へ。

報恩講の準備が進む本堂で、同時進行でスピーカーを設置。ワイヤレスマイクを繋ぎ、クリアな音質の声を届けられるようになった。良かった!

頼もしき御仁、ごっちゃん

夜は、翌日の報恩講ゲストとして名古屋入りされていた藤田一照さんをリアルに囲む会という飲み会にも混ぜてもらえて楽しい夜を過ごした。


名古屋まで行くならば、せっかくだから、、、ということで、スピーカー施工の前日はかねてより再訪したかったお寺のある豊橋にいた。
豊橋は少し久しぶり。泊まれるのも嬉しい。

1か寺目は、曹洞宗の西光寺さんへ。以前、テンプルモーニングラジオで、小学校の同級生だったブラジル人の友人との思い出のエピソードから「ポルトガル語を勉強している」と語っていた小原泰明さん。その時は本当に再会できるなんて全く思っていなかったけれど、なんと再会できたという。(再会の顛末については、こちらのページに追記してある)

小原さんは、墓地にある赤レンガの素敵な花壇を個別区画のある永代供養墓につくりかえた。墓地エリアの限られているお寺にとっては、いかにスペースを活かせるかという課題がある。小原さんの事例は「あるものを活かす」精神や、「住職が一人でもできる」という点において、多くの小〜中規模寺院が参考にできる、非常によく考えられたお墓だった。本当に感心。

翌朝はタクシーで真宗高田派 正太寺へ。こちらも久々のお参り。住職の大河戸悟道さんより、ここ数年の正太寺の変化とこれからの計画についてお話しいただく。

順調にご縁が増えているという樹木葬も素晴らしいが、大河戸さんらしさのあふれる「どうぶつたちの墓」が素朴で素敵に感じた。
"ペットの弔い" を求める声は全国どこでも聞こえてくるが、多くの縁に対応していく場合は専門業者とパートナー体制で行う。そうでなくて、地域の方や檀家さんのためにまずは小さく始めるということならば、正太寺さんのようなやり方になるだろう。


東京禅センター企画|お寺をひろめる寺報・SNS座談会

臨済宗妙心寺派 東京禅センターさん主催の勉強会に登壇させていただいた。お声がけくださったのは、禅センターのある世田谷の野沢龍雲寺の細川晋輔さん

野沢龍雲寺にお参りするのも少し久しぶり。少し緊張をしながら門をくぐると、いつもの明るい細川さんが出迎えてくれて、ほっと一安心。
とってもアットホームで良い雰囲気の場だったなあ。質問もたくさん出て、あっという間の2時間。もっと喋りたかった!


READY FOR企画|伝統をみらいへ - 情報発信と地域連携でつくる、寺社の新しいカタチ

「お寺をひろめる寺報・SNS座談会」と同じ日の同じ時間帯、オンラインではこんなシンポジウムにも登壇していた!
まさか自分のコピーロボットが出ていたわけではなく、、、実は事前収録したもの・笑

「これからのお寺」というテーマで20分程度の講演をさせていただいた後に、多様な活動をしていらっしゃる横須賀 浄楽寺の土川憲弥さん、神社で海洋散骨もなさっている青森市 廣田神社の名久井育美さん。非常に参考になる事例をお聞きしながら、「日本のお寺は二階建て」フレームワークを使ってディスカッション。「一階」「二階」ってすぐに共通言語になるから便利。

この時の自分の発言が、READY FOR社の別の担当者に伝わって、11月もまた同社のオンラインイベントに登壇することになった。近々告知が出ると思うけど、自分としては楽しみな対談。


月刊住職 2024年10月号

月刊住職 10月号は、愛知県 天台宗 日輪寺の輪田友博さんを取材。お隣の神社の朝市のお客さんたちの休憩所を開いたことで「頼られるお寺」になっていったストーリーは、まさに「お寺を開く」とはこのことかというくらいの好事例。多くのお寺さんの参考になりうる。


ゆるやか死生学|1周年記念イベント 久住謙昭さんと公開収録!

新バンド結成!?
録音・編集・配信を担当して、サムネにも入れてもらえて嬉しい。
本堂の戸を全開していたので、虫の声も気持ちよく入ってる。秋。


味の巡礼

  • かね十魚店(豊橋)

  • 鳥善(豊橋)

  • 焼きたてパン.サンドイッチ くすの木(伊豆長岡)

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